神戸市東灘区弓弦羽神社 中御影地車

皆さんこんにちは。

神戸の祭礼が終わり1ヶ月が経とうとしていますが…なかなか囃子のリズムが抜けませんね(笑)
その寂しさを引きずり、秋も神戸市で祭礼を行っている地域に足が向いてしまいます。

さて、神戸の地車で検索して当ブログに辿り着いた方が何人かいらっしゃるようで…神戸のコンテンツも充実させていかなければ、と考えています。
今後は暫く記事のストックが多い大阪市と神戸市の記事が多くなるかと思いますので、宜しくお願い致します。

今回ご紹介するのは中御影の地車。
元・泉州の地車として見物したかった一台で、大幅な改修を受けていないため、当時の面影を沢山残している地車です。

それではご覧ください。

神戸市東灘区弓弦羽神社 中御影地車
 
◆地域詳細
宮入:弓弦羽神社
小屋所在地:東灘警察署から2号線を挟んで南側。
歴史:柳の文字は町内を流れていた柳川に由来。

◆地車詳細
形式:板勾欄出人形住吉型
製作年:明治時代
改修年:?
購入年:平成15年
大工:【住吉大佐】と云われる。
改修大工:?
彫刻:【彫又】西岡弥三郎?
改修彫刻:井岡勘冶
歴史:?→高石市綾井西→和泉市尾井町→東灘区中御影 

◆歴代中御影地車
・先代(初代):尼崎市西櫻木より購入、現地車購入に伴い、東京都府中市寿町へ。
・現地車(2代目):和泉市尾井町より購入。

参考)先代地車・現地車の過去、各地区所有年間について
『山車・だんじり悉皆調査』 
姿見

左が前方、右が後方。

躯体の殆どは改修されています。
やりまわしを行っていたのでしょう、台幅がかなり広くとられています。

側面より。

住吉型ですが、男屋根と女屋根の段差が少ないです。
改修で女屋根の高さが上げられているように思います。

斜め後より

三枚板、大きな縁葛、波濤の台木…元は板勾欄型であった名残を各所に見ることができます。

破風

破風は取り換えられています。
勾配が少なく、幅が広い下地車風です。尾井町にいた頃、大工方が踊りやすいようにしたのでしょう。

鬼板

上から
男屋根前方:『獅子噛』
男屋根後方:『獅子噛』
女屋根:『獅子噛』

男屋根前方・女屋根は中御影に嫁ぐ際に井岡勘冶師の作に交換されています。
男屋根後方は尾井町時代まで取り付けられていたもの。こちらは元々ついていた彫又の獅子噛を意識して彫り替えられたものと思われます。

元々男屋根前方(彫り替え)と女屋根(オリジナル)にあったものは、東京都府中市寿町へ嫁いだ中御影先代地車に取り付けられています。

箱棟

上が男屋根、下が女屋根。
箱棟:『宝珠を掴む青龍』

女屋根はハタキでよく見えませんが、男屋根には彫り替えられたであろう宝珠を掴む青龍が彫刻されています。

懸魚

上から
男屋根前方:『義経八艘飛び』
男屋根後方:『雲海』
女屋根:『鳳凰』

破風が交換された際に彫り替えられたものです。 前方の義経八艘飛びは現代風ですね、女屋根の鳳凰は元あった題材を踏襲したものと思われます。

枡合・虹梁

上から
男屋根前方車板・枡合:『宝珠を掴む青龍』
男屋根前方虹梁:『猩々』
女屋根車板:『牡丹に唐獅子』
女屋根枡合:『牡丹に唐獅子』
女屋根虹梁:『玉取り唐獅子』

男屋根前方は車板・枡合を合わせて1枚で、宝珠を掴む青龍が表現されています。格好いい作品ですね。
女屋根虹梁に取り付けられているものは元々旗元にあったものでしょう。

