皆さんこんにちは。
勢いがあるうちに色々書いてしまいます。
前回、相野一門の作品である新在家地車をご紹介しましたが、今回も相野一門の彫刻を持つ地車を記事に選択してみました。
魚崎(子)地車は神戸に現存する地車の中で、最も古いものに分類される大変貴重な作品です。
小ぶりではありますが、オリジナルの彫刻がしっかりと残っており、大変見ごたえがある地車です。
それではご覧ください。
神戸市東灘区魚崎八幡宮神社 魚崎(子)地車
◆地域詳細
宮入:魚崎八幡宮神社
小屋所在地:神社境内
◆地車詳細
形式:神戸型
製作年:1846年(弘化3年)
大工:不明
彫刻:相野一門
参考)製造年について
山車・だんじり悉皆調査 http://www5a.biglobe.ne.jp/~iwanee/
姿見
左が前方、右が後方
小型の地車です。
魚崎には現在、親地車・子地車として、大小2台の地車が曳行されており、こちらは子地車にあたります。曳行は子供主体となっています。
江戸時代には大・中・小の3台の地車が曳行されていた記録が残っているようです。
側面より
躯体の大部分が修繕で新調されていますが、基本的な構造は変わっていないと思われます。
見送りは幕式で、土呂幕は男屋根側・女屋根側の2分割。
勾欄が跳勾欄ではなく擬宝珠勾欄になっているのが特徴です。
破風
破風も修繕で交換されています。
懸魚は取り付けられておらず、桁隠しもありません。
わざわざ取り外すとは思えないので、修繕前から懸魚はなかったのでしょう。
仕口
男屋根側だけ肘木が取り付けられています。
女屋根側は直接の仕口です。
鬼板
上から
男屋根前方:『獅子噛』
男屋根後方:『獅子噛』
女屋根:『獅子噛』
相野一門の獅子噛です。
女屋根側の方が少し上向きな表情になっています。
完全に似ている訳ではありませんが、大阪市東今里神路地車の小屋根獅子噛が近い表情でしょうか。
箱棟
彫刻は無く、社紋の左三つ巴紋の金具が取り付きます。
平側の葺地には波濤の金具があり、非常に豪華です。
車板
男屋根前方:『宝珠を掴む青龍』
欠損が全くない素晴らしい作品です。
女屋根:『麒麟』
一匹で悠々と駆け回っている様が彫刻されています。
枡合
右面男屋根側:『雲海』
右面女屋根側:『雲海』
左面男屋根側:『雲海』
左面女屋根側:『雲海』
平側は題材を雲海で統一しています。
木鼻
上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』
全て唐獅子での統一です。
どれもオリジナルが残っており、大変見ごたえがあります。
水引幕
前方:『武内宿禰 宝珠を得る』
右面:『武内宿禰 宝珠を得る』
左面:『武内宿禰 宝珠を得る』
恐らくこの題材で良いのではないでしょうか。
三韓征伐の題材で、魚崎(うおざき)の地名の由来でもある、凱旋の折に当地で舟が進まなくなったために、五百艘の舟を停めた(五百崎(いおざき))ことに由来する題材ではないかと思います。
脇障子
脇障子:『孔雀・鶯』
脇障子は鳥類の題材で統一されています。
見送り幕
正面:『竜宮伝説』
右面:『竜宮伝説』
左面:『竜宮伝説』
見送り幕も海に関連する題材で、竜宮伝説です。
幕にある墨書き。
大正13年5月31日に修繕したと記録されていますので、もっと前の作品なのでしょう。
勾欄合・縁葛
勾欄合:『なし』
縁葛:『なし』
勾欄合や縁葛に彫刻はありません。
土呂幕
土呂幕:『縦格子』
土呂幕に彫刻はなく、格子になっています。
木の色も古いため、オリジナルからこの仕様だったと思われます。
台木
台木:『なし』
台木は取り換えられており、彫刻はありません。
金具
①破風中央:『雲海に宝珠』
②破風傾斜部:『波濤に昇龍』
③垂木先:『桔梗紋』 明治41年に氏子離れしましたが、本住吉神社の紋と思われます。
④脇障子兜桁先:『左三つ巴紋』
⑤勾欄親柱
いかがでしたでしょうか。
子地車は親地車とは異なり、村曳きしか行っていませんので、見物にはタイミングをよく見計らう必要がありますが、わざわざ足を運んででも一見の価値がある地車です。
まだ見られたことがない方は是非ご見物を。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。