神戸市東灘区東明八幡神社 東明地車

皆さんこんにちは。

今年のGWはいかがでしたでしょうか。
私は毎度の如く神戸に居たのですが、先日の大改修お披露目曳行を見に行くことが出来なかった東明地車だけは絶対見るぞ!と、この日は御影に車を走らせました。

元々、東明は昭和8年に大工:大石巳代吉・彫刻:川原啓秀作の地車を所有していましたが、昭和20年の空襲でこれを焼失しています。
その後、地車が無い期間が続きましたが、昭和61年に太鼓正より大阪型地車を購入して復活。平成の大改修で大型化改造が行われ、昨年、令和の大改修が行われました。
お披露目された日は残念ながら雨だったのですが、この日はよく晴れ、生まれ変わった東明地車をじっくりと見ることが出来ました。

これまでよく見慣れた平成の大改修後の姿と令和の大改修後の姿が比較出来るような記事構成にしましたので、見比べながら楽しんでください。
それではご覧ください。

神戸市東灘区東明八幡神社 東明地車

◆地域詳細
宮入:東明八幡神社
小屋所在地:御影塚町3丁目交差点前

◆地車詳細
形式:神戸型(元・大阪型)
製作年:1897年(明治30年)頃
購入年:1986年(昭和61年)
大工:仲谷誠治郎
彫刻:辻田友次郎
改修年:2024年(令和6年)
改修大工:板谷工務店
改修彫刻:木下彫刻工芸
歴史:大阪方面→住吉大佐経由で左専道(大阪市城東区諏訪)の青年団が購入するが受け入れられず→東大阪市荒川→富田林市毛人谷の水利組合→太鼓正→神戸市東灘区東明

参考)
製作年・大工・歴史について
木村清弘 著『だんじりが百倍楽しめる本』

姿見

【令和の大改修前】左が前方、右が後方

見慣れた平成の大改修の姿です。
オリジナルの彫刻を活かして大型化。破風を交換し、三枚板式から幕式へ、擬宝珠勾欄から跳勾欄に改造されていました。

【令和の改修後】左が前方、右が後方

彫刻に洗いがかけられ、かなり印象が変わりました。
地車の顔となる獅子噛が交換されており、焼失した先代地車(川原啓秀師作)をモデルに、木下彫刻工芸で製作されました。

【令和の大改修前】側面より

①箱棟の両サイドに部材を追加して延長
②オリジナルの縁葛を切り取り、新しく設けられた長い縁葛の下地上に再度設置
③土呂幕の周囲に額縁を取り付け、寸法を延長
等から、オリジナルの要素がまだ分かる姿をしていました。

【令和の改修後】側面より

最も大きな変更点は、神戸型にしか見られない構造である『かぐら造り』(土呂幕周りの柱が8本、土呂幕上部より柱が6本に切り替わる)に変更されたことです。
同様に神戸型に多く見られる絵振板の彫刻も追加され、オリジナルの大阪型の雰囲気が完全に無くなりました。

【令和の大改修前】斜め前より

【令和の改修後】斜め前より

破風

【令和の大改修前】

【令和の改修後】

最初に見た時は破風も変わった?と思ったほど、印象が変わりましたが、破風は変わっていません。
獅子噛の交換と洗いで大きく印象が変わりました。

枡組

出三斗組です。

鬼板

【改修前】
上から
男屋根前方:『獅子噛』
男屋根後方:『獅子噛』
女屋根:『獅子噛』

オリジナルは辻田友次郎師の作品でした。彫忠で改修を受けた地車特有の目玉に交換されています。

【令和の改修後】
上から
男屋根前方:『獅子噛』
男屋根後方:『獅子噛』
女屋根:『獅子噛』

顔横の渦が3個ずつなのが先代東明地車の特徴でした。(他は大概4か5個ずつ)
バッチリ再現されています。

懸魚・桁隠し

男屋根前方
懸魚:『飛龍』
桁隠し:『龍』

女屋根
懸魚:『鷲』
桁隠し:『鶴』

右側の桁隠しだけ上手く撮影出来ていませんでしたので、改修前の写真になっています。再度撮影したら差し替えます。

車板・枡合

男屋根前方
車板:『宝珠を掴む青龍』
枡合:『牡丹に唐獅子』

東明地車はオリジナルの状態から非常に良い獣の彫刻を持っていましたので、令和の大改修後も全てそのまま引き継いでいます。

女屋根
車板:『親子獅子』
枡合:『合戦譚』

枡合

右面男屋根側:『牡丹に唐獅子』

右面女屋根側:『阿の龍』

左面男屋根側:『牡丹に唐獅子』

狭いスペースですが3匹唐獅子がおり、見応えがあります。

左面女屋根側:『吽の龍』

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』

全身彫刻の唐獅子で、全部で8体あります。
一部は後の時代に彫り替えられており、作風が異なります。

水引幕

水引幕:『珠取龍』

絵振板

絵振板:『東明の団扇を持つ・咥える唐獅子』

令和の大改修で追加された彫刻です。

脇障子

脇障子:『合戦譚』

見送り幕

正面:『処女塚伝説』

東明と言えば地元に残る処女塚(おとめづか)伝説が有名です。
1人の美しい娘と結婚をするべく2人の男が競い合いますが、どちらの男も素晴らしいため選ぶことが出来ず、思いつめた娘は自ら命を絶ち、男2人もそれを追って命を絶った悲しいお話です。

