
皆さんこんにちは。
今回ご紹介しますのは三重県の本町地車です。
以前からこの地車の存在は知っていましたが、遠方にあることからなかなか見に行けずにいました・・・
しかし、今回修復を終えて入魂式を行われ、シーズンオフに見る機会ができましたので、迷わず見に行くことにしました。
それではご覧ください。
三重県名張市宇流冨志禰神社 本町地車 ◆地域詳細 宮入:宇流冨志禰神社 小屋所在地:本町通り沿い会所に隣接 ◆地車詳細 形式:石川型 製作年:1804〜1829年文化・文政年間 購入年:大正10年頃 大工:不明 彫刻:美濃村権左衛門 歴史:?→大和高田方面→名張市本町 参考)地車詳細について 『おもてなしのまち なばり本町通り』 http://www.e-net.or.jp/user/honmachi/danjiri/index.html
姿見

上が前方、下が後方
あぜ道を通れるように足回りが細い石川型ですが、名張では不要だったのでしょう、外駒に改修されています。
肩背棒もありません。

側面より
大きなサイズの地車です。
小屋根側にも勾欄がつきますが、後方にはなく、廻り勾欄ではありません。

斜め前より
破風

石川型と言えば新堂組大工の存在が思い浮かびますが、それらの形状とは異なります。
勾配は緩やかです。
鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』
耳が寝ており、おにぎり顔です。
懸魚

上から
大屋根前方:『鳳凰』
大屋根後方:『菊』
小屋根:『菊』
ふんわりとした菊の表現はまさに神業。これほど素晴らしい菊の彫刻は他に見たことがありません。
車板・枡合・虹梁

大屋根前方
車板:『司馬温公の甕割り』
枡合:『青龍』
虹梁:『二十四孝 老莱子』
枡合は青龍、虹梁は二十四孝で統一されています。

小屋根後方
車板:『珠取姫』
枡合:『青龍』
虹梁:『二十四孝 丁蘭』

まずは右面の全体像を。

大屋根右面前方
枡合:『青龍』
虹梁:『二十四孝 郭巨』

大屋根右面後方
枡合:『青龍』
虹梁:『二十四孝 楊香』

小屋根
枡合:『二十四孝 姜詩』
小屋根側は構造材としての虹梁のみで、彫刻を主とする虹梁はありません。

左面の全体像。

大屋根左面前方
枡合:『青龍』
虹梁:『二十四孝 唐夫人』

大屋根左面後方
枡合:『青龍』
虹梁:『二十四孝 舜』

小屋根
枡合:『二十四孝 董永』
勾欄

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子・獏、牡丹』
大屋根側は基本2段、小屋根側は1段です。
勾欄合

彫刻はありません。
土呂幕

石川型は幕式土呂幕のため、彫刻はつきません。
舞台が前方に大きく飛び出しているため、斜材が取り付けられているのが特徴です。
転回装置

この地車には珍しく転回装置が取り付けられています。
構造は簡単で、ハンドルをねじると持ち上がる仕組みです。
通常は後ろ梃子で方向転換を行いますが、狭い道で方向転換する際等に使われているようです。
いかがでしたでしょうか。 大阪から遠く離れた名張の地にこんなにも素晴らしい地車が存在しています。 古い地車は維持管理が大変で、手放す町も多いですが、原型を損なわないように修復されたことで、この地車の貴重度は今後も増す一方でしょう。 興味を持たれた方は是非一度見に行かれてはいかがでしょうか。 最後までご覧いただきありがとうございました。