大阪市東成区八王子神社 八王子神社地車

皆さんこんにちは。

夏祭りシーズンが落ち着き、部屋から出るのが危険な暑さ故、こうして記事を書いています。
今回は令和8年生まれの出来立てホヤホヤの地車、東成区八王子神社地車をご紹介したいと思います。

入魂式は都合が合わず見ることが出来なかったのですが、夏祭りの朝に立ち寄ることが出来ましたので、短い時間でしたが地車をじっくり見させていただきました。

私自身、八王子神社には昔から何度も訪れたことがあるのですが、歴史等はあまり知らず、今回地元に所縁のある題材が多数採用された地車新調を機に、色々勉強することになりました。
見ていてとても楽しく、良い地車を新調されています。

それではご覧ください。

大阪市東成区八王子神社 八王子神社地車

◆地域詳細
宮入:八王子神社
小屋所在地:神社境内
歴史:御祭神 八王子大神 宇迦御魂神  素戔嗚命 大己貴命 奇稲田姫命
(※八王子大神と言うと、素戔嗚尊(牛頭天王)の8人の子(八王子権現)を指すことが多いですが、当神社の八王子大神は孝霊天皇の第8皇子の稚武彦命(わかたけひこのみこと)のことを指します。稚武彦命は桃太郎のモデルになった人物と言われています。)

當(当)神社の創建年代は詳ならず、社記によれば応神天皇の鎮斎し給ふところと傅(伝)へらる。
又、孝徳天皇が味経宮(あじふのみや)にましませし時、御崇敬の叡慮により高麗狗(狛犬のこと)一対を奉納し給へりと傳ふ。
本地一円の産土神にして古より八王子稲生大明神と称へ崇敬し來(来)りしに、明治五年百済神社と改称し、神社制度改正により社格村社に列せらる。
明治四十二年十一月、旧西今里村社八剣神社を當社に合祀し、八王子神社と改称す。明治末年ごろ迄は椿樹繁茂し森、厳なる境内に風致の趣を添へ時人「椿の宮」とも称し広く世に知られたり。昭和四十年四月氏子崇敬者の奉賛により現社殿御造営竣工せり依て茲に之を記念して本碑を建立するものなり。
引用)八王子神社境内の石碑より (※読みやすいように、一部句読点の追加・旧漢字等の補足を行っています。)

◆地車詳細
形式:大阪型
製作年:令和8年(2026年)
大工:大下工務店
彫刻:辰美工芸

◆歴代八王子神社地車
・先代(初代):昭和32年製作の大阪型で、元・東成区中本地車。平成25年に運営組織が中本地車保存会から八王子神社地車保存会に変わる。現地車新調に伴い大阪市旭区大宮南へ。
・現地車(2代目):令和8年製作の大阪型。

姿見

左が前方、右が後方。

大下工務店×辰美工芸コンビでの完全新調とのことで、どんな地車が出来るのだろう?先代を模したものが出来るのかな?はたまた今時の折衷型風のものが出来るのかな?と考えていたのですが、斬新な要素も入れつつ、しっかりと大阪型ベースの地車を新調されました。

蓑甲のピッチの大きな破風に、しっかりと後方まで回された勾欄がその証です。

側面より

斬新な要素として、まず目に飛び込んでくるのがこの場所では地車初採用となる大屋根下の海老虹梁です。後ほど詳しく取り上げたいと思います。

海老虹梁を採用するにあたって、木鼻の取り付く位置が前柱と中柱で変わることになりますが、そのレベル差で発生する隙間を力神の有無で自然に解消されている辺りがとても良い設計をされているなと思います。

斜め前より

破風

蓑甲のピッチが広い、昔ながらの大阪型の破風が採用されました。

枡組

出三斗組となっています。
桁にも彫刻が施されており、大変豪華な仕様です。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

3面共、獅子噛で統一されています。

箱棟

箱棟:『雲海』

懸魚・桁隠し

前方:『飛龍』

前方:『飛龍』

前方は鳳凰ではなく、桁隠しと合わせて飛龍で統一されました。
ここまで飛龍で統一されているのも珍しいかもしれません。

後方:『牛若丸 鞍馬山修行』

後方:『牛若丸 鞍馬山修行』

後の画像を見て頂けると分かりますが、この地車は戦記モノとしての題材が採用されていない作品となっています。
三枚板については『富士の巻狩り』が採用されており、平安時代~鎌倉時代の題材が選定されています。

車板

前方:『宝珠を掴む青龍』

枡組があるので、枡合と車板で題材を分けることも可能でしたが、一体の題材とされました。
少し手前へ傾けることで、通常よりも少し大きめのキャンバスを設けることが出来、迫力のある作品となっています。

小屋根:『八王子神社節分祭 大護摩』

題材の表記がなく、よく分からなかったので保存会の方に伺ったところ、この題材と教えていただきました。
実際に毎年行われている行事で、神社に所縁のある題材が採用されています。

海老虹梁

右面:『素戔嗚尊 八岐大蛇退治』

この地車で一番目を惹く場所の紹介です。
社寺建築ではよく見る海老虹梁が、地車で初めて採用されました。

後方へ向かって高くなっており、丁度鉦を叩く人の頭上が高くなっているので、とても合理的な発想だと思います。
こちらも保存会の方に話を伺ったところ、海老虹梁の採用を発案されたのは辰美工芸さんとのことでした。

