大阪市都島区櫻宮 櫻宮地車

皆さんこんにちは。

今回は現在改修中の1台をご紹介しておこうと思います。

櫻宮地車は戦後15年、高度経済成長期のさ中に製作された地車です。
1960年は安保闘争が激化した年でもあり、今上陛下がお生まれになった年でもあります。

彫刻は松田正幸師によるもので、師はこの頃、大阪市東小橋地車・中浜地車・中宮地車・西宮市木之元地車など、多くの大阪型を手掛けられております。

それではご覧ください。

大阪市都島区櫻宮 櫻宮地車

◆地域詳細
宮入:櫻宮
小屋所在地:神社境内
歴史:大阪市都島区の大川東岸の汎称地名。都島区中野町1・4丁目の河川沿いをいうが、近ごろでは隣接の中野町5丁目や網島町まで含めて広域に呼ぶことがある。堤防上の桜宮の社と桜樹から地域名称に転じた。
桜宮の社について「摂津名所図会大成」に「当社其初ハ野田の小橋故大和側の堤の字を桜野といふ所にありしを後世こゝに迂すゆへに旧地の名を以て桜野宮と号せしがいつしか境内のほとりに数百株の桜を植しより今ハ桜の宮と称して花ゆへなづけし如くなる」とある。

◆地車詳細
形式:大阪型
製作年:1960年(昭和35年)7月
大工:【梶内だんじり店】(淡路市津名町) 槙島清里
彫刻:【萬屋】松田正幸

参考)
地域の歴史について
角川書店 『角川日本地名大辞典 27 大阪府』

姿見

左が前方、右が後方

四天王寺の梶内だんじり店にて注文を受け、淡路の本店にて製作されたと思われます。
似た地車として東成区中本地車があり、こちらは櫻宮地車が生まれる3年前に梶内だんじり店にて製作されています。

オーソドックスな大阪型の構造をしています。背丈は高いほうではないでしょうか。

側面より

市内では今や少数派の見送り幕式です。

斜め前より

これまで大規模な修繕等は受けていないと思われます。
よく焼けた木の色をした地車でした。

破風

全体的に緩やかに勾配がついているのではなく、カクカクと折れている箇所がはっきりとしている形状ですので、硬派な印象を受けます。

懸魚の高さが控え目なのが特徴でしょうか。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

3面とも獅子噛で統一されています。
外から内側へウェーブする鬣は開正藤師が生み出した御影西之町の獅子噛の影響を受けているのかなぁ、といった印象です。
前後作を見ても、兄弟子の木下舜次郎師とはまた違う方向性で獅子噛の表情を確立されている辺りが興味深いです。

懸魚・桁隠し

大屋根前方
懸魚:『大己貴命鷲退治』
桁隠し:『麒麟』

小屋根
懸魚:『五條大橋の出会い』
桁隠し:『牡丹』

前後のどちらの作品も遠方から見て非常に目立つ、印象深いものです。
五條大橋の出会いは奥行き・立体感も大変素晴らしいですね。

車板

大屋根前方:『宝珠を掴む青龍』

車板・枡合一体型で大きな青龍が彫刻されています。

小屋根:『仁田四郎猪退治』

枡合

右面大屋根側:『?』

右面小屋根側:『村上義光錦旗奪還』

左面大屋根側:『加藤清正の雄姿』

左面小屋根側:『平景清錣引き』

枡合は割と自由に様々な時代から題材を持ってきているようです。

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』

前方は撮り忘れていますが、全部で8体います。

大屋根と小屋根の段差が少ない大阪型故でしょうか、大屋根後方は木鼻も台輪も枡組もスパッと切ってしまい、無理に納めようとはしていないようです。

花台

花台:『?』

こちらは後付けで誰かが彫ったようです。

車内枡合

車内枡合:『雲海』

脇障子

脇障子:『?』

三枚板

正面:『賤ヶ岳の合戦 秀吉本陣佐久間の乱入』

右面:『賤ヶ岳の合戦』

左面:『賤ヶ岳の合戦』

見送り幕は賤ヶ岳の合戦のようです。

勾欄合・縁葛

前方
勾欄合:『花鳥風月』
縁葛:『【忠臣蔵】裏門討ち入り』

後方
勾欄合:『花鳥風月』
縁葛:『【忠臣蔵】刃傷松ノ廊下』

右面大屋根側
勾欄合:『花鳥風月』
縁葛:『【忠臣蔵】神埼与五郎詫証文』

右面小屋根側
勾欄合:『花鳥風月』
縁葛:『【忠臣蔵】内蔵助 島原に遊ぶ』

左面大屋根側
勾欄合:『花鳥風月』
縁葛:『【忠臣蔵】清水一学奮戦』

左面小屋根側
勾欄合:『花鳥風月』
縁葛:『【忠臣蔵】上野介発見』

勾欄合は花鳥風月、縁葛は忠臣蔵で統一されています。

貫腕

しゃくる前提なので、大きくしっかりと肩背棒に連結されています。

土呂幕

前方:『源平合戦』

後方:『巴御前』

右面:『宇治川の先陣争い』

左面:『敦盛呼び戻す熊谷次郎直実』

源平合戦を題材とした土呂幕では定番の2場面ですが、私は非常に好きで、見ていて安心感があります。

土呂幕・台木

右面:『波濤に鯉』

左面:『波濤に鯉』

下勾欄が無く、土呂幕の題材が見やすくて良いですね。

台木

台木:『波濤に鯉』

車軸の位置が良くなかったのか、過去に何度か変更されている形跡があります。
かなりリフトアップされており、ホイールベースも短いです。
今回の改修で整えられるのではないでしょうか。

穴隠しの桜型の金具が印象的で、櫻宮地車と言えば私はまずこの足回りを思い浮かべます。

金具

①破風中央:『唐草模様』
②破風傾斜部:『昇龍』
③破風端部:『唐草模様』
④垂木先:『左三つ巴紋』
⑤縁葛端部:『唐草模様』
⑥台木先:『櫻宮』の文字。
⑦台木

いかがでしたでしょうか。

最近の新しい地車とは一味異なる、骨格が明確であっさりとした見た目をしておりながら、じっくりと彫刻や幕を眺めるのが楽しい、素晴らしい地車でした。

日に焼けて真っ黒な地車だっただけに、どのような姿で化粧直しされて帰ってくるのか楽しみです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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