堺市西区菱木神社 菱木南地車

皆さんこんにちは。

折角の秋祭りシーズンですので、前回に引き続き、熱があるうちに泉州の上地車を記事にしたいと思います。

菱木南は平成4年に現地車を新調しています。
当時の菱木地区はまだまだ上地車が多く、手作り地車もあった時代で、菱木南も古い板勾欄型地車で祭礼を行っていましたが、他町よりも比較的早い段階で折衷型を新調されました。どこの町もそうですが、良い地車を手に入れるために当時は大変な苦労をされたことと思います。

今年で新調から丁度30年の節目、という理由でしょうか、先日工務店入りしたとの情報を耳にしましたので、2017年の写真ではありますが、修理前の姿を記録に残しておきたいと思います。

それではご覧ください。

堺市西区菱木神社 菱木南地車

◆地域詳細
宮入:菱木神社

◆地車詳細
形式:折衷型
製作年:1992年(平成4年)9月
大工:【天野工務店】天野行雄
彫刻:【井波】川原和夫・中山慶春【名古屋】粟田剛

◆歴代菱木南地車
・先々代:大きいため、陶器方面の地車と交換。
先代:板勾欄型、明治末期購入。現地車新調に伴い、同氏子の堺市北高尾へ。北高尾の岸和田型購入に伴い、現在は和歌山県橋本市妻にて現役活躍中。
・現地車:折衷型、平成4年新調。

参考)
歴代菱木南地車について
山車・だんじり悉皆調査 http://www5a.biglobe.ne.jp/~iwanee/

姿見

左が前方、右が後方。

天野工務店らしい綺麗な入母屋屋根の折衷型です。
肩背棒はついていますが、現在はしゃくり等のパフォーマンスは行っていないようです。

側面より

入母屋屋根と言えば気になるのが垂木の配置ですが、この地車は大屋根は隅扇垂木、小屋根は平行垂木になっています。

入母屋屋根・豪華な枡組・見送り等は岸和田型の要素をふんだんに取り入れていますが、土呂幕は平面タイプで下勾欄を回しており、上地車としての要素が強いです。

斜め前より

斜め後より

泉大津市上市地車が兄弟地車にあたります。こちらは切妻屋根ですね。

上市は後の時代に殆どの彫刻を入れ替えていますが、獅子噛はオリジナルが残っており、菱木南の作品とも雰囲気がよく似ています。

破風

姿見でも述べましたが、入母屋屋根です。
軒唐破風とはされませんでした。

枡組

隅出には牡丹に唐獅子が彫刻されています。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

大人気、川原一門の獅子噛を持ちます。川原和夫師の作品です。

箱棟

箱棟:『雲海』

懸魚・桁隠し

大屋根前方
懸魚:『素戔嗚尊八岐大蛇』
桁隠し:『鶴』

この辺りは中山慶春師の作品かな?

大屋根後方
懸魚・桁隠し:『鶴』

小屋根
懸魚:『天乃岩戸』
桁隠し:『鯉』

懸魚は神話より題材を得ています。

車板・虹梁

大屋根前方
車板:『風神・雷神』
虹梁:『竹に虎』

妻側は車板・枡合一体で大きな彫刻です。

小屋根
車板:『恵比寿』

枡合・虹梁

右面大屋根側
枡合:『日本武尊 野火の難』
虹梁:『玄武』

右面小屋根側
枡合:『因幡の白兎』
虹梁:『龍』

左面大屋根側
枡合:『神武東征』
虹梁:『龍』

左面小屋根側
枡合:『神功皇后 応神天皇併産す』
虹梁:『竹に虎』

懸魚に引き続き、枡合も神話より題材が採用されています。
また、虹梁の獣達はお互い向かい合うように彫刻されているのが特徴です。

枡合は粟田剛師の彫刻になるのかな?

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』

大屋根後方のみ全身彫刻の獅子、他は半身彫刻で子獅子を持っていたり玉を持っていたりします。

柱巻き

柱巻き:『阿吽の龍』

新調当時はありましたが、現在は取り外されました。
囃子方がケガをするからでしょうか?私も痛い思いをした経験があります…

天蓋

彫刻はありませんが、格子でもありませんでした。

間仕切り

間仕切り:『鷲』

脇障子

脇障子(前方):『牡丹に唐獅子』

脇障子(後方):『牡丹に唐獅子』

脇障子は後方から見ると、獅子の顔が見れるようになっています。

見送り

見送り:『難波戦記』

正面より

城の前は秀吉かな?
手前では弓vs槍合戦が繰り広げられています。

右面より

右面には二刀流の武者と組み討つ武者の様子。

左面より

左面には雑兵と後ろを振り返り敵を制しようとする武者が居ます。

大脇

大脇(前方):『難波戦記』

大脇(後方):『難波戦記』

大脇も見送りと一体の題材と見て良いと思います。

大脇竹の節

大脇竹の節:『阿吽の唐獅子』

摺出鼻

摺出鼻(外側):『難波戦記』

摺出鼻(内側):『難波戦記』

摺出鼻も見送りと一体でしょう。

旗台

旗台:『鯉』

じっくり見ていると意外な発見ポイント、この地車の次に天野行雄棟梁が製作した、堺市宮山地車の旗台と瓜二つです。同じ下絵なのかな?

勾欄合・縁葛

前方
勾欄合:『花鳥風月』
縁葛:『富士の巻狩り』

右面
勾欄合:『花鳥風月』
縁葛:『富士の巻狩り』

左面
勾欄合:『花鳥風月』
縁葛:『富士の巻狩り』

土呂幕

前方:『桶狭間の合戦』

後方:『本能寺の変 森蘭丸』

右面大屋根側:『長篠合戦』

右面小屋根側:『藤吉郎 草履取り』

左面大屋根側:『山内一豊 名馬の誉れ』

左面小屋根側:『?』

土呂幕は織田信長が関連する題材でまとめられています。
粟田剛師の彫刻でしょうか?下勾欄はありますが、比較的見えやすいように工夫されているような気がします。

下勾欄・台木

右面
下勾欄:『波濤に千鳥』
台木:『波濤に鯉』

左面
下勾欄:『波濤に千鳥』
台木:『波濤に鯉』

金具

①破風中央:『雲海に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍』
③破風端部:『唐草模様』
④垂木先:『南』の文字。
⑤縁葛:『牡丹に唐獅子』
⑥兜桁:『菱紋に南』
⑦肩背棒先:『南』の文字。

いかがでしたでしょうか。

オリジナルのまましっかりと維持管理されてきた地車…この時代の折衷型ならではの良さを存分に味わえる一台ではないでしょうか。
特に粟田剛師の彫刻作品など、そんなに数多くはお目にかかれませんので、貴重なものかと思います。

今回の修理ではどこか手が加えられる部分はあるのでしょうか?
綺麗な姿となって帰ってくることは間違いないと思いますので、楽しみに待ちたいと思います。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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