大阪市城東区関目神社 関目地車

皆さんこんにちは。

前回の東櫻木地車しかり、今年の夏に新しい動きのあった地車をご紹介していますが、今回は少し悲しい話題に…

皆さんは城東区にある曳かれていない地車として、関目地車はご存知でしょうか。
曳かれなくなってから何十年と経ちますが、人々から完全に忘れ去られてしまったという訳ではなく、綺麗な小屋におさめられており、夏祭りには少し外に出され、お囃子が披露されていました。

しかし、数年間コロナ禍で満足に夏祭りが行えなかった影響でしょうか?
屋根が腐ってしまい、今年の夏祭りは小屋を開けて地車を披露出来る状態ではなくなってしまった。との情報が入ってきました。

大変残念ではありますが、10年前の写真を用いて、関目地車のことをしっかりと記事に残しておこうと思います。

それではご覧ください。

大阪市城東区関目神社 関目地車

◆地域詳細
宮入:関目神社
小屋所在地:神社境内
歴史:この地はもと関目といい、古くは榎並荘の時代からあったもので、関目というのはこの地に見張所(目で見る関所)があったことから起ったと言われる。また、関目の七曲りとして大阪城の防備に役立ったという重要な地であった。なおまた明治天皇御駐輦の地として親しまれてきた。 昭和五十三年十二月吉日
引用) 神社境内の掲示より

◆地車詳細
形式:大阪型
製造年:明治時代
大工:不明
彫刻:彫清一門 他

姿見

左が前方、右が後方。

車軸の変更等はありますが、オリジナルから殆ど姿を変えていないと思われます。

斜め前より

つくりが住吉大佐の住吉型によく似ており、住吉大佐の作とも言われていますが、銘が出ておらず、請取帳への記入も無いので、確証に欠けます。
同様に住吉大佐の住吉型に似ているが、実際は…?とされている地車として、東大阪市鴻池地車・東大阪市川俣地車があります。
これらの共通点として、彫清一門の彫刻が入っていることが挙げられます。

斜め後より

神社の方に許可をいただき、裏の方まで見せていただきました。
渡御は現在トラックで行われており、荷台に年代物の本格的なミニ地車を積み、お囃子が披露されます。
ミニ地車の見物においても関係者様に親切にしていただきまして、大変感謝しております。
また機会を見て、ミニ地車の方もご紹介したいと思います。

破風

角張ったたくましい破風に重厚な懸魚、そしてインパクト強めの彫清の獅子噛。

非常に強いオーラを感じる地車です。

枡組

二段一手先の組物が入ります。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

大屋根後方は外れてしまっていましたが、恐らく3面とも獅子噛だと思います。

この獅子噛に目が入っている姿を是非とも見たかったと思います。

箱棟

箱棟:『雲海』

懸魚・桁隠し

大屋根前方:『鞍馬山修行の場』

左上辺りに牛若丸がいたと思われますが、今はいなくなっています。

小屋根:『猿に鷲』

上地車では定番の題材。
ここの猿は頭をガッチリと掴まれて痛そうですね。

車板・虹梁

大屋根前方
車板:『宝珠を掴む青龍』
虹梁:『雲海』

手前に張り出した車板の印象が強烈です。
虹梁がシンプルな題材になっているのは行燈をつけるためなのかな?と想像してみたりします。

小屋根
車板:『九尾狐退治』

欠損していますが、元はこの題材でした。

枡合・虹梁

右面大屋根側
枡合:『合戦譚』
虹梁:『珠取獅子』

右面小屋根側
枡合:『合戦譚』

左面大屋根側
枡合:『合戦譚』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

左面小屋根側
枡合:『合戦譚』

枡合は合戦譚で統一、虹梁は部材が大きく取られ、しっかり背景のある豊かな世界観が表現されています。

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』

胴体まで彫刻される仕様で、全部で6体あります。

飛獅子

飛獅子が取り付きます。

柱:『獅子の子落とし・珠取獅子』

大丈夫か?と心配になるくらい超絶彫り抜かれた柱は注目すべきポイントですね。

大阪型はしゃくるので前柱にかかる荷重はなかなかのものと思いますが、大丈夫なんでしょうね。

天蓋

標準的な格子です。
車内はかなり補強の金具が入っているようです。

花戸口虹梁

花戸口虹梁:『松に鶴』

昔は所定の位置にありましたが、取材した時には取り外されていました。

脇障子

脇障子:『敦盛呼び戻す熊谷次郎直実』

この題材は土呂幕でも定番の題材ですが、脇障子にあると非常に映えますので、個人的にとても好みです。

住吉大佐の脇障子にもよく登場しますので、一回特集してみようかな…?

三枚板

まずは全景から。

正面:『漢高祖龍退治』

右面:『【水滸伝】武松虎退治』

左面:『大己貴命鷲退治』

三枚板はお馴染みの退治モノで。
採用されている題材が何となく板勾欄型寄りに感じますが、どうなんでしょう。

角障子

前方側

左面の銘板らしきものは元々墨で何か書いていたのでしょうが、今となっては解読不能です。

後方側:『楠木正行 如意輪堂の場・児島高徳 桜樹に書する』

左右共、詩を書いている題材となっています。
統一感があって良いですね。

勾欄合

前方:『合戦譚』

後方:『合戦譚』

右面:『合戦譚』

左面:『合戦譚』

勾欄合は全て合戦譚でまとめられています。

縁葛

前方:『源平合戦』

後方:『鵯越の逆落とし』

愛馬の三日月を担ぐ畠山重忠があり、鵯越の逆落としと判別できます。
恐らく他も源平合戦と見て良いのではないかと思います。

右面:『源平合戦』

左面:『源平合戦』

腕木

上が前方、下が後方。
腕木:『阿吽の唐獅子』

持送り

前方:『竹に虎』

後方:『牡丹に唐獅子』

土呂幕

前方:『猩々』

扉式になっています。
花戸口虹梁によくあるイメージの題材で、土呂幕で見かけたのは初めて?

後方:『宇治川の戦い』

右面大屋根側:『宇治川の戦い』

右面小屋根側:『宇治川の戦い』

左面大屋根側:『宇治川の戦い』

隅立て四ツ目紋が見えますね、佐々木高綱です。

左面小屋根側:『宇治川の戦い』

相手が梶原景季かと思いきや、違う様子で、場所が左右で入れ替わっているかと思いきや、そういった訳でもなさそう。
そういった表現は見たことがないですが、後方の土呂幕も平側と同じ場面らしい感じがするので、前方以外は宇治川の先陣争いなのかな。

下勾欄

右面:『波濤に千鳥』

左面:『波濤に千鳥』

台木

右面:『波濤』

左面:『波濤』

台木はシンプルに波濤のみとなっています。

金具

①破風中央部:『雲海に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍』
③垂木先
④破風端部:『雲海』
⑤脇障子兜桁:『関』の文字。
⑥肩背棒先
⑦縁葛端:『唐草模様』

いかがでしたでしょうか。

曳かれずとも祭りにて披露され、愛されていた地車だけに、非常に惜しまれます。
今後どのようにされるかについては、第三者がどうこう言う話ではないので、静かに見守りたいと思います。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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