神戸市灘区若宮神社 新在家地車

皆さんこんにちは。

前回の記事で有馬上之町の地車を話題とした際に相野一門や構造の点で新在家地車を引き合いに出しましたので、今回は新在家地車を記事にしたいと思います。

この地車の存在は以前より知っていましたが、秋祭りにしか出ないので、なかなか見に行けていませんでした。
しかし、2018年の六甲ファミリーまつりにて畑原地車と新在家地車が合同で曳行を行ったことにより、ようやく見ることが出来ました。
歴史ある貴重な地車です。

それではご覧ください。

神戸市灘区若宮神社 新在家地車

◆地域詳細
宮入:若宮神社
小屋所在地:神社境内

◆地車詳細
形式:神戸型
製造年:江戸時代
大工:不明
彫刻:相野一門
歴史:東灘区御影西之町→東灘区呉田→灘区畑原→灘区新在家

姿見

かなり小ぶりな地車です。

この地車を新調した?かは分かりませんが、歴代の所有町の中で最も最初に記録されている御影西之町は、村中が狭かったのでこのようなサイズ感の地車を作ったのでしょうか。
この地車の次に御影西之町が新調した地車(現・三田市北濱地車)もかなり小さいサイズです。

側面より

古い地車ですが、現在見る神戸型と大きく変わりない特徴を備えています。

一括りに神戸型とは言いますが、神戸型は非常にバリエーションが多いです。
かぐら造りと言われる通し柱でない腰回りの柱が8本の構造や、引き出し舞台があって・・・と言うのは神戸型の特徴として知られていますが、この2点は神戸型にしか見られない特徴なだけであって、神戸型なので絶対に備えているという訳ではありません。

バリエーションが発生している理由としては、古い作品が戦災により失われてしまっていることや、元は別の形式であったものを購入し神戸型の特徴を持つように徐々に改造を加えているから等、様々な要因が考えられます。
とは言え、これはあくまでも平成後期~令和の時点でそうなっているだけの話ですので、明治~昭和の時代ではまた違った地車達が活躍しており、地車のサイズ感も違えば、かぐら造りの地車も現在よりもっと居たように感じることが出来たかもしれません。

斜め前より

新在家地車は恐らく江戸時代の製作であり、別の形式から大きな改造を施されて現在の姿見になったようには見えず、そのような記録もありません。
神戸型の初期の姿を残している地車として捉えても良いのではないでしょうか。

斜め後より

破風

勾配が急で、蓑甲の間隔が広いです。また、桁隠しが取り付くことも特徴です。
男屋根と女屋根の段差も小さく、屋根まわりは大阪型と近しい印象です。

仕口

左が男屋根側、右が女屋根側。

男屋根には枡組が組まれていますが、女屋根側は直接の仕口です。
しかし、よく見てみると男屋根側は車板に不自然な隙間埋め処理が行われており、かさ上げを行ったように見えます。

鬼板

上から
男屋根前方:『獅子噛』
男屋根後方:『獅子噛』
女屋根:『獅子噛』

3面とも獅子噛になっています。

箱棟

箱棟:『雲海』

懸魚・桁隠し

男屋根
懸魚:『龍』
桁隠し:『雲海』

この狭いスペースに龍を納めるのはかなり苦労したのではないでしょうか。

女屋根
懸魚:『鷲に兎』
桁隠し:『雲海』

鷲が掴んでいるのはよく見かける猿ではなく、兎になっています。
珍しいのではないでしょうか。

車板

男屋根前方:『梅』

なびくような枝の表現はまさに超絶技巧です。

女屋根:『素戔嗚尊 八岐大蛇退治』

日本神話の題材が採用されています。

右面男屋根側:『唐獅子』

右面女屋根側:『唐獅子』

左面男屋根側:『唐獅子』

左面女屋根側:『唐獅子』

非常に表情豊かでポージングの種類も多様な唐獅子です。
世界観が豊富ですので、全く見飽きません。

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』

木鼻は唐獅子で統一されています。
平側のものはそれぞれ前後の妻側を向くように身体をひねっているのが特徴です。

絵振板

絵振板:『雲海』

水引幕

水引幕:『龍』

脇障子

脇障子:『谷越獅子』

縦に長い部材を活かした題材です。

見送り幕

正面:『五條大橋の出会い 弁慶』

右面:『鬼若丸?』

左面:『五條大橋の出会い 義経』

見送り幕は源平合戦に関連する題材でした。

勾欄まわり

前方が跳勾欄、後方が擬宝珠勾欄です。
三田市北濱地車もこの仕様になっており、古い神戸型はこれが基本だったのでしょうか。

勾欄合

前方:『鶴・鶯・千鳥』

後方:『千鳥』

右面男屋根側:『千鳥・朱雀』

右面女屋根側:『千鳥』

左面男屋根側:『鶴・千鳥』

左面女屋根側:『千鳥・鶯』

基本的には千鳥ですが、異なる鳥も各所に散りばめられています。

腕木

中間部に左右一か所ずつあります。
途中で切られているのは張菜棒が干渉するからでしょうか。

持送り

持送り:『力神』

持送りは妻側に対して取り付くことが多いですが、この地車の場合支えているものが貫腕ですので平側に取り付けられています。
木の色合いからも見て分かるように後付けパーツです。

土呂幕

前方:『波濤』

この地車に限らず神戸型が土呂幕に彫刻を持っているのは面白いと思います。
土呂幕部分に鳴物を積むことが予め分かっているのであれば、宝塚型のように土呂幕も幕式にするような選択肢もあったのではないかと思いますが、神戸の地では土呂幕に彫刻を持つ地車が定着しており、幕式のものは1台もありません。

彫刻が施されるとしても囃子方が乗り降りしやすいように、どこかを扉式にする等の工夫が施されるものですが、この地車製作時点ではその発想はなかったようです。
ちなみに三田市北濱地車は妻側のみ幕式になっており、その部分から乗り降りが可能になっています。

後方:『飛竜』

後方だけ飛竜がいます。
上につけられている獅子噛は先々代か三先代のものと伺いました。

右面男屋根側:『波濤』

土呂幕の一枚を手前に倒れるようにして、少し強引に乗車口を作っています。

左面女屋根側:『波濤』

左面男屋根側:『波濤』

左面女屋根側:『波濤』

平側の題材は文章にしてしまえばシンプルに波濤となってしまいますが、現物は非常に卓越した技術での波の表現がなされています。

台木

前方『波濤』

曳き綱は後方までぐるりと回す仕様です。

後方:『波濤』

右面:『波濤』

左面:『波濤』

角台木で、大きな根木を持ちます。

装飾

提灯:『橘紋・左三つ巴紋・若宮の文字』
雪洞:『戦国絵巻』

金具

①破風:『唐草模様・昇龍』
②垂木先:『梅鉢紋』
③脇障子兜桁:『梅鉢紋』
④勾欄先:『梅鉢紋』
⑤張菜棒先:『新』の文字。
⑥台木先:『新在家』の文字。

梅鉢紋は畑原時代の名残かと思います。

畑原地車・新在家地車

旧畑原地車である新在家地車。
このツーショットは本祭では見ることはできません。

いかがでしたでしょうか。

小ぶりな地車ですが、オリジナル性が高いため大変貴重で、神戸型の歴史を紐解く上で非常に興味深い一台でした。
まだ見られたことが無い方は是非足を運んでみてください。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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