千早赤阪村建水分神社 二河原辺地車

皆さんこんにちは。

全国各地の地車を見に行っていますが、この地車を見ずして何を語るのかといった作品を追い求める機会が必ず出てきます。
二河原辺地車もその一台で、見物のため、昨年の秋に本数の少ないバスに乗り、山道を歩き、千早赤阪村へと足を運びました。

ご存知の方も多いかと思いますが、二河原辺地車と言えば相野の五枚板彫刻。
二河原辺地車以外の五枚板の地車は現存するもので、富田林市五軒家・羽曳野市古市北町・大和高田市本町壱丁目しか存在しておらず、数多くある地車の中でも取り分け貴重な存在であることは言うまでもありません。

それではご覧ください。

千早赤阪村建水分神社 二河原辺(にがらべ)地車

◆地域詳細
宮入:建水分神社
小屋所在地:道の駅ちはやあかさかを南進、建水分神社東部

◆地車詳細
形式:大和型五枚板
製造年:江戸末期
購入年:大正末期
大工:不明
彫刻:相野伊兵衛・相野徳兵衛
歴史:奈良県新庄町(現・葛城市)→千早赤阪村二河原辺

姿見

左が前方、右が後方

非常に背が高い印象です。足回りも幅がかなりあります。

側面より

五枚板形式なので、大屋根梁下にも彫刻が入ります。
段差勾欄になっており、土呂幕は三分割で全て通し柱になっていません。まるで神戸型のかぐら造りのようです。

側面より

提灯飾りをつけた状態です。

斜め前より

同じく提灯飾りをつけた状態。

破風

平成12年の改修で交換されていると思われます。
よく効いたテリ・細かい蓑甲・大屋根前方のみ取り付けられている桁隠しが特徴です。

車板の隙間、下記の枡組の特徴などから、元はもう少し勾配の緩やかな屋根だったのかもしれません。

枡組

大屋根前方

出三斗組です。

大屋根後方

現在は何も取り付けられていませんが、ホゾが切られています。
元は桁飾りのようなものが取り付けられていた可能性があります。

小屋根:『牡丹』

大斗肘木になっています。

桁が二重になっているので、平側の肘木は屋根材を支持しておらず、宙に浮いた状態。
桁を二重にしなければ垂木に干渉するための措置でしょうか?

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

3面とも獅子噛になっています。
立った耳と大きく巻いた鬣が特徴です。

懸魚・桁隠し

大屋根前方
懸魚:『鳳凰』
桁隠し:『鳳凰』

大屋根前方のみ桁隠しが取りつきます。

小屋根:『牡丹に唐獅子』

車板

大屋根前方:『青龍』

小屋根:『牡丹』

柔らかい牡丹の表現が魅力的です。

枡合

大屋根右面:『飛龍』

後方柱側も不自然な空洞があります。元は枡組があったか?

小屋根右面:『吽の龍』

大屋根側とは異なり、枠をはみ出すように大きく彫刻が施されています。
理由は三枚板の題材を見て頂けると分かりますが、三枚板の題材と関連させているため、と思われます。

大屋根左面:『牡丹に唐獅子』

小屋根左面:『阿の龍』

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』

持送り

持送り:『牡丹』

大きく籠彫りの作品になっています。

脇障子

脇障子(前方):『昇龍・降龍』

脇障子(後方):『昇龍・降龍』

摺出鼻

右面:『猿に鷲』

左面:『猿に鷲』

旗台

旗台:『?』

題材は何と呼ぶべきでしょうか。
オリジナルにはなかったものと思われます。

水引幕

水引幕:『竹に虎』

五枚板

大屋根右面:『翠虚』

さぁこの地車の見せ所です。大屋根下の大きなスペースを使って大きく彫刻が施されています。
元々手に松明のようなものを持っていましたが、欠損したようです。

アップでもう一枚。

大屋根左面:『黄石公・張良』

地車彫刻によく採用される中国の題材の一つです。
大蛇から沓を取り返し、太公望の兵書を授かる場面。

別角度でもう一枚。

相野伊兵衛直之の銘。

小屋根正面:『獅子の子落とし』

小屋根右面:『馬師皇』

枡合の龍と関連していると思われます。

相野徳兵衛直信の銘。

小屋根左面:『苗龍仙人』

こちらも枡合の龍と関連している題材と思われます。
苗龍仙人・・・詳細は私も実はよく分かっておらず、巻物から龍を出現させている場合にこの題材と判断しています。
地車彫刻では時々登場しますがが、山車や社寺の彫刻としては殆ど登場しません。なぜ地車のみこの仙人がよく彫刻されるのか、疑問です。

相野徳兵衛直信の銘。

勾欄合・縁葛

前方
勾欄合:『千鳥・鶴』
縁葛:『鹿』

勾欄合・縁葛は一つの題材で統一かと思いきや、かなり豊富な種類で動物の彫刻が施されています。
一つの題材から様々なシチュエーションを描くことさえ神業だと感じますが、それぞれ異なる動物なのですから更に凄い技術ですね。

記述した題材が全て正しいかは微妙です、ご容赦ください。

後方
勾欄合:『千鳥』
縁葛:『兎』

右面
勾欄合:『鴨・鴬・千鳥』
縁葛:『猪・兎』

左面
勾欄合:『千鳥・鴬・鷺』
縁葛:『狐・兎』

持送り

大屋根前方妻側:『牡丹に唐獅子』

前方妻側は張り出しも大きいため、大型の持送りが取り付けられています。

大屋根前方妻側:『牡丹に唐獅子』

右面平側:『牡丹・力神』

左面平側:『牡丹・力神』

力神は様々な表情とポーズで見ていてとても楽しい作品です。

土呂幕

前方:『唐子』

大屋根側とは縁が切られている柱を境に内側に扉、外側に彫刻が施されています。
この形状も大和型ではよく見られる仕様です。

後方:『唐子遊び』

後方は左右で二枚の彫刻が施されています。
後年の改修で強引に通された肩背棒が彫刻を貫通しています。

元より大和型は地車の周囲をぐるりと回す肩背棒が考えられていなかったのか、貫腕やそれを支持する持送りが取りつくスペースが見受けられません。
二河原辺地車以外の大和型は台木から金具で支持するか、貫腕を通すスペースを取る改造を施すようにして取り付けられています。

右面:『唐獅子』

左面:『唐獅子』

唐獅子が好きな私は非常に見ていて惚れ惚れする箇所です。

台木

右面:『波濤に千鳥』

左面:『波濤に千鳥』

斜め前より

この地車は大和型ですが、斜め45度前方に張り出す腕木の構造は見受けられません。

改修前の台木

小屋に保管されていました。

要所

昔懐かしの後輪ブレーキです。

この地車は後輪のみブレーキが装備されています。差し上げの時に便利です。

金具

①破風中央:『雲海に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍』
③破風端部:『雲海』
④垂木先:『左三つ巴紋』 建水分神社は菊水紋ですが、この地車は左三つ巴紋です。以前の所有村の神社を調べてみると、八幡宮なのでその名残か?
⑤縁葛端:『唐草模様』
⑥柱:『左三つ巴紋』
⑦台木先:『二河原辺』の文字

いかがでしたでしょうか。

訪問当日は小屋出しを少しお手伝いさせていただきましたが、彫刻が豊富な分、重量もかなりある地車だと感じました。
村の軒数は決して多くはないですが、宮入では豪快に曳きまわし、しゃくっている姿を見ることができますので、その点でも注目です。

貴重な相野一門の五枚板地車、今後も末永く活躍して欲しいところです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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