お盆の隙間時間で何しようか…のお出かけタイム。
それで過去に何度か春木川のだんじり戎に行っていたのですが、今回は違います(笑)
と、言うのも大和郡山市にある東岡遊郭跡の有名な木造3階建ての妓楼が行政代執行で今年度中に解体される。とのネットニュースを7月末に見つけまして…以前よりこの建築の存在を知りつつも、見学を後回しにしていた私は、絶対に今見ておかなければ一生後悔すると思い、車を走らせることにしました。
また、せっかく東岡遊郭の跡を訪ねるのであれば、すぐ近くの洞泉寺遊郭跡も併せて見学しよう、とのことで2か所同時に見学してきました。
遊郭の文化は日本の近代化と共に法整備が進められ、終焉を迎えることになりますが、一部建築は解体されずに残っており、運よく保存・再生されているor解体されずにとりあえず残っている。の2パターンがあります。
(解体のニュースが出た東岡遊郭はどちらかと言えば後者で、洞泉寺遊郭は前者にあたるかと思います。)
頻繁に訪れている訳ではないので、滅多に今回のような記事は出しませんが、普段からお祭りお祭りと言っている私は当然、こうした日本の文化や歴史を含め、広く浅く興味がある訳でして…また、何と言っても遊郭建築は非日常を演出するために、凝った意匠が各所に施されており、見ていて非常に面白いと感じます。
今回は少しでもそんな魅力が伝われば良いなと思いつつ、静かに消えてゆく建築をしっかりと記録に残しておきたいと思います。
それではご覧ください。
大和郡山へとやってきました。小学校の社会科で習った金魚の養殖で有名な町です。
過去に奈良に住んでいたことがあったのですが、何故その時行かなかったのか…今でも後悔しています。
と、言うのもここ数年で遊郭建築が何軒も解体されており、町の雰囲気がガラっと変わりつつあるからです。
東岡遊郭跡に到着
細道を抜けると、突如として現れます。
いきなりですが、これが今回訪れた目的の遊郭建築です。
戦災・震災を耐えてきた木造3階建ての妓楼。ただならぬオーラを感じます。
しかし、建物は使って手入れしてナンボ…使われていない建物が持ちこたえるには、流石に限界が来ているようです。
反対側にまわりますと、まるで自然に還ろうとしているかのように、ツタが建物を侵食しています。
この角度が一番迫力ありますね。それでは、細部を見ていこうと思います。
瓦に宝珠の意匠を見つけました。
内部はかなりの惨状・・・
特定空家に関する標識が掲示されています。
措置期限が令和6年3月29日となっており、期限までに是正されなかったため、今回の行政代執行の対象となったようです。
近くに寄って上を見上げると迫力が凄いです。
室外機の数だけ部屋があるということでしょうね、そして室外機もなかなか年代物のようです。銘板はナショナルと書かれています。
割れた窓が痛々しいですが、薔薇のステンドグラスが残された数少ない見どころポイント。
ツタが生えている面は、もはや何が何だか・・・といった状態。
少し変わった格子のデザインはお決まりの見どころポイントです。
外部から見れるエリアとしてはこんなところです。興味がある方はYouTubeで調べますと、更に有益な情報が得られますので、検索してみてください。
この筋にもう1軒残っている妓楼を見に行きます。
道を真っすぐ進むと、すぐ現れます。
こちらも木造3階建てのいかにもなオーラを放つ建築。
1階部分の外装が西洋風になっており、こちらもなかなかの非日常感・・・
他にもじっくりと見れば色々発見があったかもしれませんが、暑さが限界でしたので、ここまで見て洞泉寺町へと移動することにしました。
洞泉寺遊郭跡に到着
東岡町と洞泉寺町は比較的近く、歩いても10分かからない程。
洞泉寺町も妓楼が沢山ありましたが、老朽化により解体が進められました。
残っているものはごくわずかですが、いずれも使用されているため保存状態が良く、東岡より明るい雰囲気の町並みになっています。
また洞泉寺町は凄いことに、遊郭建築だったものを市が保存・再生し、町家物語館として一般公開を行っている施設があります。
それがこちら。
登録有形文化財の銘板が取り付けられています。
用途的に必然となりますが、入って一番最初にある部屋は客引控室で、今は絵画が展示されています。
