大阪狭山市狭山神社 前田地車

皆さんこんにちは。

これまで暫く堺型の記事を続けていましたが、今回は来週に入魂式を控えている前田地車を記事にしたいと思います。

前田は狭山神社の宮本にあたり、石川型地車を所有しています。
個人的に前田と言えば、軽快でオリジナリティー溢れる鉦の演奏技術が真っ先に思い浮かびます。ここまで鉦の主張が激しい曳き唄祭りをしている地区は他に無いでしょう。
最近は鉦や小太鼓のバチまわしが一部で流行っているように見えますが、ハシリは前田なのかな?詳しくは分かりませんが、結構影響力のある地区のように私は感じています。

記事を書くにあたり、地車本体の写真を改めてじっくり見ましたが、構造・彫刻ともに豪華に作られており、大変見ごたえがあるものでした。

それではご覧ください。

大阪狭山市狭山神社 前田地車

◆地域詳細
宮入:狭山神社
小屋所在地:狭山神社南方幹線道路沿い

◆地車詳細
製作年:明治初期
大工:新堂組
彫刻:彫又一門?

参考)
製作年・大工・彫刻・改修年について
山車・だんじり悉皆調査 http://www5a.biglobe.ne.jp/~iwanee/

姿見

左が前方、右が後方。

取材した時間があまりにも遅かったため、夜の装飾です。
写真では分かり難いですが、しっかりと新堂組の破風形状をしています。

側面より

小屋根側まで勾欄がしっかりと回っているのが特徴です。
大屋根下は長押を挟んだ二重虹梁構成になっており、豪華な仕様です。

斜め前より

鬼板

大屋根後方:『獅子噛』

提灯の関係で大屋根後方しか撮れませんでしたが、3面とも獅子噛で同じ顔をしています。
懸魚と釣り合わせるために小ぶりな獅子噛で、おにぎり型の顔が印象に残ります。
1枚モノで出来ており、重ねパーツが一切使われていないのが特徴です。

箱棟

箱棟:『牡丹に唐獅子』

平成28年の大下工務店での改修時に復元された場所。
大下工務店だから辰美工芸の作かな?違っていたらごめんなさい。

懸魚

大屋根前方:『吽の龍』

懸魚に龍単体は上地車全体で比べると珍しいかと思います。
石川型では幾つか例があるようですが、空間がそれほど広くないので、彫刻するのはなかなか難しいのではないかと思います。

鳳凰等に比べて下端のラインが波濤で連続的に決まっているので、遠くから見ても結構存在が目立ちます。

大屋根後方:『鷲』

小屋根:『阿の龍』

車板・桁・枡合・虹梁・長押

大屋根前方
車板:『龍』
桁:『龍』
枡合:『龍』
虹梁:『二十四孝 老莱子・舜王』
長押:『龍』
虹梁:『二十四孝 剡子・董永』

書いている自分も何だか訳が分からなくなりそうですが、本当に部材点数が多く、余すことなく彫刻が施されています。
台輪にも牡丹が彫刻されている等、細部まで抜かりないです。

大屋根後方
車板:『玄武』
桁:『波濤』

なかなか見えにくい場所ですが、これも素晴らしい作品です。

小屋根
車板:『飛龍』
桁:『龍』
枡合:『龍』
虹梁:『二十四孝 王裒・楊香』
長押:『龍』
虹梁:『二十四孝 唐夫人』

枡合・虹梁・長押

右面大屋根側全景

枡合:『龍』
虹梁:『二十四孝 漢文帝?』
長押:『龍』
虹梁:『二十四孝 王祥』

顔が直されているのと、全貌が見えませんので少々疑問ですが、構図的には漢文帝でしょうか。

枡合:『龍』
虹梁:『二十四孝 剡子』
長押:『龍』
虹梁:『二十四孝 黄香』

剡子は2回目の登場です。1回目は大屋根前方にありますが!?

右面小屋根側
枡合:『龍』
虹梁:『二十四孝 黄山谷・陸績』
長押:『龍』
虹梁:『二十四孝 朱寿昌』

左面大屋根側全景

枡合:『龍』
虹梁:『二十四孝 庾黔婁』
長押:『龍』
虹梁:『二十四孝 孟宗』

枡合:『龍』
虹梁:『二十四孝 張孝・張礼』
長押:『龍』
虹梁:『二十四孝 郭巨』

左面小屋根側
枡合:『龍』
虹梁:『二十四孝 子路・姜詩』
長押:『龍』
虹梁:『二十四孝 曾参・呉猛』

龍の顔の多くは欠損してしまったようで、交換されていますが、大分経年で馴染んできたようです。
雰囲気的に上丹生彫りかと思いますので、平成7年の植山工務店での修理時に交換されたものかと思います。

木鼻

上が右面、下が左面。
木鼻:『阿吽の唐獅子・獏、牡丹』

虹梁が二重なので、木鼻も二重です。大屋根後方のみ籠彫りの牡丹、小屋根前方は全身彫刻の唐獅子です。

桁隠し

桁隠し:『松』

勾欄合

前方:『牡丹に唐獅子』

後方:『牡丹に唐獅子』

右面:『牡丹に唐獅子』

左面:『牡丹に唐獅子』

新堂組の古い作品には束の部分のみ彫刻を施しているものもありますが、しっかりと勾欄合として大きく彫刻が施されています。

土呂幕・台木

土呂幕:『狭山池』

石川型なので、彫刻ではなく幕式です。
狭山池が描かれており、地元ならではのオリジナリティー溢れる意匠です。

いかがでしたでしょうか。

夜に撮影した影響でいつもより写真が少な目になってしまいましたが、彫刻は結構写せているかと思います。入魂式での比較に活用いただければと思います。
改修でどのような姿になって帰ってくるのかとても楽しみですね。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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