河内長野市西代神社 古野地車

皆さんこんにちは。

特に話題に上がっている訳ではありませんが、特に無ければ私の好きな河内長野市の板勾欄型地車を紹介しようとのことで、最近綺麗になった河内長野市古野地車をご紹介いたします。

元・泉州で活躍していた1台で、堺市太井町の先代地車にあたります。更に元を辿ると、今は地車文化が絶えてしまった住吉の安立町一丁目地車と云われています。
太井町で昭和60年に改修を受けるまではオリジナルの姿を良く残していましたが、それ以後は大きく改修の手が加えられることはなく、今の姿は太井町で活躍していた末期と大きく変わらない姿で曳行されています。

それではご覧ください。

河内長野市西代神社 古野地車

◆地域詳細
宮入:西代神社
小屋所在地:会所に併設
歴史:かつては6世紀前半の五の木古墳があった。明治22年〜明治43年は長野村の大字、明治43年〜昭和29年は長野町の大字、昭和29年に河内長野市古野町となる。昭和41年に一部が本町・長野町・西代町・本多町・栄町・菊水町となる。

◆地車詳細
型式:板勾欄出人形型
製作年:明治時代
購入年:1998年(平成10年)
大工:住吉大佐
彫刻:彫又一門
歴史:大阪市安立町一丁目?→堺市太井町→河内長野市古野

参考)
地域の歴史について
角川書店 『角川日本地名大辞典 27 大阪府』

姿見

左が前方、右が後方

地車の第一印象を決める破風が交換されていますので、パッと見は古い地車に見えません。

側面より

大きさは板勾欄型の中では中規模程度でしょうか。
二重虹梁、二重勾欄の豪華仕様です。

斜め前より

赤い房が特徴的です。

斜め後より

破風

昭和60年の吉為工務店での改修時に新調された破風です。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

近藤晃師の作品でしょうか。
元は、橿原市上田南垣内地車・尼崎市松原神社地車・河内長野市三日市南部地車等と似た顔をしていました。

懸魚

大屋根前方:『鳳凰』

大屋根後方:『雲海』

小屋根:『鷲』

車板・枡合・虹梁

大屋根前方車板:『雲海・?』
枡合:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『司馬温公の甕割り』

車板には別の地車のパーツが取り付けられています。
神額の浦野神社は明治41年に西代神社に合祀された古野の氏神様で、祀神は誉田別命です。

小屋根枡合:『牡丹に唐獅子』

枡合・虹梁

右面大屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『唐子遊び』

右面小屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』

左面大屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『唐子遊び』

左面小屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』

柱巻き・板勾欄

まずは全景から

柱巻き

柱巻き:『昇龍・降龍』

板勾欄

前方:『源義家、勿来の関に詩を詠む』

右面:『龍退治』

左面:『虎退治』

板勾欄が
①背景のみ彫刻(人物は出人形にて表現)
②全てを彫刻(出人形はつかないことが多い)
③両脇に背景と人物を彫刻(前方に多い、人物は出人形でも表現される)
の3面ともタイプが異なるものが使われているのがこの地車の特徴です。

花戸口虹梁

花戸口虹梁:『竹に虎』

脇障子出人形

脇障子出人形:『武者』

脇障子

住吉大佐でお馴染みの舞台タイプの脇障子です。

三枚板・角障子

まずは全景から

三枚板

正面:『漢高祖龍退治』

右面:『大己貴命鷲退治』

左面:『【水滸伝】武松の虎退治』

三枚板は定番の退治モノです。

角障子

角障子:『武者』

摺出鼻

摺出鼻:『松』

旗台

旗台:『阿吽の唐獅子』

持送り

持送り:『波濤』

貫腕

オリジナルではありません。

土呂幕

前方:『雲海』

大概は山水草木になりますが、例外的に雲海で更に獅子噛付きです。

この場所に獅子噛は堺型でよくありますが、古野の先代地車は千早赤坂村中津原地車として彫刻を転用しており、そちらは土呂幕上に同様に獅子噛がついていますので、古野先代のものではないかと思います。となると、堺市太井町先代のものでしょうか。

ベースとなる地車を改造して住吉大佐が作り上げた可能性もありますが、それにしては全体的に綺麗に納まっていますので、それでは無いような気がします。

平成30年の改修で獅子噛は居なくなってしまいました。
扉は開けた方が大太鼓の響きが良いでしょうね。

後方:『武者』

右面:『武者』

左面:『武者』

特に限定された場面ではないと思われます。

下勾欄

下勾欄:『波濤』

オリジナルではありません。両端に親柱が取りつきます。

台木

右面:『波濤に鯉』

左面:『波濤に鯉』

オリジナルではありません。
泉州でやりまわしに対応するべく足回りの改修を受けた地車は、嫁いでからもすぐに良い状態で曳行出来るので、次に所有する村にとっては良いのかもしれません。

金具

①破風中央:『唐草模様に宝珠』
②破風傾斜部:『唐草模様・左三つ巴紋』
③破風端部:『唐草模様』
④垂木先:『菱紋』
⑤縁葛:『唐獅子』
⑥肩背棒先:『古野』の文字。

住吉大佐の銘で、大変貴重なものです。住吉郡時代のものではないかと思われます。

昭和60年の吉為工務店での改修時の銘です。

いかがでしたでしょうか。

河内長野市に数ある板勾欄型でも意外と少ない、正真正銘の住吉大佐の銘入り板勾欄型地車です。
古野と言えば、お囃子が昔ながらの摺鉦を使用しない、大太鼓・小太鼓での構成になっているのも特徴ですので、注目して見てみると面白いのではないのでしょうか。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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