大阪市都島区都島神社 都島神社地車

皆さんこんにちは。

新型コロナウイルスの影響で殆ど地車が見れませんが、身体は地車を求めてしまいますね。
今回は”個人的に久しぶりに見たい地車!”と題しまして、都島神社地車をご紹介したいと思います。

都島神社地車は2015年(平成27年)新調の地車で、都島区の中でも最も新しいだんじりです。
平成末期にかけ大阪市内を中心に中国製の彫刻が多用されるようになる中、しっかりと国産の彫刻を用いて製作されており、大変豪華な仕様です。
そのため非常に話題性の高い地車でしたが、私は5月の入魂式の日はあえて見に行かず、その年の夏祭りの日に初めて見に行きました。

それではご覧ください。

大阪市都島区都島神社 都島神社地車

◆地域詳細
宮入:都島神社
小屋所在地:神社境内

◆地車詳細
形式:大阪型
製造年:2015年(平成27年)
大工:【大市】河合工務店
彫刻:【彫陽】山本陽介【井波彫刻】野原湛水・澤義博

姿見

左が前方、右が後方

先代も大きめの地車だったのですが、新調地車も大阪市内では大きめに分類されると思います。

側面より

人が乗る部分の周囲はあっさりとしており、あくまでも囃子方が主役。常設となる提灯とのバランスも良いです。
彫刻は流行通りに量が豊富ですが、木種の異なる廻り勾欄・二重の縁板・水板が引き締め役として入っているため、非常に安定した骨格を形成しています。

破風

大阪型の上地車は切妻屋根以外の選択肢はありません、分厚い破風で桁隠しもつきます。

昔と異なり現代は”この大工さんだからこの破風形状”といったブランド?は少なく、施主の好みに応じて様々にカスタマイズされることが殆どです。
都島神社地車の破風はその角ばった形状から住吉大佐の住吉型地車を意識しているような印象を受けました。
実際にそのようなオーダーがあったかは分かりませんが、同じ河合工務店作の東大阪市永和地車等と比べるとかなり意図的な違いがあるように見えます。

枡組

古い大阪型では組み物を介さない直接仕口になっている仕様が多いですが、近年新調される大阪型で組み物が採用されていないものは少なく、シンプルな出三斗組が採用されています。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

分かる人は一目見て分かる、井波の澤義博師の作品です。
師の獅子噛と言えば、私は真っ先に大阪狭山市山本地車のものを思い出しますが、大阪市内でも採用例があり、生野区の矢柄地車がそれにあたります。
絞りあげられた細く繊細な毛並み、長い歯と爪、しっかりと睨みつけてくる目が特徴的で、一際良いなと思わせる獅子噛を彫刻なさいます。

都島神社地車の獅子噛は例に挙げた2台に比べると、表情の鋭さは控えめで、八重歯がワンポイントアクセントになっています。

箱棟

箱棟:『雲海』

こちらもきちんと彫刻されています。

懸魚・桁隠し

大屋根前方:『天乃岩戸』

獣ではなく、神話の題材が採用されました。
早速、山本陽介師独特の彫刻の表情・質感を楽しむことができます。格好いいですね。

小屋根:『源頼政鵺退治』

記事を読み進めていくと分かりますが、この地車は神話以外の題材は平家物語・源平合戦で統一されています。
鵺退治は既に取り押さえられている場面で彫刻されることが多いですが、浮世絵通りの場面となっています。

この題材が懸魚に彫刻されることは少ないですが、よく見えるこの場所にわざわざ彫刻されるには理由があり、退治された鵺の死骸を丸木舟で川に流したところ、辿り着いた先がこの場所であったという伝承が残っているためです。
現在も1870年(明治3年)に再整備されたものですが、都島本通3丁目に鵺塚が残っています。

また、この地車の小屋根車板に鵺塚の彫刻が施されています。

車板・枡合

大屋根前方:『宝珠を掴む青龍』

前方は車板・枡合一体型で大きく青龍の彫刻です。大阪型と言えばこのスタイルは定番ですね。
色は塗られていませんが、宝珠もしっかりと持っています。

獣の彫刻はやはり井波彫刻が素晴らしく、野原湛水師の作品です。

小屋根:『鵺塚』

地元ならではの題材が採用されています。
このように村の歴史をしっかりと組み込むカスタマイズは現代の地車の非常に良い所だと思います。

大屋根右面:『素戔嗚尊八岐大蛇退治』

大屋根左面:『神功皇后弓末で字を書く』

平側に目を向けると、再び神話の題材が採用されています。

虹梁持送り

上から前方・右面・左面
虹梁持送り:『牡丹』

彫り抜かれた牡丹が彫刻されています。
虹梁持送り自体は構造的に必須とされる部材ではないため、採用もまちまちですが、非常に上品で良いデザインとして機能しています。

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『唐獅子・牡丹』

唐獅子は全身彫刻になっており、住吉大佐の住吉型らしい印象です。
大屋根後方は牡丹になっており、屋根の段差による隙間を隠すように幅広く部材がとられています。

花台

花台:『猩々』

こちらも必須アイテムではありませんが、地車の正面の目立つ位置におり、非常に良い引き立て役になっています。
壺の部分まで欅で作られているのが驚きですね。

車内枡合

車内枡合:『紅葉』

脇障子

脇障子:『武者』

前方から見た場合は松の木になっており、後方から見た場合は三枚板の題材の一部として機能しています。

三枚板

正面全景

まずは全景から。既に三枚板の酒呑童子の存在感が凄いですね。

正面:『酒呑童子!』

タイトルもそうですが、山本陽介師の独創性が全面的にプッシュされた素晴らしい作品です。

違う角度から

体格の違いと恐ろしさがよく表現されています。様々な角度から見たくなる作品です。

右面全景

小屋根下は枡合・虹梁を撤廃し、一体型で三枚板としているので非常に縦長にスペースを使えるようになっています。

右面:『粟津合戦』

何と言っても主役は巴御前、左側に大きく彫刻されています。
馬の表情もとても良いですね。

転げ落ちてくる武者。

勾欄に隠れて見えにくいですが、やられ役の武者も良い表情です。

左面全景

左面:『義経八艘跳び』

船が登場するだけに、構図的にもかなり難しかったのではないかと思いますが、飛び移る船を2隻しっかりと確保して彫刻され、スペースに空洞感を一切感じさせません。

平教経もこの表情!

