
皆さんこんにちは。
今回は名塩のだんじりを記事にしたいと思います。
私が名塩のだんじりの存在を知ったのは、大阪市の生野八坂神社地車(現在は守口市瀧井)が名塩大西町より地車を購入したことがきっかけで、その後2015年に中之町の修理入魂式で名塩を訪れたのですが、その時には他町の地車を見ることが叶わず、その後も何度か本祭を見に行こうとしましたが、結局見に行けず仕舞いとなっていた地域でした。
ですので、先日行われました西宮市制100周年記念だんじりパレードは非常に有難い機会で、これまで見たことが無かった3台を見学することが出来ました。
今回ご紹介する名塩北之町の地車は小松福太郎の彫刻を持つ貴重な大阪型の作品で、小松が販売していたものを直接購入したとの話が伝わっています。
令和元年に岸和田の井上工務店にて修復を行い、その後も隔年で彫刻の追加・幕の修復が行われ、令和6年に完成となりましたので、全てが揃った最高の状態での見学となりました。
それではご覧ください。
西宮市名塩八幡神社 名塩北之町地車
◆地域詳細
宮入:名塩八幡神社
小屋所在地:名塩交差点を山側へ北上したところ
◆地車詳細
形式:大阪型
製作年:幕末〜明治初期(推定)
大工:不明
彫刻:8代目小松源助(福太郎) (昭和の修理時に銘が消える)
改修年:2019年(令和元年)~
改修大工:【井上工務店】井上英明
改修彫刻:【賢申堂】河合賢申・【木彫片山】片山晃
姿見

左が前方、右が後方
幕式の大阪型です。
オリジナルの状態では桁隠し・勾欄合の彫刻がありませんでしたが、桁隠しは令和3年、勾欄合は令和6年に追加されました。
小屋根提灯に書かれている上島(かみじま)は昔の村の名称です。

側面より
修復を終えたばかりの幕がとても綺麗です。
前枠に人が入って方向転換を行うため、肩背棒は前方に長くなっています。

斜め前より
名塩は村中の道が大変狭く、急坂が多いため、どの地車もサイズは控え目となっています。
破風

令和元年の改修時に交換されました。
オリジナルから大きく変更は加えられていませんが、蓑甲のピッチが細かくなり葺地が少し延長されたことで、よりのびやかで現代的な印象となりました。
仕口

柱桁直結タイプで、溝切り無しです。
鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』
小松福太郎の作品で、貴重なオリジナルが残っています。
北之町の地車は獅子噛を含む全てにオリジナルの彫刻が残っており、どれも入れ替えられたりせず、大切に残されています。
懸魚・桁隠し

大屋根前方
懸魚:『鳳凰』
桁隠し:『飛龍』
姿見の欄でも書きましたが、桁隠しは令和3年の改修で追加されたものです。
オリジナルの雰囲気を損なわないよう、題材・サイズの選定が行われています。

小屋根
懸魚:『鷲』
桁隠し:『鷲』
車板

大屋根前方:『青龍』
車板の大きな龍は遠くからでもよく目立ちます。

小屋根後方:『谷越獅子』

右面大屋根側:『吽の龍』
平側は大屋根側は龍、小屋根側は唐獅子で統一されています。

右面小屋根側:『牡丹に唐獅子』

左面大屋根側:『阿の龍』

左面小屋根側:『牡丹に唐獅子』
木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『牡丹に唐獅子』
全部で10体あります。仕口隠しの力神等はありません。
水引幕

前方:『北若』の文字
奈良方面でも見かける文化なので名塩特有といった訳ではないですが、名塩のだんじりはよく決まってこの位置に小田原提灯を吊り下げています。

右面:『鳳凰』

左面:『鳳凰』
裏側に淡路島だんじりやの修復銘が入っていました。とても綺麗な色をしています。
脇障子

脇障子:『竹に虎・亀』
ついつい見逃しそうになりますが、下に小さく亀が居ます。
上方で竹が兜桁のように外部側に張り出しているのが印象的です。
構図は全く異なりますが、似た意匠として鴫野東之町の地車が思い浮かびます。
見送り幕

正面:『源満仲 龍退治』
幕は昭和11年に高島屋の製作で、ご近所の猪名川や五月山一帯に伝わっている九頭竜伝説を題材にされています。
幕の取り付けは宝塚方面と同様で、内部に骨組みが組まれており、外部側へ膨らむような飾りつけ方をされるのが特徴です。

右面:『源満仲 龍退治』

左面:『源満仲 龍退治』
勾欄合

前方:『波濤に千鳥』
令和6年に追加されたばかりの彫刻です。
桁隠し同様にオリジナルの雰囲気を損なわないよう、獣の題材で1枚モノで製作されています。

後方:『波濤に千鳥』
宝くじのコミュニティ助成事業を使用しての改修と言うこともあり、一番左の勾欄合には宝くじのキャラクターのクーちゃんが施されています。

右面大屋根側:『波濤に兎』
妻側は千鳥、平側は兎です。

右面小屋根側:『波濤に兎』

左面大屋根側:『波濤に兎』

左面小屋根側:『波濤に兎』
土呂幕

前方:『笹竜胆紋・左三つ巴紋』
笹竜胆紋は名塩八幡神社の神紋です。
神紋で笹竜胆紋はあまり見かけるものでないので、源氏が関連しているのか調べましたが、結局よく分かりませんでした。

後方:『波濤に千鳥』
名塩と言えば名塩和紙。台木の小口に貼ってあるのは恐らく名塩和紙でしょう。
後方にも曳綱環がありますが、急勾配の坂を下る際に後ろ方向に綱を引っ張って人力ブレーキをかけるために設けられているものです。
土呂幕・台木

右面:『きたわか』の文字・『波濤に千鳥』
水引幕や見送り幕もそうですが、土呂幕も竿を使って真っ直ぐに幕を張っているのが印象的で、綺麗に取り付けられています。

左面:『きたわか』の文字・『波濤に千鳥』
金具

①破風中央:『左三つ巴紋』 中央で分割されているのはオリジナルの破風が中央で二分割されていた名残です。
②破風傾斜部:『唐草模様』
③破風端部:『唐草模様』
④垂木先:『左三つ巴紋』
⑤縁葛:『唐草模様』
⑥肩背棒先:『笹竜胆紋』 金具ではなく、浮かし彫りの彫刻が入っていました。格好良いですね。
銘

令和の修復銘です、左後方にあります。

河合師の銘。

片山師の銘。

河合師の銘。
左面勾欄合にもあります。

水引幕の修復銘です。
いかがでしたでしょうか。
貴重なオリジナルの彫刻を大切にしながら、雰囲気を崩さない彫刻の追加・幕の修復が行われた大変上品で綺麗な1台でした。
久々の名塩のだんじりの見学となりましたが、また急坂を行く姿を見たくなりましたので、近々本祭も再チャレンジしたいと思います。
今回、見学時に北之町の方には団扇をいただいたり、銘の場所を教えていただいたり、大変親切にしていただきました。
本当にありがとうございました。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。