
皆さんこんにちは。
前回は8月のきふねさんの祭りに曳き出される地車を記事にしましたが、あっという間に9月の築地のお祭りがやってきました。
諸事情あって数年地車を見に行けていなかったのですが、その間に本一以外の地車が全て改修を受けましたので、今年は絶対築地のだんじり祭りを見に行くぞ!と心に決めていました。
沢山取材をしましたので、私の尼崎の地車熱も暫く冷めそうになく、これから暫く尼崎の地車の記事が続くと思いますが、ご容赦いただきたいと思います。
今回記事にさせていただく小嶋地車は、江戸時代製作の歴史ある作品です。
近年では、平成24年と令和2年に改修を行なっており、特に令和2年の改修では破風や彫刻の入れ替えが行われましたので、大きく印象が変わりました。
新旧の比較が出来るように記事をまとめましたので、どのように変わったか見比べながらお楽しみいただければと思います。
それではご覧ください。
尼崎市初嶋大神宮 小嶋地車
◆地域詳細
宮入:初嶋大神宮
小屋所在地:小嶋福祉会館に隣接
◆地車詳細
形式:尼崎型
製作年:江戸時代
大工:不明
彫刻:相野一門
改修年①:2012年(平成24年)
改修大工:大下工務店
改修年②:2020年(令和2年)
改修大工:大下工務店
改修彫刻:辰美工芸
歴史:大阪市内→尼崎市小嶋
参考)
地車の歴史について
『山車・だんじり悉皆調査』 https://www5a.biglobe.ne.jp/~iwanee/
姿見

左が前方、右が後方。
比較的大きめの地車ですが、オリジナルでは更に大きかったようです。
令和2年の修復において、破風の交換・傷んだ彫刻の交換が行われています。
提灯に書かれている東本町は現在の住所表記。交差旗や後ろの提灯・金具に書かれている小嶋西濱は、昔尼崎が現在より細かい単位で沢山地車を持っていた頃の名残で、小嶋西濱の地車が現在の小嶋地車にあたることが由来です。
小嶋には他にも小嶋本町・小嶋裏町の地車があったようです。
また、交差旗の先端の装飾は山合わせの時には槍に変わると教えて頂きました。

側面より
三枚板は彫刻がありますが、平側土呂幕は幕式です。

斜め前より
改修前の姿見

左が前方、右が後方。
平成24年の修復時の姿です。
現在と比べるとオリジナルの彫刻が沢山残っていました。

側面より
平成24年時点ではまだ独特の車軸が使われていました。

斜め前より
破風

令和2年の改修時に交換されました。
改修前の破風

金具の龍が昇龍・降龍になっており、拘りを感じます。
鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』
令和2年の改修時に交換されました。
泉大津市西之町地車のものに近しい印象を受けます。
改修前の鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』
オリジナルの顔は小ぶりながらも、とても印象に残る作品でした。
大屋根後方のみ鞘耳になっています。
箱棟

大屋根側:『龍』

小屋根側:『唐獅子』
大屋根と小屋根で題材を変えています。
葺地の雲海模様も豪華です。
改修前の箱棟

箱棟:『雲海』
懸魚

大屋根前方:『飛龍』
オリジナルを模して復元されています。

小屋根:『飛龍』
改修前の懸魚

大屋根前方:『飛龍』

小屋根:『飛龍』
車板・持送り

大屋根前方
車板:『鞍馬山修行の場』
持送り:『金太郎の鬼退治』
車板は獣の題材ではなく、人物が彫刻されています。

小屋根
車板:『鍾馗の鬼退治』
細かい点ですが、目玉がガラス目に交換されており、眼力がUPした作品になりました。
改修前の車板

大屋根前方
車板:『鞍馬山修行の場』

小屋根
車板:『鍾馗の鬼退治』

右面大屋根側
車板:『中国列仙伝』
持送り:『金太郎の鬼退治』
大屋根平側車板は基本的に中国列仙伝で統一されています。

右面小屋根側
車板:『?』
小屋根側は今回は提灯でよく見えなかったので、平成24年時点の写真のみです。
隙間から覗いてみた感じでは、大きく変わってはいなさそうでした。

左面大屋根側
車板:『中国列仙伝』
持送り:『金太郎の鬼退治』

左面小屋根側
車板:『高砂』
桁にも彫刻が施されており、製作時にお金をかけて作られたのだろうと伺える部分です。
木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』
大屋根後方のみ全身彫刻となっています。
いずれも斜め方向を向いており、こちらも拘って製作されたことが伺えるポイントです。
車内車板

車内車板:『牡丹』
天蓋

天蓋:『龍』
小嶋の関係者の方にお願いをして、車内から天蓋を撮影していただきました。
ここは小嶋地車で1番の見どころポイントで、こんな立派な作品はなかなか他にありません。
小嶋の皆さんも見学の度に「天蓋の龍見て行ってやー」と、おっしゃっていただきます。
脇障子

脇障子:『龍』
令和2年の改修時に復元されました。
改修前の脇障子

脇障子:『龍』
天蓋も凄いのですが、この脇障子も大変格好良く、初めて見た時には思わず沢山シャッターを切ったのを覚えています。
美しい立体造形で、彫刻師さんの技量の高さが伺えます。
三枚板

正面:『富士の巻狩り 黄金鹿に矢を射る工藤祐経』
三枚板はいずれも富士の巻狩りで統一されています。
正面は古い地車に見られる火燈窓仕様になっています。

右面:『富士の巻狩り 源頼朝』

左面:『富士の巻狩り 仁田四郎猪退治』
勾欄合・縁葛

勾欄合・縁葛に彫刻はありません。
土呂幕

前方:『波濤に鯉』
令和2年の改修時に復元されました。

後方:『波濤に鯉』

側面:幕式
改修前の土呂幕

前方:『波濤』
オリジナルと波の入り方が同じなのが分かります。

後方:『波濤』
台木

前方
令和2年の改修時に町名の金具と安全柵が取り付けられました。
安全対策もバッチリです。

台木:『波濤に鯉』
令和2年の改修で、車軸を変更した際に埋木した部分に彫刻が取り付けられました。
金具

①破風中央:『唐草模様に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍・降龍』
③破風端部:『片草模様』
④垂木先:『小・嶋』の文字。
⑤勾欄親柱:『龍』
⑥肩背棒先:『小・嶋』の文字。
いかがでしたでしょうか。
荒々しい山合わせのイメージが大きい尼崎のだんじりですが、小嶋は大変素晴らしい緻密な彫刻を持つ、歴史ある地車であることがお分かりいただけたかと思います。
小嶋の皆様、いつも親切にしていただきありがとうございます。今回も沢山お声がけいただき、ありがとうございました。