東大阪市横枕春日神社 横枕地車

皆さんこんにちは。

今回は前回の小阪弥栄地車の記事の中でも話題にしました横枕地車の記事を書きたいと思います。
この地車の記事は前々から書きたいと思っていたのですが、私がなかなかきっかけがないと書かない性分ですので、今回晴れてきっかけに辿り着くことが出来ました。

この地車は元は泉大津市西之町の地車で、高石市羽衣を経て東大阪市横枕へと嫁いでいる元・泉州で活躍していた地車です。
昭和63年と比較的近年まで西之町で活躍していましたので、当然カチアイを長年経験してきており、昔のカチアイは正面・側面のカチアイもしていた時代ですから、各所の損傷も激しく、より外端部に近い箇所の彫刻は交換がなされています。
横枕へ嫁いでからは2014年に大修理が行われており、今回使用している写真は入魂式またはその後に撮影したものです。

それではご覧ください。

東大阪市春日神社 横枕地車

◆地域詳細
宮入:春日神社
小屋所在地:神社境内

◆地車詳細
形式:住吉型
製造年:1920年(大正9年)
購入年:1998年(平成10年)
大工・彫刻:西だんじりや 下川安治郎
歴史:泉大津市西之町→高石市羽衣→東大阪市横枕

◆歴代横枕地車
・三先代:布団太鼓 大正7年に英田地区の本郷へ。
・先々代:町内地車
・先代:昭和23年頃に大東市灰塚より購入し、昭和55年頃まで曳く。小阪弥栄へ嫁ぐも老朽化により曳かれず。
・現地車:高石市羽衣より購入。

参考)
修理年・改修大工彫刻師について
 花内友樹 著 『泉大津濱八町地車禮讃』
歴代横枕地車について
 山車・だんじり悉皆調査 http://www5a.biglobe.ne.jp/~iwanee/

姿見

左が前方、右が後方。

非常にどっしりとした風格のある姿見はやはり元・濱八町の出身のためでしょうか。
上地車としては珍しく交差旗が取り付けられています。

側面より

小阪弥栄地車の記事で、この地車が大変似ていることを話題にしましたが、下勾欄が取り付く点や旗の設備が最初から設けられている点は小阪弥栄地車とは異なります。

斜め前より

斜め後より

旗設備は撤廃することなく、使用されています。
六郷のだんじりは旗設備を設けて吊り下げ町明旗を掲げる村が多いですね。

破風

オリジナルではなく、破風は昭和の修理で交換されたもの、葺地は更に新しい年代に交換されていると思われます。

枡組

一段枡組が入ります。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』(彫り替え)
大屋根後方:『獅子噛』(オリジナル・元小屋根)
小屋根:『獅子噛』(彫り替え・元大屋根前方)

元々は大屋根前後が飾目・小屋根が獅子噛の構成でしたが、度重なるカチアイによる破損の影響か、時代が進むうちに飾目よりも獅子噛(大津では鬼熊と呼びますが)の方が良いという判断に至ったのか、現在では3面とも獅子噛になっています。

この獅子噛はそれぞれ作られた時代が異なると思われます。製作された順番は現在の配置で大屋根後方→小屋根→大屋根の順です。
最も新しい大屋根前方は中山慶春師の作品、次に新しい小屋根は黒田一門の作品ではないでしょうか。

この地車の修理記録はいくつか残っており、昭和4年頃に下川一栄・下川安治郎が修理、昭和52年に大政工務店にて修理とあります。
小屋根の獅子噛が黒田一門のものであるならば、昭和初期頃に交換されたのではないかと思いますが、下川家が修理した際に交換されたかは不明です。
また、大屋根前方の獅子噛が中山慶春師の作品であるならば、師の作品が多数誕生した昭和59年以降に交換されており、西之町時代の写真にもこの顔が写っていることから、昭和63年に羽衣へ嫁ぐ直前に交換されたものと思われます。

後の時代に作られた2作品はそれぞれ前の作品のデザインを継承しているように思え、特に鼻・眉~耳のライン・歯並びに共通点があります。

参考に
昭和63年に彫り替えられた泉大津市田中町(現・松原市河合)の獅子噛・・・中山慶春作
昭和6年に製作された泉大津市出屋敷町(現・大阪市育和)の獅子噛・・・黒田一門作

小屋根の作品は、平べったい鼻・鬣の巻き数と形状・眉~耳のライン・歯の数が育和とよく似ています。
大屋根の作品は、小屋根の作品の特徴を引き継いでおり、よく見る中山慶春師の作品とは鼻のデザインが異なる辺りで小屋根の作品を模していることを感じます。
もしかすると、忠実に彫り替えた西之町の獅子噛を見て、田中町は獅子噛の彫り替えを中山慶春師にお願いしたのでしょうか。何かしら関係性がありそうです。

箱棟

箱棟:『雲海』

懸魚・桁隠し

大屋根前方
懸魚:『素盞嗚尊八岐大蛇退治』
桁隠し:『松に鷲』

オリジナルでは小阪弥栄地車同様に鬼板とセットで桜井の別れの題材でしたが、昭和初期の改修で獅子噛が彫り替えられ、楠木正成の飾目が大屋根後方へ行ってしまい、一人ぼっちになってしまった楠木正行はついに素戔嗚尊八岐大蛇退治の題材に置き換えられることになりました。
後に楠木正成の飾目も彫り替えにより、オリジナルの獅子噛が小屋根より移されたことにより役目を終えています。

