皆さんこんにちは。
前回の姫嶋地車(神野町先代)に続き、今回も堺市津久野の先代地車に注目してみたいと思います。
今回ご紹介するのは大官町(おおかんちょう)地車(宮山先代)です。
今でこそ折衷型でバンバンやりまわしをしている宮山ですが、江戸時代から平成5年までかなり長い期間この堺型地車で祭礼を行っていました。 大官町に嫁いでからも修理が行われていますが、金具などに”宮山”の文字が沢山残っており、宮山で活躍していた末期頃の状態をそのまま見ることが出来ます。
それではご覧ください。
尼崎市初嶋大神宮 大官町地車 ◆地域詳細 宮入:初嶋大神宮 小屋所在地:築地5丁目の集合倉庫 ◆地車詳細 形式:擬宝珠勾欄堺型 製作年:江戸末期 購入年:1993年 (平成5年) 大工:堺の大工 (【木村】一門か?) 彫刻:【服部】一門 歴史:堺市宮山→尼崎市大官町
姿見
左が前方、右が後方
左は2017年、右は2012年時点での写真です。近年は前方の提灯を破風の下に飾るようになりました。
よく見る堺型同様、現在は地車の全周を勾欄が囲っていますが、これは大官町に来てから改修されたもので、元は後方に勾欄が回り込まないタイプの地車でした。 同様の形態として守口市八雲南地車、寝屋川市国松地車があります。
側面より
擬宝珠勾欄堺型で、土呂幕部は柱が8本、擬宝珠の数も6つです。
肩背棒は規定サイズの長いものに交換、猫木を一段足し大きな径の駒を履き、山合わせスタイルに改造されています。
元は勾欄・縁葛がもう少し前に飛び出し、勾欄の内側に世話役や責任者が立つ仕様でしたが、全体的に後方へずらしてあります。
斜め前より
斜め後より
鬼板・三枚板などの彫刻の色合いと躯体の色合いの違いから見て分かる通り、躯体の大部分は宮山時代に彫忠で改修されています。
破風
破風は堺型らしい平たい形状ではありますが、オリジナルではありません。
鬼板
上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『唐獅子』
小屋根:『唐獅子』
後方2枚は胴体まで彫刻されたタイプ。
懸魚
上から
大屋根前方:『鳳凰』
大屋根後方:『唐獅子』
小屋根:『飛龍』
定番の獣系の題材です。
大屋根後方は金綱でよく見えませんが、唐獅子がここに彫刻されるのは珍しいかもしれません。
枡合
上から
大屋根前方:『唐獅子』
小屋根:『龍』
右面
大屋根側枡合:『唐獅子』
大屋根側虹梁:『武者』
小屋根側:『龍』
左面
大屋根側枡合:『唐獅子』
大屋根側虹梁:『武者』
小屋根側:『龍』
枡合は大屋根前方を除き、全て彫忠で彫り替えられています。
木鼻
上が右面、下が左面。
木鼻:『唐獅子』
こちらも一部は彫忠で彫り替えられています。
花戸口虹梁
車内枡合:『唐獅子』
花戸口虹梁:『唐草模様』
脇障子
脇障子:『武者』
勾欄辺りを削った跡があることから、元は異なった使われ方をしていた可能性があります。
三枚板
正面:『漢高祖龍退治』
三枚板の寸法は縁葛よりさらに下までありますが、現在はこれ位までしか見ることができません。 三枚板の中では一番欠損が少なく、状態が良い彫刻。
右面:『?』
左面:『樊噲の門破り』
欠け継ぎが荒いですが、じっくり見るとオリジナルの部分は滑らかで美しく彫刻されています。
擦出鼻
擦出鼻:『梅に千鳥』
私が堺型で好きな箇所の一つ。 尼崎では旗飾りはしませんが、無事残っています。
勾欄合・縁葛
前方
勾欄合:『菊』
縁葛:『唐獅子』
右面
勾欄合:『菊』
縁葛:『唐獅子』
左面
勾欄合:『菊』
縁葛:『唐獅子』
持送り
持送り:『波濤』
土呂幕
前方
尼崎に来てから旗台がこちらに移設されています。力神が持つ扇子に勝駒の意匠があり、宮山で曳かれていた名残を感じることができます。
後方:『竹に虎』
彫忠での彫り替え。
右面:『?』
一番前の彫刻だけ武者で彫刻の雰囲気も異なります。
人物のいくつかは彫忠で彫り替え。
左面:『?』
一番前は全て彫忠で彫り替え。一番後はオリジナルの状態が綺麗に残っています。
元は虹梁を挟んで上下に二枚彫刻があったかと思いますが、上側の彫刻が取り払われ、下部はかさ上げされています。殆どが欠損してしまったのでしょうか。
台木
台木:『波濤に鯉』
こちらも彫忠で彫り替えられたものです。
金具
①破風:『花唐草』
②垂木先:『左三つ巴に宮山の文字』
③勾欄親柱・縁葛端:『花唐草』
④勾欄持ち:『宮山』の文字
⑤下勾欄親柱:『花唐草』
いかがでしたでしょうか。 近年は尼崎でも綺麗に修理され、取り回しやすいように工夫された地車が増え、どちらかと言えば大官町は古い地車を曳いている方… しかし古い地車だからこそでしょうか、大官町はこの地車を軽快に取り回し、見ごたえのある山合わせを見せてくれます。 今年も敬老の日は懐かしい堺出身の地車達が活躍する姿を見に、築地を訪れたいところですね。 最後までご閲覧いただき、ありがとうございました。