
皆さんこんにちは。
今回はこれから大修理に入るとの情報が入りました、尼崎市東櫻木地車の改修前の姿を残しておくべく、記事を書きたいと思います。
私がこの地車を最後にじっくり見たのは丁度10年前で、現時点ともかなり差異があるようますが、かえってオリジナルに近い貴重な状態をしっかりと記録出来ていたので、やはり記録は残せる時に残しておくものだな…と思わされました。
※2025年8月11日 改修後の姿を撮影しましたので、画像追加しました。
それではご覧ください。
尼崎市貴布禰神社 東櫻木地車
◆地域詳細
宮入:貴布禰神社
小屋所在地:築地地区の小屋の一角
◆地車詳細
形式:元・北河内型
製作年:嘉永年間(1848~1854年)
購入年:1971年(昭和46年)
大工:不明
彫刻:小松源蔵
改修年:2024年(令和6年)
改修大工:大下工務店
改修彫刻:木彫古澤
歴史:吹田市宮の前→尼崎市東櫻木
参考)
製作年・彫刻師について
山車・だんじり悉皆調査 http://www5a.biglobe.ne.jp/~iwanee/
姿見

左が前方、右が後方。
尼崎には様々な形式の地車が存在しますが、東櫻木は元・北河内型の地車です。
大型の地車をコンパクトサイズに変更しているので、部材や彫刻一つ一つが大きく、ガタイの良い印象です。
同じ尼崎市の築地本町三丁目地車も北河内型からの改造です。

斜め前より
改修後の姿見

左が前方、右が後方。
傷んだパーツは交換、洗いがかけられ、綺麗になりました。
獅子噛・懸魚が新しくなりましたが、元の題材を引き継いでいます。

側面より
土呂幕まわりが板張りだったものが、菱格子に復元され、下勾欄が撤廃されました。
非常にすっきりと洗練された印象です。

斜め前より
提灯や水引幕も綺麗になっていますので、引き締まり、より格好良くなりました。

斜め後より
破風

オリジナルが残っており、非常に分厚い破風です。
オリジナルではないとコメントにて教えて頂きました。
改修後の破風

オリジナルは大きな北河内型時代のものをそのまま流用していましたので、サイズを縮小した現在の姿では少しずんぐりむっくりな印象でしたが、現在のサイズ感に適した破風形状に再編されました。
鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』
今は全て彫り替えられてしまっているようですが、貴重なオリジナルを記録出来ていました。
マニアにはとにかくこれが堪らないですね。現代の作品とは一味も二味も異なります。
この風格は時代を経なければ得ることが出来ないですね。
改修後の鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』
全て現代風の作品に交換されています。
懸魚

大屋根前方:『鳳凰』

小屋根:『猿に鷲』
改修後の懸魚

大屋根:『鳳凰』
これは格好良いですね、木彫古澤師の作品に交換されました。
オリジナルの題材を引き継ぎつつ、よりブラッシュアップされたものになりました。

小屋根:『猿に鷲』
小屋根側も木彫古澤師の作品になりました。
車板

大屋根前方:『宝珠を掴む青龍』

小屋根:『谷越獅子』

右面大屋根側:『麒麟(欠損)』

右面小屋根側:『牡丹に唐獅子』

左面大屋根側:『麒麟(欠損)』

左面小屋根側:『牡丹に唐獅子』
北河内型の魅力はやはり大きく手前に張り出した獣の彫刻に他なりません。
この辺りは改修でどのようになるのでしょうか。
現代風に戦記や神話になるか、最近の北出屋敷地車のように同様の獣の題材でブラッシュアップされるか、楽しみです。
改修後の車板

大屋根前方:『宝珠を掴む青龍』
洗いがかけられ、構造材の虹梁は元の彫刻を復元製作されました。
なかなか斬新なアイデアですが、宝珠のところはライトに変わっており、夜の曳行で活躍していました。
他にない、ライトを掴む青龍・・・?

小屋根:『谷越獅子』
こちらも洗いがかけられ、オリジナルが残されました。

右面大屋根側:『雲海』
麒麟の復元はされませんでしたが、裏板が取り付けられました。
鳴物吊り下げのためのアンカーが打たれ、近代的な装備になりました。

右面小屋根側:『牡丹に唐獅子』

左面大屋根側:『雲海』

左面小屋根側:『牡丹に唐獅子』
オリジナルの彫刻は洗いがかけられて、輝きを取り戻しました。
木鼻

上が右面、下が左面。
木鼻:『阿吽の唐獅子・獏』お恥ずかしながら小松一門の彫刻は特に勉強駆け出しの状態です。
小松源蔵の社寺彫刻の作品を少し調べましたが、作風の共通点が見出せず・・・この唐獅子・獏も小松源蔵の作品と見て良いものでしょうか?
小松ではないものも組み込まれているとコメントにて教えて頂きました。
改修後の木鼻

