堺市中区野々宮神社 深井中町地車

皆様こんにちは。

今回は先週、抜魂式が行われた深井中町地車の記事を書きたいと思います。

深井中町地車は平成元年に完全完成となった折衷型地車で、昭和末期に多くの町が折衷型を新調した深井地区の中では最も最後に作られています。
大工は植山工務店、彫刻は岸田恭司師をはじめとする豪華な顔ぶれで製作された一台です。

※写真は数年前に町内のイベントで地車が出た際に撮影したものです。

堺市中区野々宮神社 深井中町地車

◆地域詳細
宮入:野々宮神社
小屋所在地:会所に隣接

◆地車詳細
形式:折衷型
製作年:1989年(平成元年)
大工:植山工務店 植山良雄
彫刻:岸田恭司、筒井伸、近藤晃、など

◆歴代深井中町地車
・先々代:板勾欄出人形型。堺市深井中町→尼崎市築地本町三丁目→長野県諏訪
・先代:子供地車、現地車新調に伴い売却。堺市深井中町→堺市深井中町西→高石市土生→和泉市納花
・現地車:深井中町にて新調。  

姿見

左が前方、右が後方。

折衷型の中でもかなり岸和田型に近いフォルムを持ちます。
幅広の台木と土呂幕に縁隅木は岸和田型の要素が強いです。
軒唐破風は古い上地車には無いもので、こちらも岸和田型由来の要素です。

側面より。

下勾欄がなく、土呂幕が大屋根側も小屋根側も全て立体彫刻になっているのが特徴です。
近年新調される折衷型(立体彫刻の土呂幕・三枚板)とほぼ同じスタイルで、新調から約30年経った現在でも古さをあまり感じさせません。

当時らしさを感じるものは脇障子や角障子の兜桁でしょうか。
私は有るものも無いものもどちらも個性として好きですが、兜桁があることによって屋根周りとの間にひとつ区切りがつき、引き締まった印象になります。

破風

入母屋・軒唐破風。隅扇垂木になっています。
金具が多く、大変豪華な印象です。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

近藤晃師の作品。この獅子噛は名工木下舜次郎師の獅子噛を連想させます。
前後で白目や虹彩の面積が少しずつ異なります。

懸魚・桁隠し

大屋根前方
懸魚:『天乃岩戸』
桁隠し:『麒麟』

大屋根後方
桁隠し:『雲海』

小屋根
懸魚:『素盞鳴尊 八岐大蛇退治』
桁隠し:『飛竜』

車板

大屋根前方
車板:『宝珠を掴む青龍』
虹梁:『富士の巻狩り 新田四郎猪退治』

小屋根
車板:『猿に鷲』

枡合・虹梁

右面大屋根側
枡合:『村上義光 錦旗奪還』
虹梁:『富士の巻狩り』

右面小屋根側
枡合:『?』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

左面大屋根側
枡合:『千利休 茶会』
虹梁:『富士の巻狩り』

左面小屋根側
枡合:『?』
虹梁:『牡丹に唐獅子』

従是東小谷領と書かれていますが、滋賀の小谷城のことでしょうか。

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『唐獅子・牡丹に千鳥』

唐獅子は手に何か持っているものと全身が彫刻されているものの2パターン、小屋根側は牡丹に千鳥とバリエーション豊かです。全部で8つあります。

花戸口虹梁

花戸口虹梁:『鳳凰』

見送りが三枚板形式なので、このように花戸口虹梁を設けることが出来ます。

勾欄合

上から前方、右面、左面
勾欄合:『花鳥風月』

脇障子

脇障子:『武者』

三枚板・角障子

正面:『敦盛呼び戻す熊谷次郎直実』

旗で全景は写せませんでした。

熊谷次郎直実。

右面:『巴御前 畠山重忠の決戦』

巴御前。

畠山重忠。

左面:『八幡太郎義家 安倍貞任を討つ』

安倍貞任。

八幡太郎義家。

三枚板はどれもきめ細かな彫刻で、場面の緊迫感が大変伝わってくるものです。
私は特に巴御前の険しい表情と勇ましい姿がお気に入りです。

犬勾欄

上が右面、下が左面
犬勾欄:『牡丹に唐獅子』

竹の節

竹の節:『唐獅子』

摺出鼻

上が右面、下が左面
摺出鼻:『武者』

分厚い部材に深く彫刻されています。

縁葛

前方:『忠臣蔵』

容量の関係で全面の人形を載せることができません。題材は忠臣蔵です。
前方が両国橋引揚。

右面:『忠臣蔵』

土呂幕

前方:『加藤嘉明 浅井吉兵衛討取』

加藤嘉明。

浅井吉兵衛。

松良

左が右面、右が左面

前方の松良受けが阿吽の唐獅子になっているのが特徴です。

土呂幕・連子・旗台

後方:『手塚光盛 斎藤実盛討取』
連子:『唐獅子』
旗台:『獅子噛』

連子の唐獅子。

松良

左が左面、右が右面

後方の松良には武者、松良受けには波濤が彫刻されています。

土呂幕

右面
前:『加藤清正 山路将監討取』
後:『今川義元の最期』

加藤清正。

山路将監。

今川義元。

左面
前:『福島市松 庭戸ノ濱ニテ 拝郷五左ェ門久盈討取』
後:『宇治川の先陣争い』

福島市松。

拝郷五左ェ門。

宇治川の先陣争い。

台木

上が右面、下が左面
台木:『波濤に玄武』

珊瑚の彫刻もあり、その周囲はかなり深く彫られています。
右面中央は親子になっています。

このイベントの際に青年団の方が着用していたTシャツや梃子尻にも玄武の絵が描かれていました。また、纏にも玄武の彫刻が採用されています。
深井地区には多くの折衷型上地車が存在しますが、台木に玄武の彫刻を持つのは中町のみです。
(参考までに、鯉…澤町・水池町・東町先代、唐獅子…清水町、竜宮伝説…畑山町)

金具

①破風中央:黒地、透かして『雲海と宝珠』
②破風傾斜部:黒地に昇龍。
③破風端:唐草模様。
④垂木:全て金具つき、『中』の文字。
⑤角障子兜桁先:町紋。
⑥脇障子兜桁先:野々宮神社神紋『八重山桜』
⑦縁葛中央:『牡丹に唐獅子』
⑧肩背棒先:『中町』の文字。

いかがでしたでしょうか。

私はこの地車を初めて見て、すぐお気に入りの一台となりました。
ネット上には彫刻の画像が少なく、この地車をじっくり見たことがある方があまり多くない印象ですが、当記事を見て興味を持たれた方も多いのではないでしょうか。

三枚板の彫刻など、是非一度網ナシで見てみたいですね。
来年の入魂式の際に詳しく見れることを期待しましょう。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。 

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