皆さんこんにちは。
連日神戸の地車を記事にしていますが、神戸に最初に地車文化が伝わった地と言われている和田宮のだんじりをまだご紹介していませんでしたので、記事にしたいと思います。
和田神社近辺は、平清盛が貿易の拠点として修築した大輪田泊として、古くより栄えてきた土地です。後に兵庫津と呼ばれるようになり、明治以降も非常に近代化が進みました。
そんな土地ですから、1720年代とかなり早い段階で海路を通じて大阪より地車文化が伝わっており、1911年(明治44年)には10台もの地車が和田神社に宮入した記録が残っています。
また、大阪・住吉の名門地車大工である住吉大佐の地車請取帳にも和田神社氏地へ多くの地車を売り渡したことが記載されています。
1945年(昭和20年)の空襲により現在の小地車を残して多くの地車が焼失してしまったため、地車文化が薄れていった時期がありましたが、1980年(昭和55年)に現在の大地車を購入・修復し、復活を遂げています。
それではご覧ください。
神戸市兵庫区和田神社 和田宮(大)地車
◆地域詳細
宮入:和田神社
小屋所在地:神社境内
◆地車詳細
形式:神戸型(北河内型改造)
製作年:江戸時代?
購入年:1980年(昭和55年)
大工:不明
彫刻:相野一門
歴史:大阪市茨田大宮→神戸市和田宮
姿見
左が前方、右が後方
元・北河内型の地車だけあって車体は非常に大きいですが、北河内型の中ではサイズは控えめな部類ではないでしょうか。
洗いがかけられていないので、積み重ねてきた歴史の通り、真っ黒の木の色が残っており魅力的です。
側面より
和田宮の地に来てから外駒化され、破風もテリの部分が追加されました。
人が映っているとサイズ感もよく分かるかと思います。
斜め前より
大阪市内で見られるような破風提灯の取り付け方をしているのも面白いところです。
斜め後より
破風
全体的に丸みを帯びており、重厚な破風です。
桁隠しもあります。
端部を少し切って上に跳ね上げ、テリをつけています。
枡組
シンプルなものですが、三つ斗組の枡組が入ります。
鬼板
上から
男屋根前方:『獅子噛』
男屋根後方:『獅子噛』
女屋根:『獅子噛』
相野一門の作品と思われます。似ているのは尼崎市築地本町一丁目の先代等でしょうか。
懸魚・桁隠し
男屋根前方
懸魚:『鳳凰』
桁隠し:『朱雀』
女屋根
懸魚:『鷲』
桁隠し:『鷹』
懸魚・桁隠しはいずれも獣の題材が採用されています。
車板・枡合
男屋根前方:『宝珠を掴む青龍』
大きな顔、手前にあふれてくる水しぶきの表現が目を惹きます。
女屋根:『谷越獅子』
子獅子が2匹もいるのは珍しいでしょうか。
右面男屋根側:『麒麟』
右面女屋根側:『牡丹に唐獅子』
左面男屋根側:『麒麟』
左面女屋根側:『牡丹に唐獅子』
木鼻
上が右面、下が左面
木鼻『阿吽の獏・唐獅子』
仕口隠し:『牡丹・猿』
妻側が獏・平側が唐獅子で統一されています。
仕口隠しの一部には猿もいます。
水引幕
水引幕:『阿吽の龍』
飛獅子
飛獅子がいます。
脇障子
脇障子:『獅子の子落とし』
縦に長い部材の特徴を活かした題材、良い作品です。
見送り幕
見送り幕:『阿吽の龍』
中央には火炎宝珠もあります。
昭和58年の銘が刺繍されています。
勾欄合
勾欄合:『牡丹・唐獅子』
勾欄合:『牡丹・唐獅子』
勾欄合の彫刻は後の時代に追加されています、彫忠でしょうか。
土呂幕・台木
前方
妻側には土呂幕はありません。
右面
左面
他の神戸型と比べると、駒のサイズは小さめで幅広に見えます。
注意喚起のためでしょうか、黄色いペイントも珍しいです。
金具
①破風中央:『唐草模様』
②破風傾斜部:『昇龍』
③破風端部:『唐草模様』
④垂木先:『結綿紋』
⑤脇障子兜桁:『花菱紋』
⑥勾欄親柱:『唐草模様』
⑦台木先:『和田宮』の文字。
⑧台木:『結綿紋』神紋は銀杏かと思っていましたが、結綿紋のようです。
いかがでしたでしょうか。
和田宮のだんじり祭は毎年5月2~3日と、他の地域より一歩早く行われるため、春祭りの幕開けとして、見に行きやすい祭りです。
神社前の直線道路での連続飛ばせ・戻せは有名で、非常に勢いのある様が楽しめます。
今年こそは久しぶりに見に行こうと思っていただけに残念ですが、また来年見れることを楽しみにしたいと思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。