柏原市黒田神社 今町地車

ご無沙汰しております。
今回も個人的に面白いと思った地車を選び、記事を書かせて頂きます。

とはいっても柏原のだんじり祭りは有名なので、この地車を見たことがある方は多いのではないでしょうか?
ちなみに、この地車は泉州出身で、遠く離れた柏原市で今なお元気に活躍しています、嬉しいですね。

それではご覧ください。

柏原市黒田神社 今町地車
 
◆地域詳細
宮入:黒田神社
住所:大阪府柏原市今町1丁目3-13
歴史:今町は柏原市西部に位置し、国道25号線とJR柏原駅の間の細長い地域。
町内に黒田神社があり、2013年から柏原えびす祭りに奉納地車曳行するようになる。
隣村の清洲・堂島・川原町等と合同で曳いていた時期もあった。

◆地車詳細
形式:板勾欄出人形住吉型
製作年:明治初期?
大工:住吉大佐?
彫刻師:【彫又】
改修大工:池内工務店?
改修彫刻:?
歴史:住吉方面→高石市北村(七区)→和泉市太町→柏原市今町
《北村時代の話》
慶応3年(1867)か明治初期に新調、昭和38年まで曳行され、昭和42年に太町に売却。
北村では住吉の大工が中古地車を組み合わせて製作したものを明治初期に牛で引いて来たと伝えられている。
住吉大佐の地車請取帳の大正14~15年頃のページに「泉北郡 高石町北 伽羅橋駅前南半町 山内音吉様」、「泉北郡 高石町北初田治三郎様 山内豊松様」の記載が残っている。
《太町時代の話》
昭和42年に北村より8万円で購入。
正面三枚板に昭和初期に小阪方面より購入した先代地車の側面三枚板の題材を移設した。
平成12年現地車新調につき売却。

◆歴代今町地車
・先々代(初代):石川型、事故で破損し売却。
・先代(2代目):太鼓正製、現地車購入につき大正東へ。
・現地車(3代目):平成12年購入。

◆地車修理/内容
平成初期に池内工務店で改修?
基礎・屋根・脇障子を全て交換、鬼板・一部枡合・柱巻き人形・板勾欄・縁葛・台木を彫り換え、欠損彫刻を補修している。
今町購入時にも改修か?
梯子を側面に移設・担い棒を堺型のように先頭に2本突き出すタイプから四方を囲むタイプに変更。

参考) 歴史・歴代今町地車について
山車・だんじり悉皆調査 http://www5a.biglobe.ne.jp/~iwanee/

姿見

左が前方、右が後方

前方には笹飾りがつきます。
旗の設備が残され、現在も活用されています。

側面より

太町時代に大改修を受けたため、製造当時の印象は殆どありません。

破風

オリジナルではありません。
独特の破風形状で、元・和泉市信太連合の葛ノ葉町・宮本町地車である 富田林の加太地車・陶器の高蔵寺地車とよく似ています。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

全て改修時に彫り換えられています。

懸魚

上から
大屋根前方:『朱雀』
大屋根後方:『松』
小屋根:『鷹・兎』

こちらも改修時に破風と共に交換されたもの。

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』

全部で8体あり、どれもオリジナルです。
最も後方のもののみガラス目で、雰囲気が異なります。

車板・枡合・虹梁

大屋根前方
車板:『雲海』
枡合:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『司馬温厚の甕割り』

小屋根
車板:『雲海』
枡合:『牡丹に唐獅子』

枡合上の梁が手前に拡張され、屋根が大型化されています。
虹梁下に半分に切断された元・虹梁であろう部材が挿入されています。

枡合・虹梁

右面大屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『飛龍』

右面小屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』

台輪・上段虹梁は改修時に交換されています。

左面大屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『飛龍』

左面小屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』

柱巻き・板勾欄

板勾欄型の顔となる箇所ですが、柱巻き・板勾欄共に彫り替えられており、あっさりとした印象です。
側面の題材が富士の巻狩りで統一されているのを見る限り、前方板勾欄も元は富士の巻狩りだったのでは?思われます

柱巻き

柱巻き:『武者』

板勾欄

右面:『富士の巻狩』

出人形を使用せず、板勾欄に全ての彫刻が施されています。

左面:『富士の巻狩 仁田四郎忠常の猪退治』

お馴染みの題材で、良い表情をしていますね

花戸口虹梁

花戸口虹梁:『唐獅子』

大太鼓の形状に合わせて切断してあります。

脇障子

脇障子:『題材なし』

改修時に交換されたようです。

三枚板

正面:『水滸伝 黒旋風(こくせんぷう)李逵(りき)』

収まりが不自然ですが、解体した先代地車の側面三枚板を移設したことによるものです。

右面:『劉邦』

劉邦単独で存在、元々正面三枚板に大蛇と共にいたか?

左面:『鬼若丸鯉退治』

角障子

角障子:『松』

武者ではなく、松のみの彫刻です。

持送り

持送り:『山水草木』

左右でかなり描かれている状況が異なります。

土呂幕

上から
前方:『武者』
後方:『合戦譚』

前方は板がはめ込まれ、元・出人形であろう部材が取り付けられています。

右面です。
上から
大屋根側:『合戦譚』
小屋根側:『合戦譚』

左面です。
上から
大屋根側:『合戦譚』
小屋根側:『合戦譚』

旗元・旗台

旗元:『松』
旗台:『力神』

どちらもオリジナルの彫刻が残っています。

台木

右面:『波濤に鯉』

台木は彫り換えられています。

左面:『波濤に鯉』

金具

①破風:『唐草模様』
②垂木先:『花菱紋』
③脇障子兜桁:『唐草模様』
④縁葛・板勾欄端:『唐草模様』
⑤肩背棒先:『今・町』の文字
⑥正面妻台:太町時代のまま、ブレーキの設備のみが取り外されています。

要所

①格子:寸法から察するに元々正面土呂幕につけていたか?
②神額:小屋にて発見、元々この地車についていたと思われる。住吉大佐の地車によくついているタイプで、裏面に墨書きはなかった。
③枡組:出三斗組。
④下勾欄:彫り替えられた作品も合わせて、二段構成になっています。

旗台下両端の欠き込みが元々の台幅を示しており、かなり台幅を広げていることが伺えます。

いかがでしたでしょうか?

資料はあるものの、姿が大きく変わっている地車でしたね。
これからも今町の地で末永く活躍してくれることでしょう。

今町の皆様、地車を見学させて頂き、ありがとうございました。 

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