
※この地車は2025年より長瀬南大蓮から南岡所有となりました。
記事は長瀬南大蓮時代に作成したもので、画像も全て長瀬南大蓮時代に撮影したものを使用しております。
皆さんこんにちは。
記事にできそうな地車が150台を超えているので、見物にも行きますが、書くことも少し頑張ってみようと考えている今日この頃です。
私にとっても記事にまとめておくことで、万が一ハードディスクが壊れてしまった際に、これまで撮影した画像を失わなくて済むメリットがあります(笑)
さて、今回ご紹介しますのは長瀬南地区大蓮地車。
以前から見物したいと思っていたのですが、神社の祭礼ではなく、いつどこを曳行しているのか全く情報が無いため、夏祭りでは毎年遭遇出来ずにいました…(出ているのは夜だけ?)
しかし、近年は長瀬地車パレードに参加しているため、見物の機会が増えたようです。
長瀬南地区大蓮…よく南大蓮と呼ばれているため、私は「小屋の場所が大蓮北なのに何故南大蓮なのか…」と、以前から不思議に思っていました。
しかし、今回の見物で分かったのですが、どうやら南については「長瀬の南」であって「大蓮の南」ではない、とのことでした。
まだまだ謎の多い地車ですが、今年の長瀬地車パレードの際に写真に収めて参りました。
それではご覧ください。
東大阪市 長瀬南地区大蓮地車(現・藤井寺市南岡)
◆地域詳細
宮入:なし
小屋所在地:長瀬南小学校北西付近
神社の祭礼ではなく、有志による曳行を行っている。
◆地車詳細
形式:大阪型(元・板勾欄出人形住吉型)
製作年:江戸~明治時代
購入年:平成2年
大工:不明(住吉大佐か住吉大源?)
彫刻:【彫又】
改修大工:河合工務店
改修彫刻:?
歴史:堺市片蔵→東大阪市長瀬南地区大蓮→藤井寺市南岡
姿見

左が前方、右が後方。
背が高く、角柱。
擬宝珠勾欄住吉型のようで、大屋根と小屋根の段差が少なく、旗設備と後梃子がつかない大阪型。
角の肩背棒と前後の懐が平野方面仕様です。

側面より
三枚板や土呂幕に古い彫刻が残ります。
実は元・板勾欄型だったと推察出来る一台です。詳しくは後述します。

斜め前より
高さ・長さのバランスが良く、綺麗な姿見をしています。
この付近は区画整理されているので、曳行に差し支える障害物がないことも影響しているのでしょう。
破風

ある程度の勾配があり、中央部もやわらかく丸みを帯びています。
獅子噛

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』
3つの渦、眉間、耳の形…
雰囲気は川原一門の獅子噛に見えなくもないですが、誰が彫ったのかはよく分かりません。
箱棟

箱棟:『雲海』
雲海の彫刻が施されています。
懸魚

大屋根前方
懸魚:『鳳凰』
桁隠し:『龍』

小屋根
懸魚:『松に鶴』
桁隠し:『松に鷹』
枡合・虹梁・持送り

上から
大屋根前方
枡合:『龍』
虹梁:『雲海』
持送り:『鶴』
車内枡合:『龍』
小屋根
枡合:『竹に虎』
取り付け方が太鼓台の狭間のような感じですが、枡組がついているので一応枡合として紹介します。
虹梁をかなりくり抜いているためか、持送りがつきます。
車内の龍はこの地車新調当時の作でしょう。

右面です。
上から
大屋根前方
枡合:『干支(猿・酉)』
虹梁:『牡丹に唐獅子』
持送り:『鶴』
小屋根
枡合:『干支(午・未)』

左面です。
上から
大屋根前方
枡合:『干支(子・丑)』
虹梁:『牡丹に唐獅子』
持送り:『鶴』
小屋根
枡合:『干支(寅・辰)』
干支ですが、金綱や提灯に隠れているだけで、他の動物もどこかにいるのではないかと思います。
木鼻

上が右面、下が左面。
木鼻:『阿吽の唐獅子・獏』
柱

柱:『昇龍・降龍』
擬宝珠勾欄住吉型風の角柱で、どれも彫刻が施されています。
脇障子

脇障子:『武者』
下方が絞られており、元々角障子だったような印象の部材です。

脇障子人形:『?』
板勾欄型の名残で、元々は舞台様の脇障子の上に乗っていた人形と思われます。
住吉大佐・住吉大源が製作する地車によく見られるものです。
三枚板

正面:『漢の高祖龍退治』
漢の高祖…のはずなんですが、右の人物は大巳貴命に見えます。
龍の場所はここで正解と思われます。
劉邦は何処へ行ったのかと言いますと…

右面:『劉邦・虎』
右面で虎と戦っておりました、改修の際に出人形の位置が変わってしまったのでしょう。
ですから、改修前の右面の題材は大巳貴命大鷲退治?

左面:『雄略天皇猪退治』
こちらは人のポーズや、動物の胴体・足を見る限り、元の題材通りだと思われます。
猪の顔は彫り換えのようです。
勾欄合

前方:『波濤に千鳥』
後方:『波濤に千鳥』

右面:『波濤に千鳥』
左面:『波濤に千鳥』
勾欄合は全て波濤に千鳥で統一です。
縁葛

前方:『合戦譚』
後方:『合戦譚』

右面:『合戦譚』
左面:『合戦譚』
何かモデルとしている戦いがあるのかは分かりませんが、戦の様子が彫刻されています。
土呂幕

前方:『山水草木』
後方:『牡丹に唐獅子』
前方の扉式は彫りなおされていますが、改修前の様式を引き継いだと思われます。

右面です。
大屋根側:『牡丹に唐獅子』
小屋根側:『牡丹に唐獅子』

左面です。
大屋根側:『牡丹に唐獅子』
小屋根側:『牡丹に唐獅子』
側面は貴重な新調当時の彫刻です。
額に囲われている様子から、現在は大型化していることが分かります。
目玉の影響もありますが、独特の雰囲気をしています。
台木

右面:『波濤に玄武』

左面:『波濤に玄武』
購入時に交換されたものです。
平野風の曳行をするためには前後に懐が必要で、通常よりも長めの台木になっているかと。
要所

①枡組:枡組がついていますが、小屋根と干渉させることで段差を少なくし、大阪型風にしています。
②大屋根右面虹梁:晃一作、と刻まれています。
③前方妻台:引き綱はフックで固定するようです。梃子だけでなく、ペダル式ブレーキがつきます。
④後方妻台:後方の懐。
金具

①破風中央部:星梅鉢紋。
②破風傾斜部:昇龍・降龍。
③破風端部:唐草模様。
④桁先:亀甲花角紋、珍しいですね。
⑤垂木先:星梅鉢紋。
⑥脇障子兜桁:「南」の文字
⑦勾欄親柱・縁葛西隅:金メッキで、花角紋。
⑧肩背棒先:「大」・「蓮」の文字
関連動画
南大蓮出発の様子と、JR長瀬駅集結・出発の様子を収録しています。
いかがでしたでしょうか? 原型は殆ど無いですが、東大阪市でも元・泉州の上地車が活躍しています。 興味がある方は是非一度見に行ってみては如何でしょうか? 最後までご覧いただき、ありがとうございました。