皆さんこんにちは。
今回は普段と少し趣向を変えて、江戸型山車の記事を書きたいと思います。
私自身、江戸型山車はまだ数える程しか見ていないのですが、見物にあたり調べているうちにこの山車は是非見てみたい!と思ったのが横町の山車でした。
江戸型はその名の通り、江戸で生まれ江戸で曳かれていた山車の形式ですが、江戸城にて将軍様の上覧を受けるため、城門をくぐるべく、高さ調節が可能なからくり装置を備えているのが特徴です。
横町も元は日枝神社の山王祭に引き出されていた山車で、平成28年には158年ぶりに里帰りし、山王祭に参加しています。(見たかった…)
それではご覧ください。
佐倉市麻賀多神社 横町山車
◆山車詳細
形式:三層江戸型
製作年:不明
購入年:1879年(明治12年)9月 (肴町・二番町と共に関岡装束店より購入)
大工:不明
彫刻:不明
人形製作年:江戸末期
人形師:古川長延(推定)
歴史:日本橋上槇町(現・東京都中央区八重洲1丁目)→関岡長光(関岡装束店)→佐倉市横町
参考)
購入年・歴史について
佐倉の祭礼 http://www.maroon.dti.ne.jp/sakura-dasi/index.html
姿見
左が前方、右が後方。
一括りに江戸型と言いますが、細かく見ていくと、様々な仕様のものが存在しています。
横町の山車は躯体等山車本体に着色が一切行われていないのが特徴で、彫刻の題材も人形の石橋に合わせて牡丹に唐獅子で統一されているのが大きな特徴です。
また、囃子台は唐破風ではなく、欄間タイプとなっています。
側面より
欄間タイプの囃子台ですが、カラクリ部分の欄間とは一続きとせず、段差を設けて抑揚を持たせています。
斜め前より
細やかな着色で山車を豪華にするのではなく、徹底して彫刻を施すことで山車を豪華にする方法が採られている横町の山車。
見ごたえ抜群の彫刻が取り付けられています。
斜め前より
人形
人形:『石橋』
人形は山車の顔となる最も重要な存在です。
江戸末期製作、古川長延の作と推定されています。
上勾欄・三味線胴
前方:『牡丹』
上勾欄は撥勾欄になっています。
三味線胴は肉厚な牡丹の彫刻、金具も牡丹の徹底ぶりです。
後方:『牡丹』
右面:『牡丹』
左面:『牡丹』
上段四方幕
上段四方幕:『波濤に牡丹』
勿論幕も牡丹です。
額
額:『横町 菱潭書』
巻 菱潭(まき りょうたん)は幕末~明治の書家です。
同時期に同じ関岡装飾店より購入した、二番町・肴町もよく似た額を取り付けています。
裏面には『明治十二年九月納入 皇國御装束師 関岡長光』と書かれているとのこと。
欄間
前方:『牡丹に唐獅子』
後方:『牡丹に唐獅子』
蟇股があり、その中に唐獅子。それ以外の場所は牡丹で埋め尽くされています。
右面:『牡丹に唐獅子』
アップでもう一枚。
一番好きかもしれません。
右面:『牡丹に唐獅子』
こちらもアップで。
框にもびっしりと雷紋が彫刻されています。雷紋には魔除けの意味合いがあります。
左面:『牡丹に唐獅子』
左面:『牡丹に唐獅子』
見送り幕
見送り幕:『波濤に千鳥』
下勾欄・井桁台
トップ画にも使用しましたが、横町のこの部分は一際目を惹きます。
勾欄の親柱は和様の擬宝珠ではなく、禅宗様の逆蓮(ぎゃくれん・さかばす)を採用しており、装飾性の高いものとなっています。
また、架木・地覆もそれぞれRの異なるアーチ状に作られており、非常に美しい造形です。
下の井桁台(せいごだい)の部分に目をやると、斗供・蟇股が組まれており、社寺建築の要素が多く取り入れられています。
この井桁台より上の部分と車輪・車軸部分は別構成になっており、車体の向きを変えずに上側だけ回転させることが出来ます。
車輪は源氏車ではなく、他の御神酒所(佐倉における屋台型の山車のこと)と同様の駒タイプになっており、この山車を購入する際は井桁台より上の部分を購入したと考えられているようです。
正面
下勾欄:『牡丹』
井桁台:『牡丹』
下勾欄でもしっかりと彫り抜かれた牡丹が彫刻されています。
斗供を使うことで構造は複雑になりますが、足回りから上に向かって自然と広がる美しい姿見を手に入れています。
右面
下勾欄:『牡丹』
井桁台:『牡丹』
左面
下勾欄:『牡丹』
井桁台:『牡丹』
いかがでしたでしょうか。
当サイトは地車・だんじりをメインに掲載しており、訪問される方もそちらを目的に閲覧される方が多いかと思いますが、たまには違う形態の山車を見てみるのも面白いかと思います。
現在、江戸型山車は関東各地に散らばって存在しているので、あれもこれも見ようとすると非常に大変ですが、チャンスがあれば逃さず見に行きたいと考えています。
時々記事化するかもしれませんので、よろしくお願いします。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。