富田林市春日神社 彼方地車

皆さんこんにちは。

10月第3週の土日を迎え、9月末時点では今年も曳行不能か?と思われた秋祭りでしたが、最後まで諦めず曳行の決断をした村が多数あったようで、秋祭りの様子を映した映像がよくネット上に流れており、昨年よりは先が晴れた希望を持てる秋になったのではないかと思います。
来年こそは、これまで通りの祭りが出来ることを願うばかりです。

さて、先日何かの拍子に富田林市地域文化財総合活用推進事業実施計画のPDFを見る機会があり、彼方の地車修復について令和3年に実施と記載されておりましたので、もう修理したのかどうかは知りませんが、記事にしていなかったことを思い出しましたので、記事化することにしました。

浪花彫刻を持つ、言わずと知れた絢爛豪華な石川型の銘車です。
それではご覧ください。

富田林市春日神社 彼方地車

◆地域詳細
宮入:春日神社
小屋所在地:会館に隣接

◆地車詳細
形式:石川型
製作年:1889年(明治22年)
購入年:1916年頃(大正5年)
大工:新堂組
彫刻:九代目小松源助
歴史:富田林市喜志大深(明治22年〜数年)
→羽曳野市西浦新町(?〜?)
→奈良県香芝方面(?~大正5年)
→富田林市彼方(大正5年〜)

参考)

地車詳細について
山車・だんじり悉皆調査 http://www5a.biglobe.ne.jp/~iwanee/

姿見

左が前方、右が後方。

細身で背が高く、屋根下の豪華な彫刻としっかり詰まった枡組が美しく、非常に綺麗な姿見をしています。
小屋根下もびっしりと彫刻で埋め尽くされており、三枚板かそれ以上な位のボリュームがあります。

側面より

虹梁の下に長押が付き、その下に二重虹梁。
勾欄は小屋根側が少々低くなっている仕様でぐるりと四周を囲っているのが特徴です。
元は小屋根側はくびれている一般的なもので、今もその跡が残っています。

斜め前より

銘車ですが、新調されてから数年単位で様々な村を渡り歩いているのが不思議なところです。
購入したものの大きすぎた等の理由でしょうか?

破風

石川型ならではのしっかりと勾配が効いた形状。
桁隠しが取り付くのが特徴です。

枡組

4段3手先の組物が入ります。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

大変肉厚な小松源助の獅子噛を持ちます。

箱棟

右面:『牡丹に唐獅子』

左面:『牡丹に唐獅子』

箱棟のご確認もお忘れなく、非常に贅沢な仕様です。

懸魚・桁隠し

大屋根前方
懸魚:『鳳凰』
桁隠し:『麒麟』

羽・鱗・エラのトゲトゲしい質感は小松一門ならではの良さだと思います。

大屋根後方
懸魚:『鷲』
桁隠し:『猿』

セットで猿に鷲でしょう。

小屋根:『飛龍』
桁隠し:『烏天狗』

烏天狗は車板の鞍馬山修行の場に合わせたものです。

車板・車板虹梁・枡合・虹梁

大屋根前方
車板:『天乃岩戸』
車板虹梁:『宝珠を掴む青龍』

大屋根前方
枡合:『飛龍』
虹梁:『源平合戦』
長押:『龍宮伝説・龍』
虹梁:『桜井の別れ』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

大屋根後方
車板;『加藤清正虎退治』
車板虹梁:『宝珠を掴む青龍』

ほとんど見えない部分ですが、しっかりと彫刻されています。

小屋根
車板:『鞍馬山修行の場』
車板虹梁:『宝珠を掴む青龍』

小屋根
枡合:『飛龍』
虹梁:『敦盛呼び戻す熊谷次郎直実』
長押:『龍宮伝説・龍』
虹梁:『太平記』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

右面大屋根側全景

右面大屋根側
枡合:『飛龍』
虹梁:『源平合戦』
長押:『龍宮伝説・龍』
虹梁:『千早城の戦い』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

右面大屋根側
枡合:『飛龍』
虹梁:『源平合戦』
長押:『龍宮伝説・龍』
虹梁:『千早城の戦い』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

右面小屋根側
枡合:『飛龍』
虹梁:『源平合戦』
長押:『龍宮伝説・龍』
虹梁:『太平記』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

左面大屋根側全景

左面大屋根側
枡合:『飛龍』
虹梁:『源平合戦』
長押:『龍宮伝説・龍』
虹梁:『六波羅攻略』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

左面大屋根側
枡合:『飛龍』
虹梁:『源平合戦』
長押:『龍宮伝説・龍』
虹梁:『六波羅攻略』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

左面小屋根側
枡合:『飛龍』
虹梁:『源平合戦』
長押:『龍宮伝説・龍』
虹梁:『太平記』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子・獏』

上部の虹梁は半身彫刻タイプ、下部の二重虹梁は二重分の高さを利用して全身彫刻の唐獅子が彫刻されています。

水引幕

水引幕:『下り藤紋・七福神』

水引幕:『七福神』

正面に社紋、側面に七福神の刺繍が施されています。

脇障子

脇障子:『鷹』

勾欄合

前方:『富士の巻狩り』

4面使用して全て富士の巻狩りで統一されています。
正面中央に頼朝公です。

後方:『富士の巻狩り』

奥側に元はくびれて勾欄がまわっていたことを示す、名残の勾欄がそのまま残っています。

右面:『富士の巻狩り』

新田四郎の猪退治は右面大屋根側です。

左面:『富士の巻狩り』

持送り

持送り

恐らく意図的と思われますが、幕式土呂幕の綱を通すための穴が設けられています。
金物ではなく、彫刻で作ってしまう辺りからも贅沢さを感じます。

土呂幕・台木

土呂幕:『波濤に千鳥・彼方の文字』

吉為工務店で改修時に寄贈されたものです。

金具

①破風中央:『橘紋』何故橘紋は不明、錦織神社かと思ったが、錦織神社は五瓜に唐花紋。
②破風端:『唐草模様』
③垂先先:『菊紋』
④縁葛:『下り藤紋』腕木:『菊紋』下り藤紋は言わずもがな春日神社の神紋。
⑤縁葛端:『唐草模様』
⑥梃子穴:『彼方』の文字。

いかがでしたでしょうか。

どこから見ても彫物ぎっしりの地車で、とにかく圧倒される一台です。
曳行の様子も非常に穏やかで素敵なものですので、まだご覧になっていない方は是非見物をオススメします。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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