富田林市春日神社 嬉地車

皆さんこんにちは。
今回ご紹介するのは富田林市 嬉のだんじりです。

富田林市は石川型の地車が多数を占めていますが、嬉はその中で活躍する唯一の堺型地車とあって、以前より気になっておりました。
なかなか祭礼のタイミングで見に行けずにいたのですが、今回運よく修理入魂式が行われましたので、その姿を見ることが叶いました。

それではご覧ください。

富田林市春日神社 嬉地車

◆地域詳細
宮入:春日神社
住所:彼方329-2
歴史:嬉は富田林市の最も南西に位置し、石川を隔てて河内長野市と隣接している。
春日神社は空海が天長五年(828)に創建と、古文書に記載されており、歴史ある神社。
明治40年に近隣の神社を合祀、その時に嬉の菅原神社も合祀されて現在に至る。

◆地車詳細
形式:擬宝珠勾欄堺型
製造年:江戸末期~明治初期
購入年:昭和24年頃
改修年:平成6年
大工:堺の大工 (三枚板に墨書きがあったが、消えており解読不能となっている)
彫刻:【彫又】
改修大工:植山工務店
改修彫刻:【醒ヶ井彫刻】井尻宣男
歴史:泉大津市森→嬉

◆歴代嬉地車
・四先代(初代?):明治頃、汽車で大和高田より地車を運んでくるが、河内長野駅で返す。
・先々代(2代目?):町内地車、旧小屋と共に解体。
・先代(3代目?):神戸型のように引き出し付きの地車だったと、向野のおばちゃん談。消息不明。
・現地車(4代目?):昭和24年、泉大津市森町より購入。