枡合・虹梁

右面です。
上から
男屋根枡合:『牡丹に唐獅子』
男屋根虹梁:『猩々』
女屋根枡合:『唐獅子』

左面です。
上から
男屋根枡合:『牡丹に唐獅子』
男屋根虹梁:『猩々』
女屋根枡合:『唐獅子』

欠損の補修は行われていますが、オリジナルのようです。 オリジナルであるということは車長は変わっていないようですね。
虹梁の題材は鷹等の動物であることが多い中で猩々は珍しいですね。

木鼻

上が右面、下が左面。
木鼻:『阿吽の唐獅子』

男屋根側の木鼻は彫り替えのようです。
右面後方に取り付けられている唐獅子の切り欠きは、元は男屋根後方に取り付けられていた名残でしょう。

柱巻き

柱巻き:『昇龍・降龍』

素晴らしいですね、立派な柱巻きです。欠損もありません。

花戸口虹梁

花戸口虹梁:『猩々?』

元々あった名残で、壺のみ残されています。
題材は恐らく猩々かと。

脇障子人形

左が右面、右が左面。
脇障子人形:『武者』

板勾欄型の脇障子によくいる人形です。

脇障子

左が右面、右が左面。
脇障子:『武者』

元は角障子の部材だったと思われます。

三枚板

正面:『漢の高祖龍退治』

正面は定番の題材です。

右面:『天竺の班足王』

左面:『ハンカイの門破り』

出人形の後ろ側、枡合・台輪の下にある彫刻は元々摺出鼻だったと思われます。
題材は『牡丹に唐獅子』で、改修の彫りのようです。

勾欄合・縁葛

前方
勾欄合:『波濤』
縁葛:『合戦譚』

後方
勾欄合:『波濤』
縁葛:『合戦譚』

右面
勾欄合:『波濤』
縁葛:『合戦譚』

左面
勾欄合:『波濤』
縁葛:『合戦譚』

縁葛の彫刻は彫り換えられたものです。元はどのような彫刻だったんでしょうか?
勾欄合も改修の彫りです。尾井町時代は珍しく板勾欄はそのままに、外側に擬宝珠勾欄がついていましたね。
現在は板勾欄が取り外され、擬宝珠勾欄は跳勾欄に変更されています。

持送り

左が左面、右が右面
持送り:『山水草木』

外側も良いですが、内側の水の表現が良いですね。

土呂幕

上から
前方:『山水草木』
後方:『牛若弁慶五條大橋の出会い』

前方は扉式、尾井町時代の閂の跡が残っています。後付けで閂というのも珍しいですね。
後方は跳ね上げ式で、改修の彫りです。

右面です。
上から
土呂幕:『武者』
下勾欄:『波濤に兎』

左面です。
上から
土呂幕: 『武者』
下勾欄:『波濤に兎』

側面は新調当時の作が沢山残っていますね。

台木

上が右面、下が左面
台木:『波濤に鯉』

要所

①男屋根枡組:オリジナルではないようです。
②女屋根枡組:オリジナルではないようです。
③脇障子兜桁:尾井町時代に取り付けられたものでしょう、先の文字が柳に変更されています。
④鳴物:男屋根側に大太鼓、三枚板に摺り鉦、土呂幕に半鐘を積んでいます。
⑤張菜棒:四角いものは尾井町時代のものです。
⑥貫腕:交換されていますが、模様が入るのは交換前を参考にされているかと。
⑦下勾欄:『波濤に兎』、あまりよく写っていませんでしたので改めて。
⑧後方妻台:梃子穴があった名残を感じることができます。

金具

①破風中央部:唐草模様に銀メッキで宝珠。
②破風端部:唐草模様。
③垂木:菊紋。
④前方の飾り:神戸独特の飾りで、槍のようなものがついています。この飾りの意味・由来は何なんでしょうか?
⑤跳勾欄:先に金メッキの金具。
⑥勾欄:柳の文字が入っています。

いかがでしたでしょうか?

明治時代に作られ、泉州から東灘へ。
彫刻に関しては一部が東京都府中市へ。その中には女屋根の彫又作の獅子噛も含まれています。

大昔…新しい地車欲しさに壊される地車もあれば(※それが悪いという話ではありません)、時代を経て幅広い地域に移って曳行される地車もあります。
地車の持つ運命というのは不思議なものがありますね。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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