皆さんこんにちは。
今回ご紹介するのは、平野郷の脊戸口町地車です。
脊戸口町は彫又一門の彫刻を持つ地車で、彫又一門が好きな私は以前より記事にしたいと何度も思っていましたが、正面からの姿見を撮り忘れたことで記事化するのを後伸ばしにしていました・・・
しかし、来週に150周年記念曳行が行われるとのことですので、これを機会に記事化することにしました。
大阪市内の地車で彫又一門というだけでかなり珍しい存在ですが、堺口に最も近い脊戸口町ならではといったところでしょうか。
彫又一門らしく三枚板は出人形を使って奥行きや臨場感を表現しようとしている様子が見られ、他の平野郷の地車とは一味違う個性が楽しめる一台かと思います。
それではご覧ください。
大阪市平野区杭全神社 脊戸口町地車
◆地域詳細
宮入:杭全神社
小屋所在地:堺口地蔵隣
◆地車詳細
製作年:1874年(明治7年)
大工:不明
彫刻:【彫又】西岡弥三郎
◆修理履歴
1920年(大正9年) 住吉大佐
1975年(昭和50年) 梶内だんじり店
1991年(平成3年) 河合工務店
2018年(平成30年) 植山工務店
姿見
左が前方、右が後方。
早速ですが、真正面からの写真を撮り損ねています、すみません。
写真の姿は2015年時点のもので、その後にも修理を受けておりますので、現在とはまた姿が異なります。
側面より
現在の姿は大正9年の住吉大佐での修理にて形作られたと思われ、後の改修でもそれを崩さないように傷んだ彫刻は部分的に新しいものに入れ替えられてきたように見えます。
破風
蓑甲は古いものですが、破風は入れ替えられています。
枡組
隅行肘木付き2段1手先。
前方の枡組と車板の隙間にはしゃくった時に前方に飛び出す鼠のカラクリが施されています。
鬼板
上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』
平成30年の大修理まで取り付けられていたオリジナルの獅子噛です。
大変良い顔をしていました。
上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』
平成30年以降はこの獅子噛です、木彫片山にて新調されました。
大きな牙と手前の指だけ少し内側に向けた大きな指が特徴的です。
懸魚・桁隠し
大屋根前方
懸魚:『鳳凰』
桁隠し:『阿吽の龍』
小屋根
懸魚:『麒麟』
桁隠し:『日輪・月輪』
車板・枡合・虹梁
大屋根前方
車板・枡合:『飛龍』
虹梁:『雲海・干支(カラクリ)』
飛龍の車板は非常に大型で迫力ある作品です。
この地車の屋根回りに彫刻されている干支の題材のスタートは右上にあるカラクリ細工の鼠からです。
次に左面大屋根側へと行き、反時計回りに見ていくと、順番通りに見ることが出来ます。
小屋根
車板:『松に鷹』
右下には『堺彫弥三』の文字が見えます。
小屋根
枡合・虹梁:『干支』
枡合
右面大屋根側
枡合・虹梁:『干支』
右面小屋根側
枡合・虹梁:『干支』
左面大屋根側
枡合・虹梁:『干支』
左面小屋根側
枡合・虹梁:『干支』
枡合・虹梁はどれも一体型の構成となっています。
構造材である虹梁や桁に被せることで躯体を隠しつつ、作品全体を斜め下側に向けることで地上からの見やすさも考慮しています。
躯体を交換する際はその都度虹梁と彫刻を分離しなければならないので、かなり大工泣かせな造りをしていますが、それだけ拘って作られていることが伺えます。
木鼻
上が右面、下が左面。
木鼻:『谷越獅子・獅子の子落とし』
全身彫刻の表情豊かな唐獅子が表現されています。
柱
柱:『昇龍・降龍』
天蓋
天蓋:『龍』
これだけ立派な天蓋彫刻を持つ作品はなかなか無く、脊戸口町地車の大きな特徴と言えます。
花戸口虹梁
花戸口虹梁:『牡丹に唐獅子・松に鷲』
上側の小さな虹梁がオリジナルの箇所で、その他の部分は後の改修で追加されたと思われます。
脇障子上人形
脇障子上人形:『大己貴命鷲退治・漢の高祖龍退治』
板勾欄型の三枚板でお馴染みの題材がこの場所に来ていました。彫又一門らしいですね。
脇障子
脇障子:『竹に虎』
三枚板
正面:『賤ヶ岳の合戦』
三枚板は彫又ワールド全開です。
作品に臨場感を出すために出人形が配置されています。
正面には秀吉がおり、大阪城がある大阪市内の地車にピッタリの題材です。
右面:『賤ヶ岳の合戦』
こちらには加藤清正。
手の動き的に雑兵を持ち上げていたのではないかと思われますが、出人形は幾つか紛失しているようで、オリジナルの状態とは少し異なるのかもしれません。
左面:『賤ヶ岳の合戦』
勾欄合
前方:『合戦譚』
後方:『合戦譚』
右面:『合戦譚』
左面:『合戦譚』
貴重なオリジナルが全て残っています。
縁葛
前方:『合戦譚』
後方:『合戦譚』
右面:『合戦譚』
左面:『合戦譚』
縁葛は彫り替えられているようです。
全面彫刻ではなく、堺型のようにマスで区切られた彫刻の施し方をしているのが特徴的です。
土呂幕
前方:『合戦譚』
オーソドックスに扉式になっています。
後方:『合戦譚』
右面:『合戦譚』
左面:『合戦譚』
台木
右面:『波濤』
左面:『波濤』
台木は過去の改修で交換されています。
金具
①破風中央:『雲海に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍』
③破風端部:『唐草模様』
④垂木先:『五瓜に唐花紋』
⑤脇障子:『松に鶴』
⑥勾欄:『唐草模様』
⑦肩背棒先:『脊』の文字。
いかがでしたでしょうか。
個性あふれる非常に魅力的な一台だったかと思います。
平野郷のだんじり祭りと言えば、25号線を閉鎖して宮前交差点で夜遅くまで行われる激しい宮入が有名かと思いますが、中でも脊戸口町は光物・紙吹雪の量が豊富な非常に派手なパフォーマンスを披露してくれますので、見応えがあります。
今年も言っている間に本祭の時期がやってきますので、今年はどのような宮入を見せてくれるのか、非常に楽しみです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。