これは生田川にて水鳥を早く射止めた方が結婚出来る、として弓比べをする場面です。

右面:『東明八幡神社』

左面:『小山田高家』

小山田高家も東明に伝わっている歴史の話です。
湊川の戦いに敗れて馬を失い、処女塚の上で応戦していた新田義貞に対し、小山田高家はこれまでの恩を返すべく、自らの馬に新田義貞を乗せて逃れさせます。
引き続き小山田高家は処女塚の上で敵と対峙していましたが、最終的に討たれ死亡した。との話が伝わっています。

勾欄合・縁葛

【令和の大改修前】
前方
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『合戦譚』

【令和の大改修前】
右面
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『合戦譚』

【令和の大改修前】
左面
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『合戦譚』

木の色が異なる彫刻が大型化に伴い追加された彫刻です。
後方は上手く撮影出来ませんでした。

【令和の改修後】
前方
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『花鳥風月』

勾欄の部材が黒檀に変わり、縁葛の彫刻が新調されました。

【令和の改修後】
後方
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『花鳥風月』

【令和の改修後】
右面男屋根側
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『花鳥風月』

【令和の改修後】
右面女屋根側
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『花鳥風月』

【令和の改修後】
左面男屋根側
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『花鳥風月』

【令和の改修後】
左面女屋根側
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『花鳥風月』

腕木

腕木:『阿吽の唐獅子』

腕木の彫刻も令和の大改修で追加された彫刻です。

土呂幕

【令和の大改修前】
前方:『鶴亀・合戦譚』

【令和の大改修前】
後方:『合戦譚』

平成の大改修時点でオリジナルの状態から前方と後方の彫刻は入れ替えられており、扉式の彫刻が後方に来るように変更されていました。

【令和の大改修前】
右面:『合戦譚』

【令和の大改修前】
左面:『合戦譚』

特にこれといった題材は読み取れません。

【令和の大改修後】
前方:『神功皇后 応神天皇平産す』

【令和の大改修後】
後方:『風神雷神』

背景の幕も併せて、稲妻が表現されています。

【令和の大改修後】
右面:『鳥獣人物戯画 荷車曳き・餅つき・雪遊び』

【令和の大改修後】
左面:『鳥獣人物戯画 酒宴・お祭り・川遊び』

一般的な武者や獣の題材ではなく、鳥獣人物戯画が採用され、個性を出しています。
他で見かけない題材ですが、地車の雰囲気にしっかりと合っており、とても良い彫刻ですね。

台木

【令和の大改修後】
前方:『波濤に千鳥』

台木は今回の改修で交換されていませんが、台木先端の金具が黒から銀メッキに変更されています。

【令和の大改修後】
後方:『波濤に千鳥』

【令和の大改修前】
右面:『波濤に千鳥』

【令和の大改修前】
左面:『波濤に千鳥』

【令和の大改修後】
右面:『波濤に千鳥』

【令和の大改修後】
左面:『波濤に千鳥』

洗いがかけられ、新品同様に蘇りました。

昼提灯

右面
前から
『夫婦龍・小山田高家・処女塚伝説』

左面
前から
『夫婦龍・東明八幡神社・処女塚伝説』

昼提灯も令和の大改修で新調されました。絹常の作です。

金物

①破風中央部:『雲海に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍』
③破風端部:『雲海』
④垂木先:『左三つ巴紋』
⑤脇障子兜桁:『左三つ巴紋』
⑥縁葛端部:『牡丹』
⑦張菜棒先:『東』の文字。
⑧台木先:『東明』の文字。

絹常の銘です。

いかがでしたでしょうか。

新旧彫刻が綺麗に融合した素晴らしい地車に生まれ変わったと思います。
新しい姿でこの地車と共にまだまだ歴史を重ねていく東明區が楽しみですね。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

「神戸市東灘区東明八幡神社 東明地車」への2件のフィードバック

  1. 東明の者です。
    我が東明區のだんじりを詳しく紹介していただきありがとうございます。

    1. 地車写真保存会

      ユーザーさま
       
       
      コメントありがとうございます。
       
      改修から1年経過しての見物となりましたが、東明オリジナルの個性溢れる綺麗な姿に生まれ変わっており、大変感動いたしました。
       
      また、来年の祭礼も楽しみにしております。

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