堺市中区野々宮神社 深井水池町地車

皆さんこんにちは。

今回は、先週祭礼が終わり、今まで書きたいなぁと思いつつも筆がなかなか進まずにいた、深井水池町のだんじりをご紹介いたします。

水池町のだんじりは昭和末期の折衷型新調ブームの先駆け、また深井地区の折衷型新調ブームの先駆けとなった1台です。
製作は池内工務店が請負いましたが、池内工務店にとって初めての折衷型地車製作となりましたので、色々試行錯誤をされたことと思います。

新調からもう間も無く40年といったところで、改めて経た年月を数字で表すと驚きますが、色あせを一切感じさせない、魅力ある一台です。

それではご覧ください。

堺市中区野々宮神社 深井水池町地車

◆地域詳細
宮入:野々宮神社
小屋所在地:会所に隣接
歴史:深井水池町は昭和18年以降の町名で、元は深井村大字深井・深井村大字畑山の一部。昭和46年の泉北高速鉄道開通と深井駅の設置に伴い、深井水池町を含む約80haの土地を対象に深井土地区画整理組合が設立され、急速に宅地化が進行した。

◆地車詳細
形式:折衷型
製作年:1985年(昭和58年)
大工:【池内工務店】池内福次郎
彫刻:【上丹生】井尻翠雲・【井波】中山慶春

参考)
地域の歴史について
角川書店 『角川日本地名大辞典 27 大阪府』

姿見

前方より

昭和50年代の折衷型新調ブームを牽引した一台です。

水池町と言えば、最大級の折衷型であることがまずよく言われます。
実際の寸法の数字を知らないので、根拠ありきの話が出来ないのですが、目の前に立つとその大きさと重量感に圧倒されます。

斜め前より

折衷型とは言いますが、勾欄が四周を廻っており、小屋根下が見送りではなく三枚板になっているので、古風で硬派な印象です。

上地車ではありますが、しゃくり等のパフォーマンスを行わないので、平成24年の改修で肩背棒のねじり金物が撤廃されました。

破風

池内工務店の折衷型と言えば、大多数が大屋根切妻屋根ですが、最初の1台である水池町も勿論その通りとなっています。

枡組

四段一手先になっています。

段数は多いですが、横方向への広がりが控え目で、岸和田型よりも住吉型の要素が強いです。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

個人的な感想ですが、井尻翠雲師の獅子噛はじっくり見ていると、ありきたりな感じとは少し違うので、絶妙にハマってしまう良さがあります。
ガラス目で指が5本、しっかり見下ろして睨みつけています。

懸魚・桁隠し

大屋根前方
懸魚:『義経八艘跳び』
桁隠し:『雲海に鶴』

獅子噛と上下セットでいかにも!上丹生彫!といった懸魚が正面から出迎えてくれる感じが何とも良いですよね。

大屋根後方
桁隠し:『雲海に鶴』

小屋根
懸魚:『五條大橋の出会い』
桁隠し:『雲海に鶴』

車板・枡合・虹梁

大屋根前方
車板:『猿に鷲』
枡合:『素盞鳴尊 八岐大蛇退治』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

小屋根
車板:『宝珠を掴む青龍』
枡合:『干支』

枡合・虹梁

右面大屋根側
枡合:『酒吞童子征伐』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

右面小屋根側
枡合:『四天王 土蜘蛛退治』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

左面大屋根側
枡合:『源三位頼政 鵺退治』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

左面小屋根側
枡合:『岩見重太郎 狒々退治』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

枡合は退治モノで統一されています。

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『獅子の子落とし・阿吽の唐獅子』

大屋根側は全身彫刻となっています。

柱巻き

まずは全景。

柱巻き:『昇龍・降龍』

肉厚な龍の柱巻きはこの時代の折衷型ならではでの良さですね。歯と爪の着色も古風な良い雰囲気を醸し出す要素の一つです。
髭が金具ではなく木彫で表現されているのも特徴です。

花戸口虹梁

花戸口虹梁:『雲海』

かなりしっかりと彫り込まれた雲海があります。

脇障子

脇障子:『合戦譚』

特に個別の題材は無さそうでした。

三枚板

正面:『加藤清正 虎退治』

右面:『佐久間玄蕃』

左面:『川中島の合戦』

いずれも戦国時代より題材を採用されています。

角障子

角障子(前方)
右面:『豊臣秀吉』

角障子(前方)
左面:『後藤又兵衛?虎退治』

角障子(後方)
右面:『豊臣秀吉』

角障子(後方)
左面:『?』

角障子は三枚板の題材とはリンクしていなさそうでした。

角障子竹の節

角障子竹の節:『阿吽の唐獅子』

いかにも慶春さんらしい唐獅子です。

摺出鼻

摺出鼻:『合戦譚』

摺出鼻:『加藤清正?』

旗台

旗台:『力士』

後の時代に交換されていると思われますが、格好良いですね。

勾欄合・縁葛

前方
勾欄合:『牡丹に唐獅子』
縁葛西:『忠臣蔵』

後方
勾欄合:『牡丹に唐獅子』
縁葛西:『忠臣蔵』

右面
勾欄合:『干支』
縁葛西:『忠臣蔵』

左面
勾欄合:『干支』
縁葛西:『忠臣蔵』

土呂幕

前方:『秀吉本陣佐久間の乱入』

後方:『七福神』

右面大屋根側:『天王山の戦い』

右面小屋根側:『小栗栖 明智光秀の最期』

左面大屋根側:『清水宗治の最期』

右面小屋根側:『高松城水攻め』

土呂幕も戦国時代より題材を得ています。

台木

右面:『波濤に鯉』

左面:『波濤に鯉』

大小様々、向きも様々な鯉が沢山彫刻されているのがポイントです。

木鼻

①破風中央:『唐草模様に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍』
③垂木先:『菊紋』
④角障子兜桁:『水池』の文字
⑤勾欄:『唐草模様に花菱』
⑥肩背棒先:『水池』の文字

改修前の彫刻

小屋の中に飾られていました。
土呂幕の彫刻か何かでしょうか。

いかがでしたでしょうか。

最近の折衷型とは異なる、この時代の折衷型ならではの良さを存分に感じることができる作品かと思います。
深井地区に来た際には是非注目して見てみてください。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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