神戸市東灘区森稲荷神社 森地車

皆さんこんにちは。

前回、平野区の市町地車をご紹介しましたが、その時少し話題にしました野堂東組先代地車にあたる森地車を今回はご紹介したいと思います。

森は東灘区の東端の山手側の地域にあたります。
近隣の地域として深江・青木があり、3村の交流会は本祭でも毎年盛大に行われています。
また、森は本山だんじりパレードにも参加しており、他地区とも積極的に交流を行っている印象です。

そして、森と言えば、宮入前の神社坂上りがやはり有名ではないでしょうか。
急坂かつ曲がり道、しかも片側は崖のところを必死に上る様は他地区では見ることが出来ない光景で、名物となっています。

それではご覧ください。

神戸市東灘区森稲荷神社 森地車

◆地域詳細
宮入:森稲荷神社
小屋所在地:神社境内
歴史:六甲山南東山麓、天上川の最上流域に位置する。「和名抄」に津杜郷と記され、その由来は住吉の津(湊)を守っていた津守連がいたことによるという(神戸の町名)。地名の由来は、津守にちなむ説、稲荷神社の森が広がっていたことによる説の2説がある(本山村誌)。

◆地車詳細
形式:神戸型(大阪型改造)
製造年:1847年(弘化4年)
購入年:1997年(平成9年)
大工:【柳屋】三代目 柳平兵衛
彫刻:【彫清】三代目 柳原清蔵・服部清七
改修大工:平間利夫
改修彫刻:井岡勘治
歴史:大阪市野堂東組→神戸市森

◆歴代森地車
・現地車(3代目):平成9年購入。
・先代(2代目):昭和10年頃購入。現地車新調に伴い三田市西山へ。
・先々代(初代):大型の神戸型地車。川に落ちて大破と伝わる。

参考)
地域の歴史について
角川書店 『角川日本地名大辞典 28 兵庫県』

地車詳細・歴代森地車について
山車・だんじり悉皆調査 http://www5a.biglobe.ne.jp/~iwanee/

姿見

左が前方、右が後方。

すっかり馴染んでいますが、元・大阪型の地車です。
パッと見では擬宝珠勾欄にその名残を感じることが出来ます。

側面より

森に嫁ぐ際に神戸型に近づくよう、改修が施されました。
しかし、大きくは張菜棒の取り付き方を変え、台木が交換されて外駒になった程度です。
今も年々少しずつ手が加えられており、土呂幕の前後を入れ替えたり、木鼻を交換したりしています。

斜め前より

破風

貴重なオリジナルが残っています。
なで肩の破風に懸魚の下端を超える程の大きな桁隠しが取り付くのが特徴です。

枡組

隅肘木付き二段一手先です。この辺りも市町地車とよく似ています。

鬼板

上から
男屋根前方:『獅子噛』
男屋根後方:『獅子噛』
女屋根:『獅子噛』

平成15年に井岡勘治師の作に彫り替えられました。それまでは鍾馗や鷲の飾目彫刻でした。
この井岡勘治師の作にも拘りを感じることが出来、特に後方を向く2面は先代地車に倣って鞘耳になっている珍しい仕様です。
また、女屋根の作品は口ひげがある等、3面共表情が異なります。