この題材は西之町の現地車にも引き継がれており、奥に奇稲田姫が居るのがポイントです。
松本幸規師の作品。

小屋根
懸魚:『長坂坡の趙雲』
桁隠し:『麒麟』

小屋根だけ不思議と三国志の題材が採用されています。
元より鬼板は獅子噛だったので、オリジナルの状態でも鬼板と懸魚セットで一つの題材ではなかったと思われます。

車板・枡合・虹梁

大屋根前方
車板:『青龍』
虹梁:『雲海』

オリジナルが残っています。

小屋根:『神功皇后 応神天皇平産す』

彫り替えられています。これも松本幸規師の作品でしょうか。

右面大屋根側
枡合:『干支』
虹梁:『源頼政鵺退治』

右面小屋根側
枡合:『唐獅子』

左面大屋根側
枡合:『干支』
虹梁:『仁田四郎猪退治』

左面小屋根側
枡合:『唐獅子』

虹梁の題材は小阪弥栄地車と異なりますが、それ以外はよく似ています。

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子・飛竜』

全身彫刻の唐獅子と大屋根後方のみ飛竜。この辺りも小阪弥栄地車と同じです。

柱:『竹に虎』

間仕切り

間仕切り:『稲村ケ崎投剣の場』

脇障子

脇障子:『児島高徳・後醍醐天皇』

三枚板

正面:『天乃岩戸』

正面は楠木正成ではなく、日本神話の題材が採用されました。
この地車は基本的には小阪弥栄地車と同じ題材で作られていますが、摺出鼻があったり、懸魚・車板・三枚板の題材が小阪弥栄地車と異なることから、小屋根側正面の見た目はこの地車独自のデザインとなるように作られているようです。

右面:『楠木正行の雄姿』

別角度からもう一枚。

左面:『楠木正季の雄姿』

別角度からもう一枚。

摺出鼻

摺出鼻:『牡丹に唐獅子』

摺出鼻:『牡丹・銘』

旗台

旗台:『雲海』

旗台はシンプルなものに交換されています。
両サイドの木鼻は謎ですが、元はどこのものでしょうか。元々この地車のものではない可能性があります。

勾欄合

前方:『花鳥風月』

後方:『花鳥風月』

右面:『花鳥風月』

左面:『花鳥風月』

4面とも改修時に彫り替えられています。

縁葛

縁葛:『唐草模様』

オリジナルでは恐らく太平記の題材だったと思われますが、損傷が激しかったのか伊勢込みで唐草模様に変更されています。

土呂幕

前方:『司馬温公の甕割り』

こちらも彫り替えの作品です。

後方:『飛竜』

元小屋根車板の作品と思われます。
前方も彫り替えられていることからオリジナルは前後とも破損してしまったのでしょうか。

右面大屋根側:『六波羅攻略』

左三つ巴の家紋があるので赤松円心に関連するものでしょうか。
放火をしながら攻めている点を見ても、題材は六波羅攻略ではないかと思います。

右面小屋根側:『千早城・赤坂城の戦い』

左面大屋根側:『千早城・赤坂城の戦い』

左面小屋根側:『六波羅攻略』

恐らく右面と左面で題材を取り違えていると思われます。戦っている相手の家紋がおかしなことになっています。

下勾欄

右面:『波濤に兎』

左面:『波濤に兎』

台木

右面:『波濤』

左面:『波濤』

オリジナルではありません。

前方:『波濤』

曳綱環が一つであるのは西之町時代から継続です。
雛壇と雛壇から踏めるブレーキは恐らく羽衣に嫁いだ際に取り付けられたものでしょう。

金具

①破風中央:『鷲』
②破風傾斜部:『松』 破風の金具の題材は小阪弥栄地車と同じです。
③破風端:『唐草模様』
④垂木先:『下り藤紋』 氏神の春日神社に由来します。
⑤脇障子兜桁:『横枕』の文字。
⑥肩背棒先:『横』の文字。
⑦縁葛端:『唐草模様』

貴重な銘です。摺出鼻の内側なので、少し覗かなければ見えません。
三枚板辺りにもっと堂々と刻めばと思うのですが、正面の天乃岩戸の題材に銘を入れるのが躊躇われたのでしょうか。面白いですね。

いかがでしたでしょうか。

数十年間隔で複数回改修を経ているため、少し謎めいている部分がありますが、この地車と共に活躍していた当時の濱八町の地車達の様子を見ていると恐らく当時の流れでこのように改修したのだろうと察せる地車です。
オリジナルの要素は維持されている部分と失われた部分がありますが、失われた部分は小阪弥栄地車と比較することで補うことが出来ます。

この地車は生まれてから今年で101歳、横枕へ来てから23年目を迎えますが、綺麗に維持されていますので、まだまだ衰えを感じさせません。
今後も末永く横枕の地で活躍してくれることでしょう。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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