皆さんこんにちは。
つい先日知ったばかりですが、三日市北部地車が日曜日に修理入魂式を行うようです。是非見に行きたいのですが、残念ながら私は行けそうにありません…
しかし、修理後の姿と比較し易いように以前撮影させて頂いた写真をまとめる良い機会だと思い、今回のレポートを書くことにしました。
この地車の存在は元・泉州で活躍していた地車という事でだいぶ前から知っていましたが、なかなか足を運べず、初めて訪れたのは同市上田町の新調入魂式の日・・・
当日は上田町の出迎え、祭礼前の準備のために小屋を開けており、運良く見学することが出来ました。
それではご覧ください。
河内長野市赤坂上之山神社 三日市北部地車 ◆地域詳細 宮入:赤坂上之山神社 小屋所在地:三日市町駅から高野街道を北上したところ。 歴史:江戸時代に高野街道の宿場町「三日市宿」として栄える。 ◆地車詳細 形式:堺型(擬宝珠勾欄・板勾欄併用・段差勾欄仕様) 製作年:1846年(弘化3年) 改修年:1986年(昭和61年) 購入年:2006年(平成19年) 大工:森市市之助 彫刻:【彫又】一門 改修大工:池内工務店 改修彫刻:中山慶春 歴史:堺市新在家→堺市菱木奥→河内長野市三日市北部 ◆歴代三日市北部地車 ・先々代(初代?):南部と共有、明治期に売却。 ・先代(2代目?):堺型、大正9年頃に購入。平成19年に現地車購入に伴い、堺市福上へ売却。現・守口市八雲南。 ・現地車(3代目?):堺型、平成19年に堺市菱木奥より購入。 ◆地車修理/箇所 ・昭和61年に池内工務店にて大改修。 三枚板、土呂幕、持送りを除く全ての部材を交換。 ・平成19年購入時に角障子を追加。 参考) 製造年・大工について モバイルテレビジョン㈱ 様公式Twitter https://twitter.com/danjiri_ohan/status/711374130273058816 歴代三日市北部地車について 地車名鑑 様ホームページ http://www.dab.hi-ho.ne.jp/horiko/
姿見
左が前方、右が後方
躯体及び彫刻の殆どを交換しているため、オリジナルの姿はよく分からなくなっています。
非常に背の高い地車です。
側面より
脇障子を境に擬宝珠勾欄・板勾欄と分かれている段差勾欄堺型です。
腰周りは八本の柱で土呂幕が3分割の仕様。
昭和61年の改修で同時期に工務店入りしていた元・堺市馬場地車(現在の羽曳野市樫山地車)が現在では非常によく似た雰囲気をしていますが、あちらは段差勾欄になっておらず、ベースとなった地車の形状は大きく異なるようです。
破風
池内工務店で改作されたものです。
勾配が緩く、幅の広い屋根。桁隠しは控えめです。
鬼板
上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』
中山慶春師作の大きな獅子噛。歯が白で着色されています。
小屋根のものは表情に怖さがあって好きです。
懸魚・桁隠し
大屋根前方
懸魚:『朱雀』
桁隠し:『鶴』
小屋根
懸魚:『松に鷹』
隣懸魚:『鶴』
懸魚は上地車では定番の獣の題材です。
車板・枡合・虹梁・花戸口虹梁
上から
大屋根前方
車板:『青龍』
虹梁:『牡丹に唐獅子』
花戸口虹梁:『竹に虎』
小屋根車板:『牡丹に唐獅子』
車板と枡合を合体させて広い彫刻スペースを作るのは当時の池内公務店製上地車の売りだったように見受けられます。(深井畑山町に始まり、山本・隠・古佐田地車等が同じ仕様)
この部分は獅子噛に続き、曳行中によく目立つ部分なので、個性を出すにはもってこいの場所です。
枡合・虹梁・持送り
右面大屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『牡丹に唐獅子』
右面小屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
左面大屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『牡丹に唐獅子』
左面小屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
枡合や虹梁は完全に改修の彫りになっています。
オリジナルはどこへ行ったのでしょう。
