香取市佐原 八坂神社 田宿区幣台

皆さんこんにちは。

今回も再び佐原型の山車の話題となります。

田宿の幣台は佐原の大祭初見物の私を虜にした一台で、①歴史の古さ ②唯一の赤い漆塗りの車体 ③これまた唯一の漆蒔絵の格天井 ④隣り合う別パーツの彫刻を一体として題材を与える作品作り ⑤唐獅子・虎・龍など山車に似つかわしい題材を採用し、彫刻師の豊かな世界観を楽しめる作品になっていること 等々・・・

「そうそう!個人的にこう言う意匠メッチャ好きやねん・・・」というのが盛り沢山に詰まった素晴らしい山車でした。

それではご覧ください。

香取市佐原八坂神社 田宿区幣台

◆幣台詳細
①躯体
形式:佐原型
製作年:1851年(嘉永4年) 

②彫刻
彫刻製作年:1856年~1858年(安政3年~5年)
彫刻師:十代目 後藤茂右衛門正忠 (茨城県笠間)

③飾り物
題材:伊弉那岐尊
飾り物製作年:1910年(明治43年)
人形師:面六 (東京都台東)

④額
文字:雍泰(ようたい)
意味:和やかで落ち着いていること
額製作年:不明
書家:並木栗水 (漢学者)

◆下座連
清水芸座連

参考)
香取市ホームページ 山車の構造 https://www.city.katori.lg.jp/smph/sightseeing/matsuri/dashi/dashi_details.html

姿見

左が前方、右が後方。

数ある佐原の山車の中で赤い漆塗りの山車は田宿だけ。
とてもよく目立ちます。

側面より

この写真では分かり難いですが、他にも田宿の特徴として、大天井の漆蒔絵がピックアップされます。後ほどご紹介します。

斜め前より

赤には金が似合います。
金物も豊富に取り付けられており、状態が良いので、とても綺麗です。

大天井

跳高欄はテリがよく効いています。
平側の跳勾欄はそれぞれ妻側方向に折ることが出来るようになっています。

飾り物

伊弉那岐尊、面六の作です。

雍泰(ようたい)と書かれており、漢学者の並木栗水師の書です。

漢字それぞれの意味を合わせると「和やかで落ち着いていること」という意味になるかと思います。

額持ちの先にも細かい龍の彫刻が施されており、拘りを感じます。

前方全景

この山車は個人的なお気に入りポイントが本当に多いです。

欄間・方立一体で獅子の子落とし、蕨手左右セットで龍虎等・・・
題名にしてシンプルですが、山車やだんじり彫刻には大変似つかわしい題材です。
また、獣の題材は人物モノとは異なりベースとなる浮世絵もないので、彫刻師が描く豊かな世界観をありのまま楽しむことが出来るのが良いところです。

格天井

田宿の特徴、漆蒔絵です。
夜の飾りつけになっていたので、あまり見えなかったのが少し心残りですが。

雨に濡れると水滴の模様が残ってしまうので、雨対策はかなり厳重に行われているようです。

前方欄間

前方欄間:『獅子の子落とし』

前方方立

前方方立:『獅子の子落とし』

子を突き落とす親はとても厳しい表情。

この子獅子は必死に上ってきています。

背中に落ちた水が、背中に一瞬溜まったり跳ねたりして流れを変え、また落ちていく様が表現されています。お見事!

玉簾

玉簾:『九尾の狐』

蕨手

蕨手:『龍虎』

蕨手:『龍虎』

目が眉に隠れて怪しい雰囲気を出している獣の彫刻は個人的に大好きです。
龍虎の背景はそれぞれ波濤と竹で、これもまた定番で大変似つかわしいものとなっています。

細部の紹介が終わったところで、しつこいですが、改めて全景を・・・
どうです?メチャクチャに格好良いと思いませんか!?

後方全景

後方です。

後方も前方と同じ、欄間と方立を一体として題材が組まれており、谷越獅子が表現されています。

後方欄間

後方欄間:『谷越獅子』

後方方立

後方方立:『谷越獅子』

相変わらず水の表現が美しく、厳しい環境に育つ立派な松も表現されています。
片方の谷の下には唐子が居ます。

後方の縁の部分、確か浜宿の山車にもこのような細工を見かけた気がしましたが、何という工芸技術なのでしょうか。
ご存知の方いたら教えてください。

平側全景

平側全景です。

田宿の山車は柱周りはあっさりとしており、彫刻は取り付きません。

右面欄間

右面欄間:『唐獅子』

左面欄間

左面欄間:『唐獅子』

こちらも前後で一体となるように工夫されています。
製作から100年以上経ってもチリがピッタリ合っているのですから、山車本体も彫刻も凄く維持管理が良いのでしょう。

後方下勾欄

後方:『唐子遊び』

片方には司馬温公の甕割りが表現されています。

右面下勾欄

右面:『唐子遊び』

左面下勾欄

左面:『唐子遊び』

奥の棚には二十一史と書かれています。
二十一史は中国の正統な歴史書で、古代から元に至るまでの歴史書です。
棚の中に入っているのでしょう。

擬宝珠

檜扇紋になっており、扇端部の房は本物で表現されています。

隅木の端部にも檜扇紋があります。

妻側腰周り全景

妻側腰周り全景です。
持送りには細かな彫刻はなく、模様が刻まれています。

前方胴羽目

前方:『波濤』

胴羽目上に長押が四周ぐるりとまわっているのも田宿の特徴です。

平側腰周り全景

平側腰周り全景です。

右面胴羽目

右面:『波濤』

左面胴羽目

左面:『波濤』

胴羽目はどれも波濤になっています。
真っ黒な木の色が歴史の深さを物語っていますね。

蕨手に彫刻師、後藤茂右衛門正忠の銘が刻まれています。
現在の茨城県笠間市に居た幕府お抱えの彫刻師とのこと。

玉簾は1977年に作られたようです。

いかがでしたでしょうか。

田宿の山車は大阪で言うところの太子町の大道地車と平野区の市町地車を掛け合わせたような感じでしょうか。(意味不明な表現ですみません)
歴史あり、独特の意匠ありの素晴らしい作品でした。

来年は良い天気となり、今回あまりよく見えなかった部分もしっかりと見えたら良いな・・・と思います。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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