大東市北野神社 氷野地車

皆さんこんにちは。

色々バタついており、4月は記事の更新が出来ませんでした。
あっという間に春が来て、各地で修理完成のお披露目が行われ、神戸では例年通りGWに祭礼が行われましたね。

そして北河内のだんじりにも動きがあり、彫清一門の名作である氷野地車が修理のため、工務店入りしたとの情報が入ってきました。
写真は5年前のものですが、いつも通り修理前後の比較がしやすいように記事化しておきたいと思います。

それではご覧ください。

大東市北野神社 氷野地車

◆地域詳細
宮入:北野神社
小屋所在地:神社境内
歴史:鎌倉期から見える地名。万治元年に赤井村から分離独立して成立。「五畿内志」によれば胡瓜の名産地であった。

◆地車詳細
形式:北河内讃良型
製作年:1895年(明治28年)
大工:不明
彫刻:【彫清】三代目 柳原清蔵

参考)
地域の歴史について
角川書店 『角川日本地名大辞典 27 大阪府』

姿見

左が前方、右が後方。

北河内型と言えば、他地域には無い大きな車体と、それに合った大柄な彫刻が魅力的です。
氷野地車は特に、遠目からでも肉厚さが分かる程、立派な彫刻が施されています。

側面より

北河内型の中では一般的な見送り幕式です。
土呂幕にもしっかりと彫刻が施されています。後ほど詳しく見ていきます。

斜め前より

斜め後より

破風

北河内型ならではの大きく分厚い破風です。

金具や木の色が綺麗なのを見る限り、過去にも工務店入りしているようですね。

枡組

出三斗組になっています。

車板の高さ寸法が大きいため、どうしても木鼻から組物までの間に空隙が出来ることになりますが、それを隠すために小さな柱巻きが設けられています。

このようなシチュエーションでは木鼻の上に力神が乗るパターンが一般的ですが、平・妻の題材を一体化させて花鳥風月の意匠にするのはとても美しいですね。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

見る者に強烈なインパクトを与える彫清一門の獅子噛です。
しっかりと側面にはみ出して主張している犬歯と、片側5個ずつの細かめな鬣の渦が特徴的です。

箱棟

箱棟:『波濤に千鳥』

ここにもしっかりと彫刻が施されています。

懸魚・桁隠し

大屋根前方
懸魚:『鳳凰』
桁隠し:『朱雀』

肉厚な獣の表現と繊細な植物の表現の対比が見られる大変美しい作品です。
細かい枝の質感が素晴らしいですね。

小屋根
懸魚:『猿に鷲』
桁隠し:『猿』

大屋根よりも更に肉厚さを感じる小屋根側の鷲です。立体感が半端ないですね。
獣の身体の隙間から松の枝が差し込んでいる様等、常人ではどのレイヤにどのパーツが位置しているのか全然分かりません。
まさに神業、超絶技巧ですね。

車板

大屋根前方:『宝珠を掴む青龍』

両目がしっかりと見え、龍の顔がより正面側を向くようにデザインされています。
虹梁の模様も車板に合わせて波濤になっています。

小屋根:『親子獅子』

部材を大きく手前側に傾けて、上下方向の空間を最大限に活かして表現されています。
目も表情も活き活きとしており、親獅子が子獅子に何か語り掛けているように見えます。

右面大屋根側:『麒麟』

右面小屋根側:『牡丹に唐獅子』

左面大屋根側:『麒麟』

左面小屋根側:『牡丹に唐獅子』

右面もそうですが、「ん!?」と言った感じで、顔を少し傾げている唐獅子がとても好きです。
全力疾走の唐獅子も居て、どれも表情豊かで面白いですね。

そう言えば、彫清名物?岩隠れの獅子はいませんでした。

木鼻

上が右面、下が左面。
木鼻:『阿吽の唐獅子・獏』

花台

花台:『牡丹に唐獅子』

交差旗飾りであまりよく見えませんでしたが、立派な花台がありました。

飛獅子

空隙埋めの飛獅子も欠損なく、健在です。

脇障子

脇障子:『桜井の別れ』

車体下部へと向かうにつれ、人物の題材がメインになっていきます。
脇障子は太平記の名場面が彫刻されています。

花戸口虹梁

花戸口虹梁:『松に鶴』

勾欄合

前方:『?』

後方:『?』

妻側は北河内特有の幕飾りでよく見えませんね。

右面大屋根側:『合戦譚』

右面小屋根側:『合戦譚』

左面大屋根側:『富士の巻狩り』

左面小屋根側:『富士の巻狩り』

狩りの様子が表現されているので、恐らくこの題材だろうと思います。
幕で隠れている妻側に頼朝公が居るかな?

腰組

折衷型でも時より見かけますが、立派な腰組は北河内型特有のもの。

特筆したいのはその組み方で、非常に凝った造りになっています。

腰組は柱の平側・妻側正面に挿肘木を取り付け、柱と大斗のセンターが揃った状態で組まれるのがシンプルかつ一般的です。
しかし、氷野地車の場合は斜め45度に挿肘木を出し、それに乗る肘木が海老虹梁のように湾曲して下がるような構造を取り、あえて柱センターから大斗をずらすように組まれているのが特徴です。

他に同じ構造を採っている地車が無いかと色々調べてみたところ、大東市赤井地車・東諸福地車が同じ構造をしていました。
製作大工の腕がよく表れている部分と見て良いかと思います。

土呂幕まわり全景

右面

左面

桁・長押

後方
桁:『波濤に兎』
長押:『合戦譚』

すみません、前方は上手く撮れませんでした。
連子のように細いパーツは貫かと思ったのですが、柱に首切りをして掛けてありましたので、長押と書くことにします。

右面大屋根側
桁:『波濤に兎』
長押:『合戦譚』

右面小屋根側
桁:『波濤に兎』
長押:『合戦譚』

左面大屋根側
桁:『波濤に兎』
長押:『合戦譚』

左面小屋根側
桁:『波濤に兎』
長押:『合戦譚』

土呂幕

前方:『秀吉本陣佐久間の乱入』

脇障子・勾欄合より時代が進み、土呂幕は戦国時代の題材となります。
前方正面は上地車・下地車問わず、よく採用されるお馴染みの題材、秀吉本陣佐久間の乱入です。

後方:『加藤清正』

北河内型の妻側土呂幕は花戸口になっているのが一般的な印象で、乗降もその部分で行いますから、どうしているのだろう?と思っていたら、後方が扉式になっていました。

右面大屋根側:『賤ヶ岳の合戦』

右面小屋根側:『賤ヶ岳の合戦』

左面大屋根側:『賤ヶ岳の合戦』

左面小屋根側:『賤ヶ岳の合戦』

再び加藤清正登場?
確証はありませんが、妻側から察するに題材は恐らく全て賤ヶ岳の合戦かと思われます。

金物

①破風中央:『雲海に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍』
③破風端部:『唐草模様』
④縁葛端部:『唐草模様』

いかがでしたでしょうか。

活き活きとした素晴らしい彫刻が各所で豊富に施された、素晴らしい北河内型だったかと思います。
元々小まめに手入れされている印象の地車ですが、工務店入りして更に綺麗な姿になって帰ってくることでしょう。
完成を楽しみに待ちたいと思います。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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