住吉大佐の作品を除き、素戔嗚尊の後ろに小さく立っている姿で彫刻されることが多いですが、表に出て応戦している様が表現されています。
奥にはアシナヅチ・テナヅチの姿も。

左面:『素戔嗚尊 八岐大蛇退治』

素戔嗚尊は左面側にいます。

素戔嗚尊も奇稲田姫も八王子神社の御祭神なので、海老虹梁の左右で神社に所縁のある題材が採用されていることになります。

枡合・虹梁

右面小屋根側
枡合・虹梁:『千鳥』

大屋根前方もそうですが、袖切のところが網代格子になっている辺りに拘りを感じます。
空間を余すことなく、彫刻が施されています。

左面小屋根側
枡合・虹梁:『千鳥』

木鼻

上が右面、下が左面。
木鼻:『力神・阿吽の唐獅子』

前柱に取り付く木鼻のみ、力神とセットになっています。

柱・水引幕

まずは全景から。

柱:『千鳥』

水引幕:『左三つ巴紋・稲紋』

御祭神に宇迦御魂神もいますので、稲紋には違いありませんが、特殊すぎて名前が見つかりませんでした。
今度機会があったら聞いてみようと思います。

天秤

天秤:『牡丹に唐獅子』

このような細かい道具にも彫刻が施されていました。

車内枡合

車内枡合:『牡丹に唐獅子』

脇障子

脇障子:『鶴・亀』

伊勢音頭でも歌われる大変目出度い題材です。(彫刻の題材として採用されているのは意外と珍しい?)
鶴が銚子を咥えて舞い降り、亀が盃を咥えて舞い上がり、互いに舞を舞う様が表現されています。

三枚板

まずは全景から。

最近新調された地車で昔ながらの編み込み・宝を採用しているのは珍しいかもしれません。
始点が車板の山伏の身体になっているのも面白いですね。

正面:『富士の巻狩り』

正面に源頼朝がいます。

お顔がよく見えなかったので、斜めから。

右面:『富士の巻狩り』

角障子も三枚板の題材に合わせて富士の巻狩りになっています。

右面:『富士の巻狩り』

左面:『富士の巻狩り』

左面:『富士の巻狩り』

富士の巻狩りと言えば・・・仁田四郎の猪退治は左面に表現されています。

角障子

角障子(前方):『富士の巻狩り』

角障子(後方):『富士の巻狩り』

勾欄親柱

勾欄親柱:『四神』

個性豊かな上地車で、斬新なデザインはそれなりに出尽くしているかと思いきや、まだ親柱が残っていました!
ここに彫刻を施すのは面白いですね。後方までしっかりと勾欄を回しているが故に出来る表現でもあります。

勾欄合・縁葛

前方
勾欄合:『牡丹に唐獅子』
縁葛:『波濤』

妻側の勾欄合は牡丹に唐獅子になっています。
縁葛の題材はシンプルに波濤となっており、やはり徹底して戦記モノの題材が使われていません。
飽きの来ない良い意匠だと思います。

後方
勾欄合:『牡丹に唐獅子』
縁葛:『波濤』

右面大屋根側
勾欄合:『干支』
縁葛:『波濤』

平側勾欄合は干支になっています。左右合わせて12枚で丁度良い構成になっています。

右面小屋根側
勾欄合:『干支』
縁葛:『波濤』

左面大屋根側
勾欄合:『干支』
縁葛:『波濤』

左面小屋根側
勾欄合:『干支』
縁葛:『波濤』

腕木

平側は縁葛の題材に絡めて波濤となっています。

土呂幕

前方:『桃太郎』

この地車の土呂幕は『桃太郎』で統一されています。

何故、冒頭部分で御祭神の八王子大神(稚武彦命)のことを書いたかが、ここでご理解いただけたかと思います。
よくある子供の目線に合わせて『桃太郎』の題材を採用しただけでなく、御祭神に由来する題材を土呂幕全面に施してある、と言うことです。

後方:『桃太郎』

稚武彦命は後方にいます。

右面:『桃太郎』

平側は桃太郎の家来となった犬・猿・雉が鬼を退治する様子が鳥獣戯画のようにデザインされています。
面白いですね。

右面大屋根側:『桃太郎』

右面小屋根側:『桃太郎』

左面:『桃太郎』

左面大屋根側:『桃太郎』

左面小屋根側:『桃太郎』

台木

前方:『波濤』

後方:『波濤』

右面:『波濤』

台木はあっさりとした波濤の彫刻となっています。

左面:『波濤』

金具

①破風中央:『唐草模様に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍』
③破風端部:『唐草模様』
④垂木先:『八王子』の文字。
⑤脇障子兜桁:『菊紋・左三つ巴紋』
⑥縁葛端部:『唐草模様』
⑦肩背棒先:『八王子』の文字。
⑧肩背棒:『菊紋』

銘板

大下工務店×辰美工芸コンビの上棟札が車内に飾られています。

いかがでしたでしょうか。

69年ぶりに東成区に誕生した新調地車(実はそれまでは先代地車が区内で最も新しい地車でした。)
神社に所縁のある題材が多く採用され、斬新な意匠を取り入れつつも、型から外れない絶妙なデザインの作品が完成しました。

まだご覧になっていない方は、晩秋に行われる東成区民祭りでも曳行されると思いますので、是非見物に訪れてみてはいかがでしょうか。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です