皆さんこんにちは。
1か月ぶりの更新となりますが、今回は久しく会いたいと思う地車をご紹介したいと思います。
住之江區と言われて真っ先に思い浮かぶのは、驚くほど大人数が屋根に乗った状態での勇壮な宮入ではないでしょうか。
平成31年に新調された4代目地車の存在も、5年の月日が経つことでかなり見慣れてきましたが、私は先代地車で宮入の練りまわしをしている姿が脳裏に浮かびます。
日に焼けた貫禄のある地車が曳行されている姿は、とても格好良いもので、まさに人々の記憶に残る地車だったのではないでしょうか。
そんな先代地車は現在、本住吉神社の小屋に格納されており、祭礼時のみ小屋が開かれて会える存在となっております。
今後について明記されている情報はありませんが、現在、住吉幼稚園跡地に建設されている『だんじり等東灘の歴史・伝統文化発信施設』について神戸市のホームページを見ると、複数台の地車が展示されている内観イメージ画像が掲載されていますので、こちらの施設に西區先代と共に展示・保管されるものと思われます。
その施設も2024年完成予定とのことなので、再びお目見えする日は近いのかもしれません。
それではご覧ください。
神戸市東灘区本住吉神社 住之江區地車(先代)
◆地域詳細
宮入:本住吉神社
小屋所在地:神社境内
◆地車詳細
形式:神戸型
製作年:1931年 (昭和6年)
購入年:1947年 (昭和22年) 昭和25年に修復完成
改修大工:大石巳代吉
改修彫刻:川原啓秀
歴史:灘区高羽→東灘区住之江→保存中
姿見
左が前方、右が後方。
よく日に焼けた木の色をした地車と、赤い山形提灯で遠くからでも住之江區の地車はよく分かります。
現地車新調に伴い引退となりましたが、引退4年前の平成27年に板谷工務店にて締め直しが行われています。
斜め前より
この位置では見えにくいですが、神戸型らしく前方の勾欄は引き出せるようになっています。
引き出し舞台はありますが、かぐら造りではなく通し柱となっており、平側土呂幕は男屋根側・女屋根側で2分割される一般的な仕様です。
破風
切妻型で、テリがよく効いた神戸型ならではの破風です。
枡組
三段二手先で組まれています。
鬼板
上から
男屋根前方:『獅子噛』
男屋根後方:『獅子噛』
女屋根:『獅子噛』
大人気、川原啓秀師の獅子噛で、昭和22年の改修時に製作されました。
師の作品は多数ありますが、年代で見るとかなり後期に製作されたものとなります。
箱棟
男屋根側:『龍』
女屋根側:『唐獅子』
懸魚・桁隠し
男屋根前方
懸魚:『飛龍』
桁隠し:『麒麟』
この地車が高羽地車として新調された当時の懸魚は鷲のように見えますが、ここに飛龍を復活させたのは、住之江區の2代目地車の懸魚の題材が飛龍だったことによるものと思われます。
懸魚が飛龍、にはかなり拘りがあるようで、現在の住之江區4代目地車の懸魚も飛龍となっています。
女屋根
懸魚:『松に鷲』
桁隠し:『朱雀』
車板・枡合
前方:『牡丹に親子獅子』
非常に多くの唐獅子がおり、目を見張る作品です。
後ほども出てきますが、この地車の唐獅子の彫刻はどれも素晴らしい作品ばかりで、私の好きなポイントの一つとなっています。
提灯で見えにくくなっていますが、左下に川原啓秀刀の墨書きがあります。
後方:『宝珠を掴む青龍』
枡合
右面男屋根側:『牡丹に唐獅子』
右面女屋根側:『竹に虎』
左面男屋根側:『牡丹に唐獅子』
左面女屋根側:『牡丹に唐獅子』
1か所につき必ず2体、阿吽で対になるように作られています。
木鼻
上が右面、下が左面。
木鼻:『阿吽の唐獅子』
黒檀が使われており、前方・後方の柱にのみ取り付きます。
水引幕・昼提灯・雪洞
水引幕:『珠取り夫婦龍』
幕・提灯は阪神間で唯一、絹常で製作されたものを使っていることが特筆されます。
昼提灯:『龍・唐獅子』
雪洞:『桜に鶯』
昼提灯:『龍・唐獅子』
雪洞:『桔梗に金魚』
脇障子
脇障子(前方):『獅子の子落とし』
私がこの地車で最も好きな部分です。
表情も良く、経年によるオーラが加わり、素晴らしい作品だと思います。
脇障子(後方):『獅子の子落とし』
見送り幕・昼提灯・雪洞
見送り幕:『神功皇后 応神天皇併産す』
本住吉神社の御祭神、神功皇后にまつわる題材を採用しています。
幕は平成8年に新調以上の費用をかけて修復されているとのことです。
昼提灯:『虎』
雪洞:『紅葉に鹿』
見送り幕:『神功皇后 応神天皇併産す』
昼提灯:『虎』
雪洞:『椿』
見送り幕:『神功皇后 応神天皇併産す』
勾欄合・縁葛・腕木
平側の勾欄合は8か所、縁葛は3分割になっています。
勾欄には昭和20年の空襲で焦げた跡が残っています。
勾欄合・縁葛
前方
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『牡丹に唐獅子』
後方
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『牡丹に唐獅子』
右面男屋根側
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『牡丹に唐獅子』
右面女屋根側
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『牡丹に唐獅子』
左面男屋根側
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『牡丹に唐獅子』
左面女屋根側
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『牡丹に唐獅子』
縁葛
右面:『牡丹に唐獅子』
左面:『牡丹に唐獅子』
縁葛の唐獅子も脇障子と共にとても好きな部分で、それを同時に楽しむために側面に立って見るのが好きです。
腕木
腕木:『阿吽の唐獅子』
土呂幕
前方:『義経八艘跳び』
土呂幕はどれも源平合戦にまつわる題材で統一されています。
左下に川原啓秀刀と刻まれています。
後方:『合戦譚』
右面男屋根側:『合戦譚』
右面女屋根側:『合戦譚』
左面男屋根側:『平景清錣引き』
左面女屋根側:『頼朝朽木隠れ』
どれも光彩までしっかりと描き込まれたガラス目なのが良いですね、迫力が全然違います。
台木
前方:『波濤に玄武』
後方:『波濤に玄武』
右面:『波濤に玄武』
左面:『波濤に玄武』
台木はどれも波濤に玄武で統一されています。
金具
①破風中央:『桔梗紋・雲海に宝珠』
②破風傾斜部:『唐草模様・昇龍』 金メッキで龍、銀メッキで波濤が表現されている非常に凝ったものです。
③垂木先:『桔梗紋』
④勾欄:『桔梗紋』
⑤張菜棒先:『桔梗紋』
⑥台木先:『住之江』の文字。
いかがでしたでしょうか。
味わい深い魅力を秘めている昭和の銘車、何回見ても見飽きることはありませんね。
また一般にお目見えする日を楽しみに待ちたいと思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。