神戸市東灘区本住吉神社 吉田區地車

皆さんこんにちは。

来年にはおさまっているだろうから、今は我慢・・・なんて1年前には思っていましたが、コロナウイルスの猛威は1年経っても収束の兆しが見えず、今年も神戸のだんじり祭りの中止が決定してしまいました。なんともやるせない気持ちです。

最も残念に思っているのは地元の方とは思いますが、地元ではないものの年を越したら神戸の囃子が恋しくなる程度にはだんじりバカの私の気持ちも簡単にはおさまらず・・・今は神戸の地車の記事を書いて写真整理をしつつ、お勉強を進めていきたいと思います。

今回ご紹介するのは吉田區の地車です。
それではご覧ください。

神戸市東灘区本住吉神社 吉田區地車

◆地域詳細
宮入:本住吉神社
小屋所在地:神社境内

◆地車詳細
形式:神戸型
製作年:江戸時代~明治初期
購入年:1931年(昭和6年)
大工:不明
彫刻:不明
改修年①:1931年(昭和6年)
改修大工①:大石巳代吉
改修彫刻①:川原啓秀
改修年②:1996年(平成8年)
改修大工②:平間利夫
改修彫刻②:中山慶春
改修年③:2015年(平成27年)
改修大工③:橋元春行
改修彫刻③:高橋聖峰・高橋孔明
歴史:東大阪市布市方面→神戸市東灘区吉田

◆歴代吉田區地車
・初代(先代):江戸時代後半には曳行されており、子供地車もあったが、喧嘩が絶えないとのことから住吉村役場より明治40年に地車の曳き出しを禁止され売却。
・2代目(現地車):東大阪市布市方面より購入。

参考)
製造年・改修大工・彫刻・歴史・彫刻の題材について
住吉だんじり資料館の掲示より


平成27年の改修について
山車・だんじり悉皆調査 http://www5a.biglobe.ne.jp/~iwanee/

姿見

左が前方、右が後方

元は現在より小ぶりな地車だったと思われますが、幾多の改修を経て大型化され、現在の形になりました。
金具・飾り幕共に絢爛豪華な装いです。

斜め前より

神戸の地車は戦争による空襲で焼失したものが多いですが、この地車は戦時中で曳行が中断されていたものの、戦火が激しくなった際に国鉄住吉駅東側に避難して焼失を免れたようです。
町民に大切にされ、守られてきた地車です。

破風

しっかりと勾配がついた破風形状、テリは控えめです。
蓑甲の間隔は標準~広い方でしょうか。

改修前のものと思われる破風、小屋に飾られています。

同じくもう一つ小屋に飾られています。
改修前の女屋根下の車板彫刻とかでしょうか。

枡組

シンプルに大斗肘木タイプで、牡丹の籠彫り彫刻が施されています。

鬼板

上から
男屋根前方:『獅子噛』
男屋根後方:『獅子噛』
女屋根:『獅子噛』

3面とも獅子噛で統一。
男屋根のものが川原啓秀師の作品、女屋根が中山慶春師の作品で、いずれも人気の井波彫刻の作品です。

懸魚・桁隠し

男屋根前方
懸魚:『鳳凰』
桁隠し:『鶴』

破風の形状に合わせて継ぎ足している跡が見られ、オリジナルと思われます。

女屋根
懸魚:『孔雀』
桁隠し:『朱雀』

よく見る鳥の顔と雰囲気が違うと思ってよくよく見れば、懸魚には孔雀がいました。この場所にくる題材としては珍しいと思います。個性があって良いですね。

車板・枡合

男屋根前方:『黄石公と張良』

古い上地車ではよく見かける題材ですが、最も目立つ前方車板に大きく彫刻されているのは見かけません。非常に格好良いです。
馬の目が真っ黒のガラス目なのもポイントが高いです。

