皆さんこんにちは。
今回は久しぶりに元・泉州のだんじりを記事にしたいと思います。 藤井寺市大井は2012年(平成24年)に堺市の大庭寺(おばでら)よりこの地車を購入しています。
この地車で語るべき点はやはり、大規模な改造工事を受けていることでしょうか。 今の姿見からは想像し難いですが、この地車は元は大阪型で、大庭寺時代にやりまわしを行う祭礼スタイルに対応するべく、2度の改造を経て、折衷型へと生まれ変わっています。
パッと見た印象では新しい彫刻が目立ちますが、貴重なオリジナルの彫刻も上手く活用されていますので、その点に触れながら記事を書きたいと思います。
それではご覧ください。
藤井寺市志疑神社 大井地車 ◆地域詳細 宮入:志疑神社 小屋所在地:大井二丁目公園隣 ◆地車詳細 形式:折衷型 (元・大阪型) 製作年:明治時代 購入年:2012年 (平成24年) 大工:不明 彫刻:辻田一門 改修大工①:池内工務店 改修彫刻①:中山慶春 改修大工②:小松工務店 改修彫刻②:松本幸規 歴史:泉大津市豊中町→堺市大庭寺→藤井寺市大井
姿見
左が前方、右が後方。
大庭寺時代に池内工務店・小松工務店で2度改造が行われています。
側面より
破風
破風は池内工務店で新調されたもので、1度目の改修後には辻田一門の獅子噛と中山慶春師の懸魚が取り付けられていました。
現在取り付けられている獅子噛と懸魚は、2度目の改造時に松本彫刻で新調されたものです。
鬼板
上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
長い歯が特徴あります。 旗の関係で小屋根は撮れていませんが、小屋根も同じ顔です。
懸魚・桁隠し
大屋根前方
懸魚:『烏天狗』
桁隠し:『烏天狗』
大屋根後方
懸魚:『雲海』
桁隠し:『雲海』
小屋根
懸魚:『烏天狗』
桁隠し:『雲海』
烏天狗と言えば、鞍馬山修行の場を思い出しますが、義経は見当たりませんでした。
枡組
隅出:『唐獅子・千鳥』
車板
大屋根前方
車板:『青龍』
枡合・虹梁
大屋根前方
枡合:『天照大神 天の岩戸』
虹梁:『七福神』
車板・枡合
車板:『鶴』
枡合:『雄略天皇猪退治?』
車板の鶴は1度目の改造時に中山慶春師が彫刻した桁隠しが移設されていると思われます。
小屋根
車板:『青龍』
枡合:『桜井の別れ』
枡合・虹梁
右面大屋根側
枡合:『素戔嗚尊 八岐大蛇退治』
虹梁:『龍』
右面小屋根側
枡合:『村上義光 錦旗奪還』
左面大屋根側
枡合:『神武東征』
虹梁:『龍』
左面小屋根側
枡合:『稲村ヶ崎投剣の場』
大屋根側の虹梁に使われている部材は大阪型時代に車板だった部品と思われます。
つまり、元々上に桁が乗り、屋根が来るはずだった場所に、枡組を追加することで大幅に高さ方向を大型化していることが分かります。
東大阪市横沼地車も同様の改修が行われており、非常に自然体のまま大型化出来るので、よく考えられているなぁと感心する部分です。
木鼻
上が右面、下が左面。
木鼻:『親子獅子・阿吽の唐獅子』
前方は彫り替えられていますが、後方はオリジナルです。
車内車板
車内車板:『雲海』
オリジナルの彫刻です。
脇障子
脇障子:『牡丹に唐獅子』
これもオリジナルの彫刻です、しっかりと彫り抜かれています。
三枚板
正面:『秀吉本陣佐久間の乱入』
右面:『武者』
左面:『武者』
側面の武者はオリジナルの顔が残っています。 辻田一門独特の濃い表情がたまりませんね。
摺出鼻
右面:『牡丹に唐獅子』
左面:『牡丹に唐獅子』
1度目の改造で新調された中山慶春師の作品です。
個人的に中山慶春師の作品が好きなので、この部分もお気に入りですね。
旗台
旗台:『宝珠を掴む青龍』
こちらも1度目の改造で新調されたもの。
勾欄合
前方:『波濤』
後方:『波濤』
右面大屋根側:『波濤』
右面小屋根側:『波濤』
左面大屋根側:『波濤』
左面小屋根側:『波濤』
持送り
持送り:『松』
土呂幕
前方:『川中島の合戦』
網で少し分かりにくいので、龍虎相討ちをアップで。
後方:『武者』
右面
大屋根側:『唐獅子』
小屋根側:『虎』
左面
大屋根側:『唐獅子』
小屋根側:『虎』
下勾欄で見えにくくなっていますが、側面土呂幕にはオリジナルの作品が残っています。
台木
右面
下勾欄:『波濤』
台木:『波濤に兎』
左面
下勾欄:『波濤』
台木:『波濤に兎』
台木は2回目の改造で新調されたものです。
金具
①破風中央:『雲海に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍』
③垂木先:『左三つ巴紋』
④木目調のスピーカー
⑤台輪先:『雲海』
⑥兜桁先:『左三つ巴紋』
⑦縁葛:『唐草模様』
⑧肩背棒先:『大井』の文字。
志疑神社については不明な点が多いようです。 御祀神は素戔嗚尊ですが、この地車や法被には五瓜に唐花紋ではなく、左三つ巴紋が使われています。
いかがでしたでしょうか。
じっくり見ていくと、意外にも元の大阪型だった頃の彫刻を沢山見ることが出来る地車でした。
貴重なオリジナルの彫刻と、大工さんが考え工夫した改修仕事に注目して見ていただけると、きっと面白いかと思いますので、見る機会がありましたら是非。
最後までご閲覧いただきありがとうございました。