上が右面、下が左面。
木鼻:『阿吽の唐獅子・獏』
改修前のものが残され、阿吽の順番が正されました。
花台・勾欄

まずは全景から。
改修後の花台・勾欄

こちらもかなり印象が変わりました。
水引幕も綺麗で良い色です。
花台

花台:『唐子』
少し自信が無いですが、唐子で良いでしょうか。
改修後の花台

花台:『唐子』
再彩色、目玉が交換され、かなり印象が変わりました。
御幣を持たせたり、提灯を持たせたり、使い方は様々のようです。
車内車板・花戸口虹梁

車内車板:『牡丹』
花戸口虹梁:『牡丹』
改修後の車内車板・花戸口虹梁

車内車板:『牡丹』
花戸口虹梁:『牡丹』
こちらもオリジナルが残されています。
脇障子

脇障子:『石橋』
反対側は撮り忘れてしまいました・・・
改修後の脇障子

脇障子:『獅子の子落とし』
隣の花戸口虹梁とも合う、唐獅子に変更されました。
三枚板

正面:『一ノ谷合戦 敦盛呼び戻す熊谷次郎直実』
三枚板は土呂幕からの移設されたものだそうです、平側土呂幕でしょうね。
こちらが平敦盛。

右面:『一ノ谷合戦 敦盛呼び戻す熊谷次郎直実』
こちらが熊谷次郎直実。

左面:『宇治川の先陣争い』
土呂幕と三枚板で柱スパンが同一なので、少なくとも小屋根側の作品は枠を入れる必要は無いと思いますが、全作品が枠で囲われています。
改修後の三枚板

正面:『一ノ谷合戦 敦盛呼び戻す熊谷次郎直実』

右面:『一ノ谷合戦 敦盛呼び戻す熊谷次郎直実』

左面:『宇治川の先陣争い』
どれも洗いと彩色で綺麗になりました。
土呂幕

前方:『鯉の滝登り』
火燈窓の跡が伺えます。

後方:『牡丹に唐獅子』
比較的新しい作品が取り付けられていました。見かけない作風です。
改修後の土呂幕

前方:『鯉の滝登り』

後方:『牡丹に唐獅子』
どちらも目玉が入り、作品としてしっかりと引き締まりました。

姿見のところでも書きましたが、菱格子となり、下勾欄が撤廃されました。
元々菱格子だったものを復刻したとコメントにて教えて頂きました。
下勾欄・台木

右面

左面
土呂幕・下勾欄・台木に彫刻はありません。
勾欄親柱の金具は古い大阪型でよく見かけるもの。製作会社はどこなのでしょうね。
改修後の台木

前方
古い曳綱環のところは玄武の彫刻で塞がれ、新たに2つの曳綱環が取り付けられました。

左面
洗いがかけられ綺麗になり、先端に山桜紋が入り格好良くなりました。
改修後の金具

①破風中央:『山桜紋』 町名の櫻木から由来するものでしょうか。
②破風傾斜部:『昇龍』
③破風端部:『唐草模様』
④垂木先:『左三つ巴紋』
⑤脇障子兜桁:『山桜紋』
⑥勾欄親柱:『雲海・龍』
⑦肩背棒先:『抱き菊の葉に菊紋』 こちらは貴布禰神社の神紋ですね。
⑧曳綱環:『左三つ巴紋』
いかがでしたでしょうか。
改修前はオリジナルが残っている良さ、改修後は現代風にアップグレードされた良さがあり、どちらも格好良いですね。
改修前後が分かるように並べましたので、是非比較して見てみてください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
破風はオリジナルではありませんよ40年前くらいに変えた物です。木鼻も欠損した為何個か違う物を製作取り付けした為、小松のか分からないのも分かります。元々が菱格子だった為元に戻しました
匿名さま
ご教示いただき、ありがとうございます。
記事内容修正させていただきました。
稲垣恵一 [著]『尼崎城下の祭り』,稲垣恵一,1986.7. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/13272369
この本に昭和57年大修復の様子があり、「これまでの彫物を菱格子に取り換える」というキャプションとともに真新しそうな菱格子の写真が載っています。
ほかにもかなり興味深い写真が多く載っていました。
かしとんさま
コメントありがとうございます。
最近その書籍のページを画像で断片的に見る機会があったのですが、国会図書館にデータがあったのですね。ご教示いただき、ありがとうございます。
東櫻木の原型の写真と言いますか…尼崎へ運ぶ状況の写真まであるとは、とても充実した貴重な内容の書籍ですね。
暫く楽しい読書の時間が出来そうです、ありがとうございます。