角障子

後方側:『鬼・武者』

一体型の題材なので、あえて写真を切り分けて紹介するのはおかしいかもしれませんが、豊かな表情と存在感が素晴らしいですので、この部分だけ注目して見ても非常に楽しいです。

前方側武者

松の木の質感、武者の表情。どれも大変素晴らしい作品です。

勾欄合・縁葛

前方
勾欄合:『須磨寺若木桜』
縁葛:『曽我兄弟十番切り』

後方
勾欄合:『鞍馬山修行の場』
縁葛:『梶原景季箙の梅』

牛若丸は中央にいます。

右面大屋根側
勾欄合:『布引の滝』
縁葛:『平景清錣引き』

悪源太義平の霊が数えきれないほどの雷を落としています。
これも浮世絵に忠実に再現されています。

こちらは地車ではよく彫刻される題材ですが、奥行きと背景の丁寧な彫刻が素晴らしいです。

右面小屋根側
勾欄合:『布引の滝』
縁葛:『朝比奈三郎城門破り』

ひょっこり顔を出す武者、遊び心があります。

左面大屋根側
勾欄合:『那須与一扇の的』
縁葛:『鶴岡八幡宮放生会』

荒々しい場面もあれば、このように非常に穏やかな場面も彫刻されています。

左面小屋根側
勾欄合:『那須与一扇の的』
縁葛:『安宅の関』

弁慶が義経を徴打する場面の彫刻が多いですが、こちらも浮世絵に忠実で、弁慶が勧進帳を読み上げる場面。

腕木

腕木:『獏』

唐獅子ではなく、獏が採用されました。
縁取りされており、梃子等を当てて欠損させやすい部分だけにこのデザインは良いかもしれません。

持送り

前方:『獅子の子落とし』

土呂幕まわりに目を向けまして、端部の持送りは井波彫刻で唐獅子です。

後方:『獅子の子落とし』

唐獅子の題材が大好きな私、見ていて惚れ惚れします。

土呂幕・水板

前方:『弁慶引き摺り鐘』

鐘の存在が印象に残るよう、非常に大きく彫刻されています。

扉式もしくは跳ね上げ式で収納とされることが多い場所ですが、取り外しは恐らくできないつくりになっています。
彫刻としては特にそのような機能を持たせない方が自由度が上がります。

後方:『碁盤忠信』

投げつけた先を彫刻されることが多いですが、手前側にいる妻の小車が彫刻されています。

右面大屋根側:『宇治川先陣』

こちらは佐々木高綱。

右面小屋根側

こちらは梶原景季。
多くの地車では馬や人物が陸の近くを走っている様子で、ほぼ全身が見える状態で彫刻されることが多いですが(絵的にもそちらの方が映えるからでしょうか?)こちらも浮世絵に忠実で、馬の胴体・人物の身体の上半身が少し波から顔を出す程度におさめてあります。
他にも、浮世絵を忠実に再現した作品が数多くあったことから、確実に山本陽介師はそれを狙っていると思われます。

中央の柱を隠すように馬の彫刻が取り付けられています。

左面大屋根側:『富士の巻狩り』

猪と言えばセットで出てくるのは仁田四郎。
よく見る退治の場面ではないですが、この人物で間違いないでしょう。

左面小屋根側:『富士の巻狩り』

こちらは浮世絵の再現という訳ではありません。
目線の低い子供向けでしょうか?分かりやすい動物の彫刻が中心となっています。

台木

上が右面、下が左面
台木:『波濤』

大阪市内では珍しく角台木ではなく、波濤になっています。

台木の波は地車全体のバランスはもちろん考慮されていますが、限界まで豪快に彫刻されています。
鯉や玄武といった動物の彫刻はこの場では余分で、井波彫刻ならではの深く逞しい波の彫刻だけを存分に楽しむことができます。

金具

①破風中央:『唐草模様・左三つ巴紋』 宝珠ではなく、社紋が採用されています。
②破風傾斜部:『昇龍』
③破風端部:『唐草模様』 透かしになっていますが、下地の金物は銀色で、無地ではなく細かく彫刻が入っている豪華仕様です。
④垂木先:『左三つ巴紋』
⑤縁葛:『牡丹』
⑥肩背棒先:『左三つ巴紋』
⑦曳綱環:『木瓜紋』 なぜここだけ木瓜紋が採用されたかは分かりません。
⑧旗差し 先代の頃より1本幟を立てるのが都島神社地車の特徴でしたので、控えめですが旗差し設備が設けられています。
⑨銘

いかがでしたでしょうか。

都島神社地車はあくまで神社の組織の一部としての地車ですので、格式のある存在で、イベントごとで曳き出される可能性は殆どないでしょう。見ることが出来る機会の貴重性に加え、非常に素晴らしい彫刻を持つことから、その価値は今後どんどん上がって行く一方だと思われます。

来年こそは見ることができると信じて、楽しみにその機会を待ちたいと思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。

「大阪市都島区都島神社 都島神社地車」への1件のフィードバック

  1. 有難うございます!伝承していきたいと思います!神様と共に繋がれる喜びを新たに致しました!感謝いたします🤗🙏🍀

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