木鼻
上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』
全部で8体います。こちらも改修の彫りで、現代風です。
柱巻き
柱巻き:『阿吽の龍』
中山慶春師に柱巻きの製作を依頼すると、こんなにも肉厚で立派な柱巻きを製作してもらえますので、新調当時は人気だったのではないでしょうか。
それぞれ阿吽で対になっており、計4体います。
脇障子
脇障子:『松に鷹・猿・唐獅子』
前方からも見れますが、三枚板側から見た方が沢山の動物が見れます。
三枚板
正面:『漢高祖龍退治』
ここへ来てようやくオリジナルの登場です。
非常に状態良く残っています。
右面:『源頼政鵺退治』
左面:『源頼政鵺退治』
正面を飛ばして左右でセットになっています。
鵺がやられている構図をよく見る気がしますが、この時点ではまだ鵺は生き生きしています。
角障子
角障子:『獅子の子落とし』
縦に長い部材を生かした題材で、子が勢いよく落ちる様が表現されています。
こちらは三日市北部に嫁いだ際に取り付けられた彫刻のようで、比較的新しいものです。
摺出鼻・旗台
右面摺出鼻:『牡丹に唐獅子』
左面摺出鼻:『牡丹に唐獅子』
旗台:『力神』
大きな摺出鼻で、中山慶春師が携わった地車の摺出鼻はよく唐獅子が居ます。
力神はオリジナルの題材を使い、彫りなおされています。
勾欄合
上から 前方、右面、左面
勾欄合:『牡丹に唐獅子』
前、右、左それぞれ3つ勾欄合があります。
小さなスペースにまでしっかりと牡丹に唐獅子が彫刻されています。
上から 後方、右面、左面
板勾欄:『牡丹に唐獅子』
姿見の写真を見て頂ければ分かりますが、三枚板まわりだけ板勾欄になっています。
縁葛
上が前方、下が後方
縁葛:『干支』
上が右面、下が左面
縁葛:『干支』
改修の彫りではありますが、パーツの形状はオリジナルの特徴を活かしたものと思われます。
土呂幕
前方:『牡丹に唐獅子』
後方:『唐子遊び』
前方のみ改修の作品になっています。
堺型なので、元は閂がついていたのではないでしょうか。
右面:『唐子遊び』
左面:『唐子遊び』
題材が何とも古い地車ならではといった印象です。
武者のように荒々しい作品が多い中、優しい雰囲気の題材です。
持送り
前方:『鯉の滝登り』
私がこの地車で一番好きになった箇所です。
大胆に彫り抜かれており、活き活きとした鯉の様子が伝わってきます。
上が右面、下が左面
持送り:『松竹梅』
松・竹・梅で縁起の良い組み合わせです。
後方:『松竹梅』
前方同様、長めの持送りがついています。
下勾欄
上が右面、下が左面
勾欄合:『牡丹に唐獅子』
下勾欄にも牡丹に唐獅子が彫られていました。
獅子尽くしです。
台木
上が右面、下が左面
台木:『波濤に龍』
改修の彫りで、大きな龍が彫刻されています。
要所
載せ切れなかった部分をまとめて紹介します。
①枡組:多少古そうですが、オリジナルかは不明。
②腕木: シンプルに模様が彫刻されています。
③貫腕・段差勾欄:大工さんも試行錯誤されたのではないでしょうか?段差勾欄のため、縁葛を貫腕が貫通しています。
④乗車スペース:前回の記事でもご紹介しましたが、あまり数は多くない車内に責任者が立つ仕様です。
⑤車内:堺型なので、土呂幕の隙間から内部が見えます。太鼓を土呂幕に横向きに積んでいた証がありました。(三日市北部では嫁いだ時から縦積みしているようですが)
⑥安全柵:ぶんまわしをするため、上方へ折れる仕様です。
金具
①破風:『唐草模様に銀の宝珠』 葺地:『唐草模様』
②破風傾斜部:『昇竜』
③破風端:『唐草模様』
④垂木:『花菱紋』
⑤縁葛:『花菱紋』 擬宝珠は金メッキ
⑥虹梁:『花菱紋』
⑦兜桁:『北部』の文字。
⑧縁葛:『牡丹?』
⑨肩背棒先:『北』の文字。
ぶんまわし時に接地させないので、河内長野の地車ではよく見られる下部だけ膨らみを持たせたものになっていません。
いかがでしたでしょうか。 改修によりオリジナルの姿は分からなくなっていますが、貴重な長生き地車でした。 三日市北部の皆様は暖かい方ばかりで、当日は沢山お声かけ頂き、法被をお借りして記念撮影までして頂きました。 本当に有難うございました。 最後までご覧いただき、ありがとうございます。