大阪市東成区八王子神社 中本地車

皆さんこんにちは。

先日の櫻宮地車の記事に続いて、よく似た地車をご紹介させていただきます。

中本地車は東成区に存在する7台の地車のうちの1台で、東小橋と同年代の昭和生まれの地車です。
大阪型では大変珍しい淡路・開生珉師の彫刻を持つ地車で、昭和の銘車・マニア好みの一台といったところでしょうか。
新調から大掛かりな改修を受けておらず、オリジナルの良さが残っているのも良いところです。

そんな中本地車ですが、令和5年に新調が決定しているようで、中本の地でこの地車が活躍する姿を見れる時間はそう多く残されていないようです。
それほど古い地車では無いですので、次なる活躍の地があるかと思いますが、今後の動向が非常に気になるところであります。

それではご覧ください。

大阪市東成区八王子神社 中本地車

◆地域詳細
宮入:八王子神社
小屋所在地:神社境内
歴史:平野川と猫間川の下流沿岸に位置する。
明治22年に森・古屋敷・中道・本庄・西今里・中浜の6ヶ村が合併して中本村が成立。村名は中道村・中浜村・本庄村の各1字を折衷して命名された。

◆地車詳細
形式:大阪型
製作年:1957年(昭和32年)7月
大工:【梶内だんじり店】菅善次郎
彫刻:開生珉

◆歴代中本地車
・先代(初代):慶応年間製作、大阪型。老朽化に伴い昭和32年5月に城東区諏訪へ売却。現・柏原市大正東。
・現地車(2代目):昭和32年7月新調、大阪型。

(参考)
地域の歴史について
角川書店 『角川日本地名大辞典 27 大阪府』
地車製造年・大工・彫刻について
社団法人大阪観光協会 大阪のだんじり

姿見

左が前方、右が後方

昭和32年生まれのこの地車。
当時の主な出来事は第一次岸内閣発足、今ではすっかり馴染みのあるコカコーラや三輪自動車のダイハツミゼットが大ヒットした時代のようです。

社団法人大阪観光協会『大阪のだんじり』に記載がありますが、この地車は肩背棒の幅が狭いのが特徴で、理由として地車新調にあたり多額の出資をした有力者が狭い辻を入ったところに住んでおり、その家の前へ地車を通すためにこの肩背棒の幅になったとのことです。
確かに言われてみれば少々幅狭の肩背棒になっているように見えます。

側面より

新調当時から大掛かりな改修を受けておらず、オリジナルそのままの地車です。

斜め前より

余談ですが、中本地車は非常に曳行範囲が広く、一たび曳行に出てしまえば本当に見つけるのが困難な地車でもあります。
また、曳行コースも掲示していないことが殆どですので、自力で探そうとせず、熱中症になる前に早めに知っていそうな人を見つけて尋ねるのが吉です。

斜め前より

2011年の秋、珍しく旧村名の”本庄”の地名が入った提灯をつけていた時の写真。
今の住所表記からは消えてしまい、本庄中学校として名前が残るのみでしょうか。

破風

テリの効いた形状、蓑甲の間隔も広いです。
櫻宮地車とは端部の仕上げが異なります。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

内側になびく鬣の形状が特徴で、爪が4本です。
歯は珍しく金色に着色されています。

懸魚・桁隠し

大屋根前方
懸魚:『鳳凰』
桁隠し:『龍』

小屋根
懸魚:『大己貴命鷲退治』
桁隠し:『龍』

大屋根・小屋根の違いはあれど懸魚に鷲退治の題材は櫻宮地車と同じです。

車板

大屋根前方:『宝珠を掴む青龍』

小屋根:『谷越獅子』

枡合

右面大屋根側:『吽龍』

右面小屋根側:『阿龍』

左面大屋根側:『阿龍』

左面小屋根側:『吽龍』

大屋根・小屋根でそれぞれ阿吽になるように構成されています。

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』

行燈に隠れたり、撮り忘れが多いです。すみません。

大屋根と小屋根の境界部には木鼻はありません。

水引幕

水引幕:『珠取り龍』

分厚い刺繍の立派な幕をつけています。

脇障子

脇障子:『谷越獅子』

三枚板

正面:『秀吉の出陣』

右面:『福島正則の勇戦』

左面:『佐久間玄蕃秀吉の陣に乱入せんとする』

三枚板は賤ヶ岳の合戦、賤ヶ岳の七本槍に関連する題材でまとめられています。
左下にタイトルが記載されていますので、その通りの表記とさせてもらいました。
どれも良作揃いで、年季が経った木の色も相まって作品に凄みが出ています。

角障子

角障子(前方):『武者』

角障子(後方):『武者』

どれも目が取れてしまっていますが、こちらも見逃せません。良い表情をしています。

勾欄合・縁葛

前方
勾欄合:『朱雀・鶴・鳳凰・鷲・千鳥』
縁葛:『牡丹に唐獅子』

後方
勾欄合:『牡丹』
縁葛:『牡丹に唐獅子』

右面大屋根側
勾欄合:『干支』
縁葛:『牡丹に唐獅子』

勾欄合の干支の題材、開始点は右前方からです。

右面小屋根側
勾欄合:『干支』
縁葛:『牡丹に唐獅子』

左面大屋根側
勾欄合:『干支』
縁葛:『牡丹に唐獅子』

右面小屋根から左面大屋根に移って継続、十二支なのでここで終了。
すると、この先どうなるのか・・・?

左面小屋根側
勾欄合:『干支』
縁葛:『牡丹に唐獅子』

謎ですが、子・寅・午・卯が再び登場していました。
何か意図あってこうなっているのでしょうか、不明です。

土呂幕

前方:『牡丹に唐獅子』

後方:『牡丹に唐獅子』

右面:『牡丹に唐獅子』

左面:『牡丹に唐獅子』 

土呂幕は大振りな牡丹に唐獅子で統一されています。格好いいですね。

台木

右面:『波濤に鯉』

左面:『波濤に鯉』

台木の先端が象鼻形状で、櫻宮地車とは異なります。
塞がれている穴の大きさから木軸の名残を感じます。

金具

①破風中央部(大屋根):『左三つ巴紋』
②破風中央部(小屋根):『稲荷抱き稲紋』
③破風傾斜部・端部:『昇龍・唐草模様』
④垂木先:『左三つ巴紋』
⑤脇障子兜桁:『桐』
⑥勾欄地覆部:『稲』 縁葛:『唐草模様』
勾欄地覆部の丸い金具は中本の先代にあたる城東区諏訪(現・柏原市大正東)にも見られるもので、先代の意匠を引き継いでいるように感じられます。

いかがでしたでしょうか。

獣の彫刻が大半を占める、昔ながらの上地車らしい大変良い地車でした。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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