守口市八坂瓊神社 大庭七番地車

皆さんこんにちは。

言わずもがな今年はコロナウイルスの影響でかなり寂しい秋祭りでしたが、3月の平野區以来これは見ておきたい!と思った地車が誕生しましたので、7ヶ月ぶりに見物に行ってきました。
大庭七番地車は躯体は新材を使用、彫刻は生野区岡先代地車のものを8割方再利用し、不足分は他の解体地車のパーツを組み合わせて作られたリニューアル地車で、昨年誕生した守口市南十番地車と作り方の手法が若干似ています。

それではご覧ください。

守口市八坂瓊神社 大庭七番地車

◆地域詳細
宮入:八坂瓊神社
小屋所在地:神社境内

◆地車詳細
形式:大阪型
製作年:2020年(令和2年) (元の彫刻は1904年(明治37年)・1814年(文化11年)等)
大工:河合工務店
彫刻:辻田友次郎
歴史:東大阪市古水走→東大阪市御厨→大阪市生野区岡→守口市大庭七番

参考)製造年・歴史について
山車・だんじり悉皆調査 http://www5a.biglobe.ne.jp/~iwanee/

姿見

左が前方、右が後方。

標準的な大阪型のシルエットです。
南十番地車は土呂幕の彫刻は新調されましたが、この地車は土呂幕の彫刻も再利用されています。

側面より

ベースは岡地車ですが、腰回りにあった部材を三枚板下に移設しているので、勾欄が低い位置に盛替えられ、乗車部の天井高さが高くなっています。

斜め前より

複数台の地車のパーツを組み合わせていますが、8割方元・岡地車のパーツを再利用しているため組み合わせ時の躯体寸法の調整がほぼ不要で、非常に安定した姿見を得ています。

斜め後より

破風

河合工務店の標準的な破風で、丸みを帯び・ピッチが幅広の蓑甲、なで肩の形状です。
流石大阪市のだんじり大工だけあって、大阪型ならではの破風を今も作成されています。

枡組

大斗肘木タイプです。

箱棟

彫刻はなく、社紋の金具が取り付けられています。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

獅子噛は元・野里東之町地車のものが再利用されています。
岡地車も正しくは辻友の獅子噛でしたので、オリジナルに近い状態に戻ったと言えます。なお、岡地車本来の獅子噛は今は門真市北島地車に取り付けられています。

懸魚・桁隠し

大屋根前方
懸魚:『鳳凰』
桁隠し:『青龍』

小屋根
懸魚:『酒呑童子』
桁隠し:『鶴』

懸魚は大屋根小屋根共、元・野里東之町地車のものが再利用されています。
小屋根の酒呑童子はこれ単品では珍しくなりますが、彫刻を移設してきた元・野里東之町地車の屋根まわりが大江山の鬼退治の題材だったことによるものです。
なお、元・野里東之町地車の虹梁は南十番地車に取り付けられています。

車板・虹梁

大屋根前方
車板:『青龍』
虹梁:『牡丹』

車板は全て元・岡地車のパーツが全て使われています。

小屋根
車板:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『牡丹』

右面大屋根側
車板:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『牡丹』

右面小屋根側
車板:『雲海に麒麟』
虹梁:『雲海』

左面大屋根側
車板:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『牡丹』

左面小屋根側
車板:『雲海に麒麟』
虹梁:『雲海』

片方は向かい合い、片方は進行方向を向いている構図になっています。
虹梁の彫刻も車板の題材に合わせて、大屋根側・小屋根側で異なっています。

車内車板

車内車板:『武者』

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子・獏』

柱隠し

柱隠し:『牡丹』

水引幕

水引幕:『社紋』

幕は先代地車に使用していたものをそのまま再利用しています。

脇障子・角障子

まずは全景。
角障子の取りつき方に特徴があり、斜めではなく、脇障子同様に直交方向に取り付けられています。

脇障子

脇障子:『唐獅子』

岡地車時代は土呂幕前方の持送りに取り付けられていたパーツですが、脇障子に移動しました。

角障子

前方側:『武者』

後方側:『武者』

岡地車時代は脇障子に取り付けられていたパーツですが、角障子に移動しました。
上部の不自然な切れ込み・補修跡から岸和田型の松良を使っていると思われます。

三枚板・角障子

まずは全景から

三枚板

正面:『秀吉本陣佐久間の乱入』

明治以降の地車に見られる定番の題材です。
三枚板下部にある彫刻は、御厨・岡地車時代は土呂幕上部に設けられていましたが、三枚板下部へ移動しました。
これで三枚板が勾欄に被ることなく見やすくなり、同時に下部に不自然な隙間が出来るのを防いでいます。

右面:『福島正則』

左面:『加藤清正』

勾欄合・縁葛

前方
勾欄合:『干支』
縁葛:『波濤に鯉』

元・岡地車のパーツかと思いきや、違う地車のパーツのようです。
深江新家地車等他に心当たりがありそうな地車の写真を見比べましたが、該当するものはありませんでした。こればっかりは謎です。

後方
勾欄合:『干支』
縁葛:『波濤に鯉』

右面
勾欄合:『干支』
縁葛:『波濤に鯉』

左面
勾欄合:『干支』
縁葛:『波濤に鯉』

土呂幕

前方:『波濤に鯉』

後方:『牡丹に唐獅子』

これも元・岡地車には無かったパーツです。
深江新家地車の小屋根車板でしょうか?これも深江新家地車の小屋根車板を確認した訳ではないので、私には断定できません。

右面大屋根側:『波濤に兎』

右面小屋根側:『波濤に兎』

左面大屋根側:『波濤に兎』

左面小屋根側:『波濤に兎』

台木

右面:なし

左面:なし

彫刻は無く、先頭には『七番』の文字が描かれています。
七番の由来は旧村名によるものです。昔は大庭一番村~大庭七番村までありましたが、1967年に住所表記が変わり、大庭七番村だけが大庭町として『大庭』の名称を残すことになりました。

金具

①大屋根前方破風中央:『唐草模様に社紋』
②小屋根破風中央:『唐草模様に宝珠』
③破風傾斜部:『昇龍』
④破風端部:『唐草模様』
⑤垂木先:『五瓜に唐花紋』
⑥脇障子兜桁:『左三つ巴紋』
⑦角障子兜桁:『五瓜に唐花紋』
⑧宝:『龍』
⑨肩背棒先:『左三つ巴紋』
⑩柱元:『牡丹』
⑪縁葛・勾欄:『唐草模様』

いかがでしたでしょうか?

令和2年に誕生した数少ない地車ですが、コロナ禍で今年は曳行はされませんでした。
来年こそは盛大に曳行されることを願っています。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

「守口市八坂瓊神社 大庭七番地車」への2件のフィードバック

  1. 詳しい投稿ありがとうございます。
    個人的に使われてる彫刻に思い入れがあるので是非拝見したい地車です。

    1. 地車写真保存会

      コメントありがとうございます。
      私も今回地車が新調されるまで大庭を訪れたことがありませんでした。
      例年5月のパレードは近隣の八番地車等も参加していないので、大庭町が新規参加する可能性は低いかもしれませんが、夏祭り・秋祭りと積極的に曳行していただけると、見学の機会が増えて嬉しいところです。

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