箱棟

箱棟:『雲海』

懸魚・桁隠し

男屋根前方
懸魚:『鳳凰』
桁隠し:『飛龍』

オリジナルの獣の彫刻の素晴らしさは言うまでもありません。

女屋根
懸魚:『猿に鷲』
桁隠し:『麒麟』

女屋根の懸魚は彫り替えられています。この狭い空間に猿が3匹もいます。

車板・枡合・虹梁

男屋根前方
車板:『親子麒麟』
枡合・虹梁:『宝珠を掴む青龍』

大きな青龍は遠目からでもよく目立ちます。
元は市町と同様に中央部が折り上がるよな形状になっていたと思われますが、上手に埋まっています。

女屋根
車板:『親子獅子』

酒井宏・秀哲親子の作に交換されています。

左下に銘があります。

枡合・虹梁

右面男屋根側
枡合:『竹に虎』
虹梁:『武者』

右面女屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』

左面男屋根側
枡合:『竹に虎』
虹梁:『武者』

左面女屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』

大正末期に住吉大佐で大修理を受けていますので、はみ出して斜めに取り付く枡合等、平側は特に住吉大佐ならではの雰囲気になっています。

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻『阿吽の唐獅子・獏・雲海』

年々少しずつ改修されている場所です。
撮影当時は男屋根側は交換済、女屋根側にオリジナルが残っていました。

オリジナルは玉を持ったり、舌を出したり、バリエーション豊かなものでした。

後に交換された女屋根側の木鼻。
獣ではなく、地元の風景が彫刻されています。

水引幕

水引幕:『珠取り龍』

香川・観音寺 高木一彦師の作です。
縁には宮本の文字も。

絵振板

絵振板:『阿吽の飛龍』

神戸型には取り付くパーツですが、オリジナルの時点で存在していました。

脇障子

脇障子:『昇龍・降龍』

枠をはみ出して龍が泳いでいます。
このようなオリジナリティ溢れる規格外の作品は本当に素晴らしいと思います。
更に継ぎ目がないことを見る限り、一本の木材から彫刻されていますね。

見送り幕

見送り幕:『天竺の班足王』

ちらりと見えていますが、三枚板彫刻が残っています。
三枚板の題材は『富士の巻狩り』で、服部清七の作です。
本祭では基本見送り幕をつけていますので、私もまだ見たことがありません。

右面:『親子獅子』

左面:『親子獅子』

勾欄合・縁葛・番号持ち

前方
勾欄合:『富士の巻狩り』
縁葛:『牡丹』

番号持ち:『天狐の舞』

神楽の様子でしょうか、森稲荷神社でも行われている?

後方
勾欄合:『富士の巻狩り』
縁葛:『牡丹』

番号持ち:『赤鳥居』

酒井師の作です。森稲荷参道の赤鳥居を表していると思われます。

勾欄合・縁葛

右面
勾欄合:『富士の巻狩り』
縁葛:『牡丹』

左面
勾欄合:『富士の巻狩り』
縁葛:『牡丹』

勾欄合は全て富士の巻狩りで統一です。三枚板に合わせてあると思われます。

土呂幕

前方:『俵ねずみ・雑兵』

後方:『俵ねずみ・雑兵』

俵ねずみは後の時代に追加されたものでしょう。
こちらも五穀豊穣を願う縁起モノですね。

右面:『雑兵』

左面:『雑兵』

陣幕に笹竜胆の家紋が見えますので、源頼朝に関連する題材で、富士の巻狩り時の宿場の様子を描いたものと思われます。
表情が穏やかなので、凱旋後の宴の準備といったところでしょうか。

台木

台木:『波濤』

右面:『波濤に鯉』

左面:『波濤に鯉』

台木には井岡勘治師の銘が刻まれています。

猫木

猫木:『玄武・鯉』

猫木に小さく玄武と鯉がいます。

平成10年の改修時の銘板です。

金具

①破風中央:『松に左三つ巴紋』
②破風傾斜部:『松に鷲』
③垂木先:『左三つ巴紋』
④脇障子兜桁:『菊紋・森』の文字。
⑤縁葛端:『唐草模様』 勾欄とは金銀で色が使い分けられています。
⑥張菜棒先:『森』の文字。
⑦台木先:『森区』の文字。

昼提灯

こちらも観音寺の高木一彦師の作です。

いかがでしたでしょうか。

灘の都賀の地車もそうですが、やはり昔の平野出身の地車は神戸の土地に来ても全く見劣りすることがなく、重ねてきた歴史の深さと神戸ならではの豪華な飾り付けのお陰で一段と魅力が増しているように感じます。

この地車は森に来てからも大切にされ、流行だけでなく愛着がある故の改修がなされていることをひしひしと感じます。
長い歴史を持つ地車が、第二の土地で新たな歴史を刻み続ける姿を見れることに感謝ですね。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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