岸和田だんじり会館展示 紙屋町先代地車

皆さんこんにちは。

今回も前回に引き続き趣向を変えて、浪花彫刻を持つ岸和田型を記事に残しておきたいと思います。

この地車は岸和田だんじり会館に展示されており、開館以来誰でも手軽に見に行ける状態にあるので、取り分けて私が記事にするものではないのですが、如何せんネット上に画像が無く、いざ見たいとなった時に咄嗟に見れないので記事化することにしました。

開館から約30年経ち、いつでも見れるにも関わらず、紙屋町先代地車の画像がネット上に無いのは、展示方法に因るような気がします。
提灯飾りをつけていることで一部の彫刻が見えにくくなっていること。また、マニアも本能的に灯入れの状態のだんじりで彫刻の写真をバシバシ撮ろう、とはなりにくいと思いますので、その辺りが原因ではないかと勝手に思っています。

話が少々脱線しましたが、”古い作品”という観点で見ると、岸和田だんじり会館展示の五軒屋町(現存最古の岸和田型)・和歌山県橋本市東家(現役最古の岸和田型)と並び、大変貴重な天保だんじりとして、言うまでもなく有名な一台です。

それではご覧ください。

岸和田だんじり会館展示 紙屋町先代地車

◆地車詳細
形式:岸和田型
製造年:1841年(天保12年)
引退年:1990年(平成2年) 149年も現役!
大工:【大平】尾崎平蔵広則
彫刻:【花岡】一門 花岡龍造・花岡源助・花岡源七郎・花岡源三郎・花岡義寛(松蔵)など
歴史:岸和田市紙屋町→岸和田市(だんじり会館展示)

参考)
だん吉友の会 「大坂・浪花木彫史」近世大工彫刻の系譜

姿見

左が前方、右が後方

だんじり会館の展示室を入ると、一番最初に出迎えてくれるのが紙屋町先代地車です。
提灯をつけているので本体の全体像は見えにくくなっていますが、古い岸和田型ならではの縁葛・連子・土呂幕と3段構成が見て取れます。

側面より

少し見えにくいですが、見送りまわりには勾欄が取り付けられており、こちらも古い岸和田型に残る仕様。
昔は大屋根側も半松良で勾欄があったことでしょう。

斜め前より

先代紙屋町においては、【大平】尾崎平蔵広則師の曽孫にあたる久納久吉師が昭和19年にお亡くなりになるまで大切にメンテナンスされ、他の大工には触れさせなかったのだそう。

破風

屋根回りは改修されているのでオリジナルではありません。
大屋根切妻型・小屋根入母屋型です。

鬼板

鬼板:『獅子噛』

鬼板に獅子噛が取り付くのも特徴です、大屋根後方も少し見えていますね。
これに倣ってか、新しい地車においても先代地車が上地車であった地域等は獅子噛にしていることがありますね。

懸魚

紙屋町と言えば一枚モノの懸魚をまず思い浮かべます。

大屋根枡合

右面:『坂田金平 烏天狗退治』

左面:『源頼政 鵺退治』

大屋根平側はどちらも退治モノになっています。
この大屋根枡合は花岡源七郎(荒彫)と源三郎(仕上げ)の合作だそうです。

小屋根車板・枡合

小屋根車板:『司馬温公の甕割り』

虹梁の牡丹も見事です。

小屋根枡合:『劉備玄徳 壇渓を渡る』

木鼻

木鼻:『阿吽の唐獅子』

勾欄合

勾欄合:『富士の巻狩り?』

殆ど提灯で見えませんが、恐らく富士の巻狩りかと。

前方 縁葛・連子・土呂幕

前方全景です。

縁葛・連子:『大江山の鬼退治』

土呂幕:『川中島の合戦』

この地車は彫刻の端部に人物名が刻まれているので、有難いですね。

松良

松良(前方):『大江山の鬼退治』

松良(後方):『大江山の鬼退治』

松良は後の時代に交換されたものです、やはり損傷が大きかったのでしょうか。

右面 縁葛・連子・土呂幕

右面全景です。

縁葛・連子:『大江山の鬼退治』

土呂幕:『巴御前の雄姿』

巴御前をアップで。

古い上地車でも見かける表情をしていますね。

右面 込み栓

カラクリ機構は使えなくしてありますが、込み栓の先が獅子噛になっています。
こちらも上地車好きとして反応せずにはいられませんでした。

左面 縁葛・連子・土呂幕

左面全景です。

縁葛・連子:『大江山の鬼退治』

土呂幕:『朝比奈三郎 錣引き』

こちらが朝比奈三郎、右に小さく刻んでありますね。

馬はガラス目になっています。

左面 込み栓

込み栓:『獅子噛』

こちらも右面同様に獅子噛です。

脇障子

脇障子:『張飛?・趙雲』

片方は文字が読めず、すみません。

正面 見送り全景

見送り全景です。

正面 見送り虹梁

見送り虹梁:『三国志』

個別の題材までは分かりませんが、三国志関連ではあるかと思います。

正面 見送り

正面:『曹操』

見送りはしっかりと立体になっており、同じ一つの場面を様々な角度から眺める形となっています。
人物も一つ一つが大きく、現代のように細かくミニチュア感のあるものとは随分異なります。

大脇

大脇(後方):『三国志』

大脇(後方):『三国志』

大脇(前方):『三国志』

大脇(前方):『三国志』

右面 見送り全景

右面全景です。

右面 見送り虹梁

見送り虹梁:『三国志』

左面は撮り忘れてしまいました。

右面勾欄

枡束が蟇股形状に割れていたり、凝った装飾です。新しい地車にこんな装飾があれば間違いなく格好良いと思いますが。

右面から見た見送り内部です。

左面 見送り全景

左面全景です。

左面勾欄

左面から見た見送り内部です。

摺出鼻

摺出鼻:『鯱』

そう言えば、同じく会館に展示されている五軒屋町の勾欄にも小さな鯱が居ましたね。
からくり機構のある地車ではお馴染み、構造材と彫刻が分離出来る仕様です。

本来はスライドのためのレールが刻まれていますが、からくり機構を使えなくしてあるので、今はありません。

旗台

旗台:『力神・猿』

小屋根側 連子・水板・半松良

上が右面、下が左面
連子:『波濤』
水板:『猿』
半松良:『虎』

大屋根側 水板

上が右面、下が左面

大きな水板が取り付きます。木の色が新しいので、彫り替えられているようです。
梃子掛けの窪みもよく見るものとは違いますね。

いかがでしたでしょうか。

もはや教材となっているような地車を今更ご紹介するのは恐れ多いですが、纏めておくことで咄嗟に見比べたい時に画像を引き出せるので、何かしらプラスになるかと思います。
内容に誤りがあるかもしれませんが、その際は優しく指摘・説明していただけますと幸いです。

常に展示されている安心感からか、ついつい足が遠ざかりがちですが、たまに再訪すると新たな発見があるかと思いますので、上地車好きの方も含め、是非実物を何度もじっくりとご覧になることをオススメいたします。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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