皆さんこんにちは。
2021年1発目の記事となります。
今回ご紹介するのは東大阪市若江西部地車です。
この地車の記事を書く理由としまして、各地に地車を見に行っていると、不思議な懐かしさと言いますか、地元でもないのに無性にまた見たくなる祭りがあり、私が今偶然に若江の祭りが見たい気分だからということであります。
若江の祭礼日は日程固定のため、平日になることが多く、なかなか仕事との折り合いがつかず、見に行けない点が尚更見たさを加速しているのかもしれません。
私の個人的な感想はさておき・・・
若江西部は若江で地車を曳きはじめた最初の村で、元は石川型地車を所有していましたが、平成7年に堺市釜室より2代目となる地車を購入しました。
この地車は元は珍しい住吉大佐製の幕式大阪型で(それをまた釜室が所有していたのが面白い点です)、購入時の改修により遠目で見ると住吉大佐の地車とは思えない雰囲気をしていますが、近づいて見てみると虹梁や脇障子の辺りから、住吉大佐独特のオーラを感じ取ることができる隠れ銘地車です。
それでは写真で細かい部分をご紹介していきます。
東大阪市若江鏡神社 若江西部地車
◆地域詳細
宮入:若江鏡神社
小屋所在地:神社境内
◆地車詳細
形式:擬宝珠勾欄住吉型 (元・大阪型)
製作年:明治20年代
購入年:1995年(平成7年)
大工:住吉大佐
彫刻:小松一門
改修大工:河合工務店
改修彫刻:【醒ヶ井】井尻翆雲
歴史:?→堺市釜室→東大阪市若江西部
◆歴代若江西部地車
先代(初代):石川型。富田林市寺内町より購入、現地車購入に伴い柏原市昭和町へ。
現地車(2代目):元は幕式大阪型。堺市釜室より購入、購入時に住吉型へ改修。
姿見
左が前方、右が後方。
背が高い地車です。若江の地車はどれも大きいですね。
こまめに手入れされているのか、とても綺麗な地車です。
一時期は旧村名の『巨摩』と書かれた提灯をつけていたようですが、最近は専ら『西』か『西部地車保存会』と書かれた提灯ですね。
側面より
側面からみると、少し住吉大佐らしいオーラを感じ取れるかもしれません。
擬宝珠はオーソドックスに片側3つですが、縁葛は2分割ではなく3分割になっています。
破風
破風は地車の印象を大きく左右します。
大改修により交換されており、オリジナルらしさが抜けているので、この部分だけ見ると本当に住吉大佐でつくられた地車か分かりません。
鬼板
上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』
3面とも獅子噛で統一されています。オリジナルでは前方のみ素戔嗚尊でした。
この獅子噛、改修の彫は間違いないのですが、三枚板の醒ヶ井彫刻と同様で獅子噛も醒ヶ井彫刻かと言われると疑問。井波の野原湛水師の作品?
箱棟
箱棟:『雲海』
懸魚・桁隠し
大屋根前方
懸魚:『奇稲田姫』
桁隠し:『八岐大蛇』
懸魚にはオリジナルが残っています。
奇稲田姫の題材はまさしく住吉大佐の地車の特徴で、オリジナルでは鬼板・懸魚・桁隠しと合わせて素戔嗚尊八岐大蛇退治の題材でした。
小屋根
懸魚:『猿に鷲』
桁隠し:『猿』
力強い鷲の彫刻もオリジナルにしか出せない迫力です。
車板・枡合・虹梁
大屋根前方
車板:『宝珠を掴む青龍』
虹梁:『雲海』
小屋根
車板:『牡丹に唐獅子』
右面大屋根側
枡合:『麒麟』
虹梁:『九尾狐退治』
右面小屋根側
枡合:『珠取り獅子』
左面大屋根側
枡合:『麒麟』
虹梁:『鎮西八郎の剛弓』
左面小屋根側
枡合:『珠取り獅子』
オリジナルが残る貴重な部分です、とても良い作品が揃っています。
柱
柱:『昇龍・降龍』
柱はオリジナルでも角柱でしたが、彫刻はありませんでした。
この辺りは明治30年頃の住吉型の作風を新たに取り入れています。
木鼻
上が右面、下が左面
木鼻:『唐獅子』
お馴染みの全身が彫刻されたタイプです。
車内枡合
車内枡合:『素戔嗚尊』
これはオリジナルで大屋根前方鬼板だったものです。
きちんと残してくれており嬉しいです。
ところで、オリジナルの獅子噛はどこに行ったのでしょうね。
花戸口虹梁
花戸口虹梁:『鯉の滝登り』
脇障子
脇障子:『敦盛呼び戻す熊谷次郎直実』
左右でセットになっている題材、とても格好いいですね。
この地車で一番お気に入りの場所かもしれません。
脇障子上木鼻
脇障子上木鼻:『竹に虎』
脇障子の上部に位置する木鼻は少し個性を持たせています。
三枚板
正面:『【難波戦記】木村重成 単騎部下を助ける』
三枚板正面の最も目立つところに、地元に所縁のある題材・・・若江の戦いにおいて活躍・戦死した木村重成が採用されています。大変格好良いですね。
右面:『今川義元?』
左面:『後藤又兵衛?』
左右に関してはこれかなぁ?といった感じ、あまり自信はありません。
摺出鼻
摺山鼻:『牡丹に唐獅子』
摺山鼻:『牡丹に唐獅子』
旗台
旗台は台木に直接差すタイプでした。
勾欄合・縁葛
前方
勾欄合:『太平記』
縁葛:『太平記』
後方
勾欄合:『太平記』
縁葛:『太平記』
右面
勾欄合:『太平記 千早城の戦い』
縁葛:『太平記』
左面
勾欄合:『太平記』
縁葛:『太平記 桜井の別れ』
勾欄合と縁葛は太平記で統一されていました。
持送り
持送り:『唐子』
土呂幕
前方:『源頼朝』
後方:『平景清錣引き』
前方も後方も扉式になっており、珍しいですね。
土呂幕・下勾欄
右面大屋根側
土呂幕:『義経八艘跳び』
下勾欄:『波濤に千鳥』
右面小屋根側
土呂幕:『義経八艘跳び』
下勾欄:『波濤に千鳥』
左面大屋根側
土呂幕:『宇治川の先陣争い』
下勾欄:『波濤に千鳥』
左面小屋根側
土呂幕:『宇治川の先陣争い』
下勾欄:『波濤に千鳥』
土呂幕まわりは源平合戦で統一されており、お馴染みの題材です。
一部修復はあるものの貴重なオリジナルが残っています。
台木
台木:『波濤に玄武』
台木:『波濤に玄武』
オリジナルは角台木で彫刻もありませんでしたが、お馴染みの波濤タイプに交換されています。
金具
①破風中央部:『左三つ巴紋』
②破風傾斜部:『昇龍』
③破風端部:『唐草模様』
④垂木先:『左三つ巴紋』
⑤脇障子兜桁:『丸に西』の文字。
⑥勾欄親柱
⑦縁葛:『唐草模様』
⑧肩背棒先:『西』の文字
いかがでしたでしょうか。
じっくり見ると、とても良いオリジナルの彫刻を持つ地車であることがお分かりいただけたかと思います。
若江の祭礼日は10月10日・11日固定で、今年無事に祭が出来るのであれば10日が丁度日曜日にあたるので見に行くことが出来そうですね。
是非久しぶりに見に行きたいものです。
最後までご閲覧いただき、ありがとうございました。