◆地車修理/詳細
平成6年植山工務店:大屋根前方鬼板、台木を井尻宣男師の作に交換。
平成25年大下工務店:大屋根・小屋根の野垂木修復。

参考) 購入年・歴史について
山車・だんじり悉皆調査 http://www5a.biglobe.ne.jp/~iwanee/
姿見

左が前方、右が後方

赤い房飾りが特徴あります。
後ろ旗をつけている地区は石川型が主流の地域では限られています。

側面より

土呂幕まわりの柱が8本あるのは堺型共通の特徴。
この地車独特の箇所と言えば大屋根下の三重虹梁でしょうか。

破風

獅子噛と懸魚が交換されているので、気づきにくいですが、破風はオリジナルです。

鬼板

上から
大屋根前方 :『獅子噛』
大屋根後方 :『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

大屋根前方は植山工務店で改修された時に井尻宣男師の作に交換されています。
後方はオリジナルの顔が残っています。

懸魚

上から
大屋根前方:『鳳凰』
大屋根後方:『鷲』
小屋根:『鳳凰』

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子・獏』

二段になっており、全部で16体もあります。
木鼻が二段になっている堺型は時々見かけます。それほど珍しいものではありません。

大屋根前方車板・虹梁

上から
大屋根前方車板:『宝珠を掴む青龍』
大屋根前方虹梁(上段):『鶴』
大屋根前方虹梁(下段):『牡丹に唐獅子』

前方の車板は別の地車の部品を組み込んだものです。

車内枡合・間仕切り

車内枡合(前方):『獅子舞』
車内枡合(後方):『牡丹』
間仕切り:『青龍』

車内枡合(前方)は元々は通常の前方枡合でしたが、後付けの車板に隠れるため、内側に向けてあるようです。

右面枡合・虹梁

右面です。
上から
大屋根枡合:『唐子遊び』
虹梁(上段):『鶴』
虹梁(下段):『唐獅子』
小屋根枡合:『唐子遊び』

左面枡合・虹梁

左面です。
上から
大屋根枡合:『唐子遊び』
虹梁(上段):『鶴』
虹梁(下段):『唐獅子』
小屋根枡合:『唐子遊び』

小屋根車板・枡合

上から
車板:『鶴』
枡合:『唐子遊び』

柱巻き

柱巻き:『昇龍・降龍』

擬宝珠勾欄堺型では珍しく豪華な柱巻きが取り付けられています。
しかし、こちらは別の地車の部品のようです。

脇障子

脇障子:『昇龍・降龍』

今回の改修で、三枚板側を向いてしまっていたものを前方側を向くようにつけ直したとのこと。

三枚板

正面:『漢の高祖劉邦龍退治』

三枚板は板勾欄型でよく採用されている題材が使われており、人物もかなり手前に張り出して彫刻されていました。

以下、三面について小屋内に素晴らしい解説がありましたので、引用いたします。

中国神話の一番最初は禹の治水物語。
言い換えれば治水をはじめるところから「開発の文明」が始まると言ってもいいかもしれない。
中国の歴代皇帝のシンボルは龍だったという。中国では川を治める者が皇帝となるのだ。
説は複数あり、一説では計画を立て様々な種類の酒を瓶に入れ、小屋の陰に身を隠すと龍は酒の臭いに惹かれて寄ってきた。
そして酒を飲み干し酔い潰れた龍を劉邦が斬り殺したという説もある。

右面:『武松景陽岡の虎退治』

故郷の清河県に帰る途中、偶然出会った景陽岡の人食い虎を退治したことにより、陽穀県の都頭に取り立てられる。
更に偶然その町で働いていた兄武大と再会したが、武大は武松が出張している間に嫂の潘金蓮と、その情夫の西門慶に毒殺されてしまう。
確かな証拠を掴んだ武松は、仇として潘金蓮と西門慶を殺害。その後自首し、孟州に流罪となった。

左面:『天竺斑足王に獅子乱入』

斑足王の身元に九尾の狐が天竺の華陽夫人に姿を変えて国を滅ぼそうと企てる。
しかし、普明長者の持つ名刀「獅子王の剱」の妖力で獅子が宮殿に暴れこむ。
その時、暴れこんだ獅子を撥ね退けようとしている班足王の姿。
この時、華陽夫人に姿を変えていた九尾の狐は正体を現し、漆黒の闇夜に姿を消す。
その後、斑足王は悔いを改め出家する。
勾欄合・縁葛

上が前方、下が後方
勾欄合:『牡丹』
縁葛:『青龍』

妻側勾欄合の数は3つずつになっています。(意外と特徴となる要素です)

上が右面、下が左面
勾欄合:『牡丹』
縁葛:『青龍』

この地車の縁葛は前方から後方までずっと一続きの豪華仕様です

土呂幕

上から
前方土呂幕:『竹に虎』
後方土呂幕:『武者』
旗台:『力神』

閂の跡は埋められていました。

上が右面、下が左面
土呂幕:『武者』

一部顔が交換されているようですが、半分はオリジナルの状態が残っています。

摺出鼻

摺出鼻:『鶴と唐獅子』

私が擬宝珠勾欄堺型で意外と好きな場所。
よく彫り抜かれていますし、精巧な彫刻だと思いませんか?

持送り・勾欄持ち

上が右面、下が左面
持送り:『唐獅子』
勾欄持ち:『松・竹・梅』

台木

右面です。
台木:『牡丹に唐獅子』

台木は改修時に新調されています。

左面です。
台木:『牡丹に唐獅子』

水引幕

左が左面:『龍』
右が右面:『唐獅子』

立派な刺繍が施されています。

要所

①破風中央:『雲海に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍』
③縁葛端:『唐草模様』
④垂木:『菊紋』
⑤肩背棒先:『嬉』の文字
⑥勾欄持ち:高さを増しているようです。
⑦前後妻台:『牡丹』

いかがでしたでしょうか?

複数の地車のパーツが組み合わせられ、独特の形態となっている面白い地車でした。
当日、この地車について色々ご教示いただきました若頭会長様ありがとうございました。

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