橋本市一言主神社 柏原地車

皆さんこんにちは。

前回、河内長野市向野地車を記事にしましたが、『轟神社』の神額を持つ地車繋がりでもう一台・・・とのことで、橋本市柏原地車をご紹介いたします。

柏原は「かせばら」と読み、南海・JRの橋本駅の一つ先の紀伊山田が最寄りの地域です。
柏原に来る前は河内長野市片添がかなり長い期間所有しており、現在の姿は肩背棒が長い片添で曳行されていた末期の姿をそのまま残しています。

銘板はありませんが、各所の特徴から恐らく住吉大佐の手が入っている地車と思われる作品で、大きな改修も行われていませんので、解明が待たれる一台であります。

それではご覧ください。

橋本市一言主神社 柏原地車

◆地域詳細
宮入:一言主神社

◆地車詳細
形式:板勾欄出人形型
製作年:明治時代
購入年:2009年(平成21年)
大工:住吉大佐?
彫刻:彫又一門
歴史:住吉区若松神社氏子地域→橋本市東家南出→河内長野市片添→橋本市柏原

姿見

左が前方、右が後方。

所々洗いがかけられたような様子が見られますが、大きくは手が加えられておらず、貴重なオリジナルの姿を残しています。

側面より。

片添時代のまま、ぶんまわし対応の長い肩背棒を取り付けています。
当地でも見せ場としてぶんまわしを披露するようです。

斜め前より

地車内部・外周にかなりの厚みのアングル材で補強が取り付けられており(片添時代はもっと凄かったと記憶しています)、強度を維持しているようです。
その影響で古い地車ですが、かなり重量があるのではないでしょうか。

斜め後より

あっさりとした飾りつけが良い味を出しています。

破風

貴重なオリジナルが残っています。

扁平で中央2分割の形状です。桁隠しはつきません。

枡組

隅肘木つき2段1手先です。

鬼板

上から
大屋根前方:『飛龍』
大屋根後方:『虎』
小屋根:『獅子噛』

獅子噛は団子鼻な所などを見ると池田市新宅地車のものが近いような印象です。河内長野市三日市南部地車のものも近いかもしれません。
また、新宅地車や三日市南部地車とは一部板勾欄の題材が同じであったりもします。
題材には流行り廃りがあるでしょうから、同時期に作られたと見ても良いのかもしれません。

懸魚

大屋根前方:『猿に鷲』

鷲単品であることが多いですが、猿に鷲で通常の懸魚よりも高さ方向に大きいものが取り付けられています。

大屋根後方:『波濤』

珍しく雲海ではなく波濤ですね。

小屋根:『飛龍』

神額

轟神社と書かれています。

現在の住吉区若松神社のことで、今では地車文化が途絶えてしまった住吉で曳行されていた地車であることが分かります。
これまで大きな改修が施されていないので、詳細が判明していないのでしょう。神額の裏には製作に関する墨書きが書かれていることが多く、解明が待たれます。

枡合・虹梁

大屋根前方
枡合:『谷越獅子』
虹梁:『龍』

小屋根
枡合:『飛龍』

右面大屋根側
枡合:『飛龍』
虹梁:『谷越獅子』

妻側の枡合は全て飛龍で統一されていました。

右面小屋根側
枡合:『飛龍』

左面大屋根側
枡合:『飛龍』

欠損してしまったのか、太鼓の積み下ろしに支障があるので外したのか、左面は虹梁の彫刻が抜かれていました。

右面小屋根側
枡合:『飛龍』

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』

全部で10体あります。

柱巻き・板勾欄・縁葛

まずは全景から。

珍しい縁葛と板勾欄が連携している作品です。

柱巻き

柱巻き:『鞍馬山修行の場』

柱巻きが鞍馬山修行の場の例は少なく、他には門真市下三ツ島地車が同じ題材の彫刻を持っています。

柱巻き(平側):『合戦譚』

鞍馬山修行の場とはあまり関係なさそうですね。

板勾欄・縁葛

前方
板勾欄:『鞍馬山修行の場』
縁葛:『鞍馬山修行の場』

右面:『加藤清正虎退治』

加藤清正が居ますので、明治時代以降の生まれで間違いないと思います。
この題材は比較的色々な板勾欄型でも見られますが、先ほど例に出した門真市下三ツ島地車も同じ題材を持ちます。

左面:『源義家 勿来の関に和歌を詠ず』

これは獅子噛が似ていると例に出した池田市新宅地車と同じ題材で、採用例も少な目の題材です。

花戸口虹梁

花戸口虹梁:『鷲』

脇障子

舞台の造りはそれほど差異が出るものではないですが、空洞部の模様や舞台の段数等を比較すると、門真市下三ツ島地車のものは近いですね。

脇障子上人形

脇障子上人形:『?』

いつも題材がよく分かりません、三国志でしょうか。

三枚板

正面:『漢高祖龍退治』

定番の題材で安心感があります。
龍が宝珠を持っているのは珍しいかな?

右面:『大胡小橋太 鞆六郎を討つ』

板勾欄よりも擬宝珠勾欄型に見られる題材ですね。他には東灘区御影東之町地車や羽曳野市鍛冶町地車に採用されています。

左面:『雄略天皇猪退治』

顔が雄略天皇らしくなかったり、巻き込まれている人物が一人いたり、少し謎ですが、題材としてはこれで良いと思います。

角障子

角障子:『合戦譚』

摺出鼻

右面:『松』

左面:『松』

ここがあっさりと松オンリーである点も住吉大佐らしさがあります。

旗台

旗台:『猩々』

少しデザインが異なりますが、旗台が猩々と言えば、河内長野市向野地車が同様の題材で製作されています。

持送り

前方:『山水草木』

貫腕

渦の中心から追っていくと、やがて地車の下方へ辿り着く模様。
住吉大佐の地車ではお馴染みの模様です。銘こそは出ていませんが、住吉大佐の作品ではないかと思える有力なパーツです。

土呂幕

前方:『虎』

片面は欠損していました。
山水草木ではなく、虎も居るのは珍しいですね。

後方:『合戦譚』

右面大屋根側:『合戦譚』

再び加藤清正らしき人物が居ました。

右面小屋根側:『合戦譚』

左面大屋根側:『合戦譚』

左面小屋根側:『合戦譚』

下勾欄・台木

右面
下勾欄:『波濤』
台木:『波濤』

下勾欄・台木はシンプルに波濤のみです。
台木は止めホゾになっています。

左面
下勾欄:『波濤』
台木:『波濤』

金具

①破風中央部:『片添町の文字・唐草模様』 片添町の文字がある通り、金具は片添時代に交換されているものと思われます。
②破風端部:『唐草模様』
③垂木先:神紋なし。
④脇障子舞台:『右三つ巴紋』
⑤縁葛端部:『唐草模様』
⑥肩背棒先:『柏原』の文字。

いかがでしたでしょうか。

近年徐々に姿を減らしつつある、年季を経たことでしか得られない凄味を持つ貴重な一台でした。

ここから先は完全に妄想ですが、向野地車とさほど製作年代が離れていないでしょうし、もしかするとこっちが安立町嶋村の地車だったりもするのかな・・・?なんて考えたりもしています。
神額の裏面に何と書かれているのか・・・気になって仕方ありません。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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