
皆さんこんにちは。
今回は週末に入魂式を控えている深井清水町地車をご紹介したいと思います。
撮影したのはかなり前で、いつもに比べて隅々まで撮影は出来ていないのですが、ある程度の枚数は揃っていますので、記事化することにしました。
清水町地車についてまず言われる話が、村の伝説や旧跡を彫刻の題材として採用されていることです。
比較的新しい地車に見られる個性の出し方として、最近はあまり珍しいものではなくなりましたが、清水町地車が製作された昭和62年頃には無い話で、地車の新調ラッシュが続く忙しい中、前例が無いものを0から生み出すのは相当大変だったのではないかと思われます。
他にも、清水町地車には非常に分厚い金具が取り付けられており、そのような点からも強い拘りをもって製作された1台だということがよく伝わってくる作品でした。
それではご覧ください。
堺市中区野々宮神社 深井清水町地車
◆地域詳細
宮入:野々宮神社
小屋所在地:自治会倉庫前
◆地車詳細
形式:折衷型
製作年:1987年(昭和62年)
大工:天野藤壹
彫刻:松田正幸 川原和夫 栗田剛
姿見

左が前方、右が後方。
昭和末期の折衷型天国の深井地区ですが、清水町は5番目の新調となり、既に製作された隣村の地車と被らないよう、色々苦労をされたのではと思います。
清水町は地元ゆかりの題材を豊富に採用する等して、個性を出していることが特筆されます。

側面より
屋根まわりは入母屋型・重厚な枡組で岸和田型の要素が豊富に取り入れられていますが、三枚板形式であったり、平面タイプの土呂幕・下勾欄であったりと、屋根まわりより下は上地車の要素が強いですね。

斜め前より

斜め後より
破風

綺麗な入母屋型です。
前回紹介した深井澤町・深井東町先代とは異なり、こちらは軒唐破風ではないタイプです。
枡組・隅出

よく見えませんが、5段3手先でしょうか。
鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』
整った顔の獅子噛で、遠くを睨みつけています。
ですので、特に大屋根前方は地車の近くではなく、少し遠く離れた場所から見た角度が私は好きです。
耳の生やし方に特徴があり、額から一続きに表現されるものが多い中、こめかみから手前側へ大きく張り出して立ち耳となるように表現されています。
箱棟

箱棟:『龍』
懸魚・桁隠し

大屋根前方
懸魚:『琵琶を弾く弁財天と龍』
桁隠し:『鳳凰』
題材のゆかりは道路建設に際し、弁天池を埋め立てたことによるものです。

小屋根
懸魚:『?』
桁隠し:『風神雷神』
車板・枡合・虹梁


大屋根前方
枡合:『金鶏伝説』
虹梁:『琴の橋』
大屋根前方に配置された金鶏は、遠くからでもよく目立ちます。
琴の橋は深井清水会館前にかかっている橋です。

右面大屋根側
枡合:『天乃岩戸』
虹梁:『共栄湯』

右面小屋根側
枡合:『素戔嗚尊八岐大蛇退治』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

左面大屋根側
枡合:『因幡の白兎』
虹梁:『めがね井戸』

左面小屋根側
枡合:『神武東征』
虹梁:『牡丹に唐獅子』
平側の枡合はどれも神話より題材を得ています。
木鼻

上が右面、下が左面。
木鼻:『阿吽の唐獅子』
前柱は縦長の半身彫刻・中柱は全身彫刻・後柱は通常サイズの半身彫刻とバリエーションがあります。
間仕切り

間仕切り:『谷越獅子』
三枚板

右面:『秀吉本陣佐久間の乱入』
正面は撮影出来ていませんが、三枚板はどれも松田正幸師の作品です。
広いスペースを活用してどれも大きく迫力ある作品となっています。

左面:『長宗我部元親』
大脇

大脇:『合戦譚』
基本的に三枚板に合わせてあると思われます。
大脇竹の節

大脇竹の節:『谷越獅子』
摺出鼻

右面:『合戦譚』

左面:『合戦譚』
旗台

旗台:『獅子噛』
番号持ち

番号持ち:『桃太郎』
勾欄合

勾欄合:『二十四孝』
平側は撮影出来ていませんが、どれも題材は二十四孝で良いと思います。
土呂幕

前方:『加賀篠原の戦い』
目立つ正面の題材としては珍しい方でしょうか。

左面小屋根側:『金太郎』
殆ど撮れておらず、いずれも下勾欄でよく見えないのですが、金太郎がいることは判別できました。
妻側は合戦系、平側は子供達でも楽しめるようなおとぎ話になっているのでしょうか。
台木

台木:『牡丹に唐獅子』
水系の題材が採用される場所ですが、あえて牡丹に唐獅子とされています。
ただ、全く事例が無い訳ではなく、橿原市市場西垣内地車など古い堺型には見かける題材です。
こちらも隣村と被らないよう苦労された部分ではないかと思います。
金具

①破風中央部:『雲海に宝珠・梅に鶯』
②破風傾斜部:『昇龍・梅に鶯』
③破風端部:『梅に鶯』
④垂木先:『清』の文字。
⑤縁葛先:『竹に虎』
⑥兜桁先:『八重桜紋』
⑦肩背棒先:『清水』の文字。
冒頭でも書きましたが金具の分厚さには驚きました。
他地区ではなかなか見かけない程、厚みを持たせて製作されており、その分立体感も豊富です。
是非着目してみてください。
銘

三枚板に松田正幸師の銘が入っています。
いかがでしたでしょうか。
いつもに比べると写真の量が少ないので、少し物足りない記事になってしまったかもしれません。
撮影出来ていない部分を見るべく、またいつか見学したい一台ですね。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。