羽曳野市誉田八幡宮 馬場町地車

皆さんこんにちは。
「今年売却・改修となった地車シリーズ」…年内に紹介出来るのはこれで最後だろうと思われますので、勝手ながら第四段でこのシリーズは終わりといたします。

第四弾は「馬場町」。
特に意識して撮影に向かった訳ではなかったのですが、私が偶然見物した平成26年の祭礼後に昇魂式を行い、工務店入りした地車です。(※写真は全て平成26年9月14日に撮影したものです。)
今年の祭礼までに修理は終わりませんでしたが、リース地車で登場し、曳行を絶やさない馬場町の皆さんの熱意を感じました。

それではご覧頂きましょう。

羽曳野市誉田八幡宮 馬場町(ばばちょう)地車

◆地域詳細
宮入:誉田八幡宮
小屋所在地:誉田八幡宮前

◆地車詳細
形式:折衷型
製作年:平成元年
購入年:平成18年
大工:【大下工務店】 大下孝治
彫刻:中山慶春、【木下彫刻工芸】 木下賢治
歴史:和泉市上伯太→馬場町 

◆歴代馬場町地車
先代(初代?):昭和48年東大阪市太平寺より購入。現地車購入に伴い羽曳野市東大塚へ売却。

姿見

左が前方、右が後方。

折衷型地車なので、下地車のように重厚な組み物が入り、筒柱になっています。
連子・松良が無く、台幅が拡幅されていないので、足回りは細身な印象です。

この地車には兄弟地車(下伯太先代)がおり、今は東大阪市の箕輪で活躍しています。見比べてみると面白いかもしれません。

側面より

馬場町へと嫁ぐ際に肩背棒の新調、下勾欄の追加が行われています。

破風

下地車の破風にかなり近い印象です。
元は隣懸魚がありましたが、いつの間にか取り外されています。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

中山慶春師の獅子噛です。

①辻之・深井沢町・西代(昭和59~60年頃)
 厚さは控えめ、小顔で頭部・耳の面積が広くとられている。指が5本あるのが特徴。歯は全て真下向きに生えている。
 鼻の形・巻き髪8つの特徴は後期モデルまで変わらない。全体のバランスは長方形。

②枡矢・田園・浜寺元町・下西代・三日市北部・片添町(昭和60~63年頃)
 前期モデルと比べてかなり肉厚となり、顔の占める面積が多くなる。このモデルから指が4本・歯が扇状に並ぶようになる。
 口元は奥まで貫通している。全体のバランスは台形。

③宮甲田・松原・山本(改修前)・隠(昭和63~平成初期)
 厚さは中期モデルのままで、再び小顔となる。従来のモデルと比べると耳がよく立っている。
 全体のバランスは二等辺三角形。

師の獅子噛は大体上記の3種類に分けることができそうな気がします。
また、馬場町の作品は年代通り、③で挙げた町と似た作風をしています。

懸魚

上から
大屋根前方:『朱雀』
大屋根後方:『雲海』
小屋根:『猿に鷲』、『千鳥』

平成の折衷型ですが、古風に獣の題材となっています。

車板・間仕切り

上から
大屋根車板:『鶴』
間仕切り:『雲海』
小屋根車板:『雲海』

枡合・虹梁

上から
前方枡合:『天ノ岩戸』
前方虹梁:『牡丹に唐獅子』
後方枡合:『鶴岡八幡宮放生会』
後方虹梁:『牡丹』

上から
右面大屋根
枡合:『後醍醐天皇壱岐より帰る』
虹梁:『宝珠を掴む青龍』

右面小屋根
枡合:『顔世御前兜改め』
虹梁:『朱雀』

上から
左面大屋根
枡合:『神武東征』
虹梁:『竹に虎』

左面小屋根
枡合:『源平布引滝小桜責め』
虹梁:『朱雀』

枡合の題材は兜改めは珍しい気もしますが、よく見かけるお馴染みの題材が彫刻されています。
虹梁は上地車らしく動物の彫刻。

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子・牡丹』

脇障子

脇障子:『武者』

左右で金棒持ちがにらみ合っています。

見送り

全景
見送り:『大坂夏の陣』

沢山詰まっていますよ!
見送り形式の地車を紹介するのは久しぶりですね。

正面より

奥側に中山慶春師の作品、手前側に木下賢治師の作品がきているようで、それぞれ特徴があります。

右面より

左面より

こちらも奥側に中山慶春師の作品、手前に木下賢治師の作品。

大脇・見送り下がり

前方より

どれも中山慶春師の作品。

後方より
見送り下がり:『雌雄鶴』

スペースの関係でこちらで見送り下がりの紹介をさせて頂きます。

竹の節

竹の節:『阿吽の唐獅子』

摺出鼻

右面:『牡丹に唐獅子』

左面:『牡丹に唐獅子』

大きく彫られた唐獅子が二体ずついます。

勾欄合

上から前方、右面、左面
勾欄合:『千鳥』

題材は同じですが、図柄は全て異なっており、手が込んでいます。

縁葛

前方:『牡丹に唐獅子』

後方:『牡丹に唐獅子』

右面:『牡丹に唐獅子』

左面:『牡丹に唐獅子』

題材はどれも牡丹に唐獅子となりますが、様々な唐獅子が世界観豊かに表現されており、とても魅力的です。

土呂幕

前方:『合戦譚』
後方:『合戦譚』

右面
大屋根側:『真田幸村』
小屋根側:『?』

左面
大屋根側:『朝比奈三郎城門破り』
小屋根側:『明智光秀の最期』

勾欄合(下勾欄)

勾欄合(下勾欄):『波濤に千鳥』

片面6枚、合わせて12枚あります。

台木

右面:『波濤に鯉』

左面:『波濤に鯉』

スマートな地車の印象を崩さない、程よくあっさりとした見やすい作品です。

要所(組物・旗台)

載せ切れなかった部分をまとめて紹介します。
①隅出(大屋根前方):『武者・陣幕』
②隅出(大屋根後方):『武者・陣幕』
③物見:『牡丹』
④隅出(小屋根):『牡丹に唐獅子』
⑤横槌:『桜』
⑥旗台

金具

①破風・葺地:『唐草模様』と宝珠
②破風傾斜部:『昇龍・降龍』
③隅木:『橘紋』、垂木:『左三つ巴紋』
④脇障子兜桁:『左三つ巴紋』
⑤角障子兜桁:『橘紋』
⑥下勾欄付近。
⑦縁葛:『唐獅子』
⑧肩背棒先:『馬場』の文字
⑨前方の肩背棒に人が乗ることが多いので、妻側にも設けられた飴棒。
⑩引き綱環:『左三つ巴紋』。ブレーキは雛壇中央にペダル。

関連動画

平成26年祭礼、昼宮の様子です。宮入の途中から宮出後の曳行の様子を収録しました。

いかがでしたでしょうか?

久しぶりの折衷型の紹介でしたが、たまには新しい地車も良いですね。
来年の祭礼には流石に帰ってきている…?と、思いますので、生まれ変わった馬場町地車を楽しみに待ちたいと思います。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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