女屋根:『素戔嗚尊八岐大蛇退治』

女屋根側はお馴染みの日本の神話の題材です。

右面男屋根側:『秀吉本陣佐久間の乱入』

右面女屋根側:『中川清秀の最期』

左面男屋根側:『加藤清正山路将監討取』

左面女屋根側:『福島市松の勇姿』

平側はどれも戦国時代の題材です。
桁の部分まで植物が溢れるように少々手が加えられているようです。

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』

水引幕

水引幕:『珠取り龍』

平成17年に新居浜の金麟で製作されました。この幕も本当に格好良いです。

絵振板

絵振板:『獅子の子落とし』

脇障子

脇障子(前方):『?』

傘が見えたので富士の巻狩りかと思いましたが、違う様子。

脇障子(後方):『?』

見送り幕

正面:『武内宿禰筑紫の海辺で皇子を抱き神功皇后これを見送る』

右面:『仲哀天皇橿日宮にて小琴を弾き神に新羅の国を問ふ』

左面:『神功皇后磯若ノ島の安曇の磯良に頼みて竜宮より潮干珠・満潮珠を借り受ける』

住吉神社の地車ですので、やはり三韓征伐に関する題材は外せないですね。

勾欄合・縁葛

前方
勾欄合:『中国列仙伝』
縁葛:『鶴と亀』

前方は神戸型ならではの仕様で、引き出し舞台が出せるようになっています。
また、縁葛はオリジナルと思われます。端部の金具が横に長くなっているのはオリジナルのサイズからそれだけ拡張工事が行われているからと思われます。

後方
勾欄合:『中国列仙伝』
縁葛:『鶴と亀』

右面男屋根側
勾欄合:『中国列仙伝』
縁葛:『鶴と亀』

右面女屋根側
勾欄合:『中国列仙伝』
縁葛:『鶴と亀』

右面『昇龍・降龍』

この場所の彫刻は高橋親子の作品でしょう。反対面も同様です。

左面男屋根側
勾欄合:『中国列仙伝』
縁葛:『鶴と亀』

左面女屋根側
勾欄合:『中国列仙伝』
縁葛:『鶴と亀』

左面:『昇龍・降龍』

土呂幕

前方:『竜宮伝説』

後方:『竜宮伝説』

こちらも高橋親子の作品です。

右面側:『竜宮伝説』

枠の見慣れない色の木はブビンガと言う木材で、アフリカの樹木のようです。
通常地車では使われないような木材を部分的に使用し、個性を出しているのも住吉の地車に見られる特徴です。

左面:『竜宮伝説』

土呂幕はオリジナルが残っています。
妻側にあったものも平側へ移植し、サイズを整えて額縁にはめ込み、かぐら造りの片面3枚の土呂幕の仕様にしてあります。移植して足りなくなってしまった分の妻側の土呂幕は新調しています。

台木

前方:『波濤に玄武』

正面向きの玄武です。

後方:『波濤に玄武』

右面:『波濤に玄武』

左面:『波濤に玄武』

題材は4面とも玄武で統一、猫木には小さな鯉も見えます。

昼提灯・雪洞

昼提灯

昼提灯

題材は七福神でしょうか。

鳴物

大太鼓・半鐘・摺鉦に加え、小太鼓があるのが吉田區の特徴。
かぐら造りの通し柱になっていない構造もよく見えます。

住吉だんじり資料館に展示されている吉田區の摺鉦。
元は泉大津市板原町の法蔵寺にあったものですが、経緯不明で吉田區へとやってきて平成24年まで使用されていました。
約250年前に製造されたと言われているかなりの年代物です。

金具

①破風中央:『波濤に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍』
③葺地:『鶴』
④垂木先:『桔梗紋』
⑤脇障子兜桁:『桔梗紋』
⑥跳勾欄:『桔梗紋』 縁葛:『松竹梅』

いかがでしたでしょうか。
金具や幕が非常に豪華な仕様で、彫刻もオリジナルと改修の作品がバランス良く配置されており、非常に見ごたえがある地車でした。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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