大和高田市天神社 高田地車

皆さんこんにちは。

今回は銘あり、堺型を見る上で指標となる一台をまだ記事にしていないことに気がつきましたので、記事にしたいと思います。

高田地車は車内に『明治十四年巳十月吉日 地車○致シ 細工人 泉國堺区大町東三丁 萬源事 木村源平』の墨書きが残っており、堺型の中では珍しく製作大工と製作年がハッキリと分かる一台です。

高田地車と完全に一致する形態の地車は、数がありそうと見えて思いの外少なく、柏原市上市地車・柏原市旭ヶ丘地車(先代・解体済)が該当します。
(※ただ堺型を細かく分類してみると、3台も同じ特徴の地車が製作されている(現存している)のは量産されている方です。)

萬源こと木村源平は高田地車を製作する前年に大阪市桑津地車、翌年に河内長野市石坂地車(板勾欄型)を手掛けており(いずれも車内に墨書きあり)、かなりバリエーション豊かに地車を製作していたことが伺えます。

それではご覧ください。

大和高田市天神社 高田地車

◆地域詳細
宮入:天神社

◆地車詳細
形式:堺型
製作年:1881年(明治14年)
購入年:不明
大工:【萬源】木村源平
彫刻:彫又一門

参考)
地車の製造年・墨書きについて
花内友樹 著 『泉大津濱八町地車禮讚』

姿見

左が前方、右が後方

上手く撮影出来なかったので、改修前後の写真が混ざっています。ご了承ください。
台木や金具が交換されていますが、オリジナルの雰囲気が色濃く残る地車です。

側面より

特徴を記述すると
①大屋根下は、枡合・台輪(5段に見せる細工)・虹梁の構成。
②木鼻も一段。虹梁に持送りはつかない。
③脇障子あり。上端が小屋根の高さまである長いもの、框無し。
④角障子あり。但し直行方向向きの小型のもの。
⑤全面彫刻の縁葛。
⑥虹梁等で上下二分割されていない土呂幕。

といったところでしょうか。
しかし、これは萬源の製作する地車全てに共通するのではなく、あくまでこのタイプの地車…柏原市上市地車・柏原市旭ヶ丘地車(先代・解体済)だけの話です。

斜め前より

破風

なで肩な形状で、桁隠しはつきません。

石坂地車もなで肩形状なので、萬源の地車全部の特徴かと最近まで思っていましたが、大阪市桑津地車がそうなっていないのを見ると、共通という訳でもなさそうです。

枡組

出三つ斗組です。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

3面とも獅子噛で統一されています。

懸魚

大屋根前方:『鳳凰』

大屋根後方:『鷲』

小屋根:『飛龍』

車板・枡合・虹梁

前方
車板:『龍』
枡合:『張果老』
虹梁:『?』

車板:『朱雀』
枡合:『董奉』

枡合・虹梁

右面大屋根側
枡合:『?』
虹梁:『?』

すみません、これは判別出来ませんでした。

右面小屋根側:『蝦蟇仙人』

頭の上に居る蝦蟇でかろうじて判断できます。

左面大屋根側
枡合:『禹王の舟を負う黄龍』
虹梁:『?』

武内宿禰や安部介丸っぽくもないので、これでしょうか。

禹王(うおう)は中国で治水に功績のある人物です。
日本でも治水の神として信仰され、各地に石碑などが残っています。

この題材で合っていた場合、かなりマイナーな作品になるかと思います。他の地車で見た記憶がありません。

左面小屋根側:『?』

蝦蟇仙人の対と考えると鉄拐かな?あまりそうは見えませんが。

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』

水引幕

水引幕:『阿吽の龍』

大変立派な刺繍の水引幕が取り付けられていました。

花戸口虹梁

花戸口虹梁:『鷹』

脇障子

脇障子:『合戦譚』

小屋根葺地の高さまで続く大きな脇障子は特徴ありますね。

三枚板

正面:『鎮西八郎為朝の剛弓』

三枚板は3面を贅沢に使って鎮西八郎為朝の剛弓が表現されています。

右面:『鎮西八郎為朝の剛弓』

左面:『鎮西八郎為朝の剛弓』

角障子

角障子:『千鳥』

直行方向に小さく取り付けられた角障子も特徴あるものです。

摺出鼻

右面:『鷹・鴬』

左面:『鷹・鴬』

旗台

旗台:『力神』

勾欄合・縁葛

前方
勾欄合:『波濤に千鳥』
縁葛:『合戦譚』

後方
勾欄合:『波濤に千鳥』
縁葛:『合戦譚』

右面
勾欄合:『波濤に千鳥』
縁葛:『合戦譚』

左面
勾欄合:『波濤に千鳥』
縁葛:『合戦譚』

勾欄合は妻側は3枚、平側は6枚。
縁葛は全面彫刻となっています。

腕木

各柱から4本、平側に出ています。

持送り

前方:『竹に虎』

上が右面、下が左面
持送り:『松竹梅』

そう言えば普段数まで数えたことが無かったなぁ…と思い数えると、松4か所、竹4か所、梅2か所でした。

土呂幕

前方:『竹に虎』

前方は火燈窓形状。
閂の跡が残っています。

後方:『加藤清正』

製作年の墨書きが出ているので、取り分け書く必要もないですが、豊臣方の武将であるこの人物が居たら明治時代の地車と見て間違いない。と思える題材です。

右面:『合戦譚』

左面:『合戦譚』

下勾欄・土呂幕

右面
下勾欄:『波濤に鯉』
台木:『波濤に鯉』

左面
下勾欄:『波濤に鯉』
台木:『波濤に鯉』

改修前の台木はこんな感じでした。

右面:『波濤に鯉』

左面:『波濤に鯉』

平成29年に交換された台木です。
台木のみ交換されており、柱の差し込み等は既存合わせとなるので、かなり苦労して取り付けられたのではないでしょうか。

金具

①破風中央:『雲海に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍』
③破風端部:『唐草模様』
④垂木先:『左三つ巴紋』
⑤縁葛端部:『牡丹』
⑥肩背棒先:『髙・保・拾・蓮』の文字。(10町連合のこと)
⑦曳綱取付部

いかがでしたでしょうか。

最近また堺型地車が私の中でブームで、堺型の記事を優先して書きたいなぁ、と考えている次第です・・・

一言に堺型と言いますが、細かく見ていくとかなり様々なバリエーションの作品が作られており、面白いです。
ある程度自分の頭の中でカテゴライズ出来ましたので、これとこの作品は同タイプ、といった感じで分かりやすく比較出来るように記事化していきたいと思っていますので、時間はかかるかと思いますが、続編をぼちぼちお楽しみいただければと思います。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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