客引控室の隣は帳場で、後ほど中からの眺めを載せます。
ここから先は土足禁止となっていますので、靴を脱いで上がらせてもらいます。
入館料はなんと驚きの無料なのですが、お気持ちの箱がありましたので、入れてから内部へと上がります。
また、非常に親切なガイドさんがいらっしゃいまして、丁寧に館内を案内していただき、この建物に対する理解を深めることが出来ました。
土間を上がって一番最初の部屋は娼妓溜。
ここには修復に関する史料や、使用されている耐震ダンパーの資料が多数展示されていました。
当時の流れと同様に2階へ上がります。
正面の窓の造形がお洒落で、早速非日常の世界へと立ち入ることになります。
先ほどの窓の先、2階の髪結場から見える景色はこの建物で一番有名なところではないでしょうか。猪目模様の装飾があります。
魔除け的な意味合いで猪目模様としたか、建物用途の性質上ハート型としたかは分からないそう。
2階の見学はまた後ほど、3階へと上がってきました。
少し先で振り返って見た景色はこのような感じ。
壁にある上端がアーチがかった小窓は換気のため+手前にあるガス灯の明かりを取り入れるためのもの、とのことです。
3畳or4畳の客間が連なっています。
こちらは階段を上がってすぐの所にある客座敷(写真奥)に繋がる客間です。
複雑な意匠の窓がありました。
再び2階に降りてきました。
2階も3階と同様に、3畳の客間が連なっています。
客間の内部はこのような感じ。
奥に見える格子は1階・2階・3階でそれぞれ部材の太さが異なっており、上階の方が透過率が高くなるようになっています。
2階と3階の中央部には大階段が設けられています。
毎年『大和な雛まつり』としてシーズンになると、この階段にひな人形が並ぶそう。
画像検索すると出てきますが、圧巻の光景です。
大階段前の客間には年季の入った什器が置かれており、より当時の雰囲気が醸し出されていました。
座敷棟と本館の境の吹き抜けを横目に廊下を歩きます。
最初に上がった階段付近まで戻ってきました。
2階の階段を上がってすぐの所には案内所として8畳の広い部屋があります。
奥にある人形飾りも非日常の演出にぴったりです。
最後に1階へ下りて座敷棟を見ていきます。
まず見せていただいたのが料理坊。
2階の髪結所で見た猪目模様をここからも見ることが出来ます。
料理坊の横には味のあるタイルの手洗いがあります。
浴室も全面タイル張りになっていますが、浴槽部分は埋められていました。
天井にはこの建物の所有者であった川本家の家紋があります。
座敷棟の奥には松竹梅の小窓がついた便所があります。
驚くことに元々ここの床はガラス張りになっており、その下には金魚が泳いでいたとのこと。
すぐ隣の裏庭に床に使われていたガラス(分厚い!)が置かれていました。
裏庭も非常に立派です。
おしゃれな格子を見ながら奥へと歩きます。
裏庭の隣には増築された茶室が設けられていました。
茶室の奥にある蔵も近くまで寄って案内していただきました。
年月を経た銅板の色が迫力あり、何だか凄いものが眠っていそうな雰囲気のある扉です。
茶室を見た後は大広間へと戻ってきました。
大広間は12畳の大空間となっており、書院造となっています。
大広間はとても贅沢な眺めで、左に中庭、右に裏庭を見ることが出来ます。
横引きの雪見障子が設けられていました。
中庭を別角度から。
一周まわって、最初の方で写真を載せた帳場まで戻ってきました。
料金は先払いで、お客はここで支払いを済ませてから2階へ上がることになります。
左の障子部分にも猪目模様の小窓があり、ここからお客の様子を伺っていたのだそう。
帳場には茶碗入れがありました。
使っていた人の名札もあり、かなり雰囲気のある什器でした。
ここまで見て、町家物語館を後にすることになります。
気がつけばあっという間に1時間以上の時が過ぎており、有意義な見学となりました。
皆様も訪れた際はガイドさんの案内を聞いて巡られることを強くオススメします。
今回の雑記はここまで。
このシリーズが続くかは分かりませんが、たまにはこんな記事も出していきたいと思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。