
皆さんこんにちは。
今回はリクエストを頂きましたので、それに応える形で記事を書かせて頂きたいと思います。
その前段取りとして、いつかやろうと思って手を付けずにいた住吉大佐地車一覧の方も作成しましたので、宜しければそちらも併せてご覧ください。
北の辻垣内地車は住吉大佐地車請取帳の比較的最初のページに登場する地車で、明治15年9月~明治23年の間に製作された一台です。
新調は大和高田市西坊城で、後に橿原市北の辻垣内へ嫁いでいますので、奈良県内でずっと活躍してきた地車となっています。
それではご覧ください。
橿原市十市御縣坐神社 北の辻垣内地車
◆地域詳細
宮入:十市御縣坐神社
小屋所在地:十市城跡北側
◆地車詳細
形式:擬宝珠勾欄住吉型
製作年:明治15年9月~明治23年
大工・彫刻:住吉大佐 11代目 川崎仙之助
歴史:大和高田市西坊城→橿原市北の辻垣内
参考)
兵庫地車研究会 住吉大佐「地車請取帳」と彫刻
兵庫地車研究会 彫 地車彫刻の美 住吉大佐
姿見

左が前方、右が後方。
これでもかと言うほど大佐地車の風格が漂う一台です。
地車請取帳では大和高田市奥田地車に続いて、比較的最初のページに登場しますが、当時の住吉大佐の技術力・ブランド力の高さが伺える一台となっています。
こんな地車を見てしまったら、そりゃ誰もが我が村にも欲しい!と思うことでしょう。

側面より
平成初期に改修を受けており、大変綺麗に維持管理されています。
他の大佐地車と比較して、抜きホゾ角台木+かさ上げされているのが特徴です。
何故そのようなことになっているのか考えましたが、猫木が前方寄りに偏ってセットされており、前輪の車軸もかなり前方に来ています。
それにより、かさ上げの部材を挟まなければ駒が妻台に接触してしまうため、結果的にこのような構成になったと思われます。
とは言え、そこまでして前輪を前方へやらなければいけなかった理由は何でしょうか。
それほど前荷重になっているとは思えませんし、他の十市の地車も、他の住吉大佐の地車も同じようになっていないのでよく分かりません。
可能性があるとしたら、懐を作らずに前梃子を差すため、位しか思いつきません。

斜め前より
破風

しっかりと勾配のついた美しい破風です。
金具も多めで、豪華さが際立っています。
金具はオリジナルで付いていたものを修理時に復元されています。
枡組

隅行肘木付き2段1手先で組まれています。
鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』
非常に肉厚な獅子噛です。
その後の作品共、似た表情のものは幾つか登場しますが、誰が彫ったかについては確固たる証拠がなく、推測の域を出ません。
箱棟

箱棟:『雲海』
他の部分においてもそうですが、金具が多用されており、豪華な仕様です。
懸魚・桁隠し

大屋根前方:『奇稲田姫』
大佐地車定番の題材です。

大屋根後方:『雲海・松』
桁隠しの取り付け方が取ってつけたような感じになっているのと、左右で題材の統一性が無いのが気になりますが、どういった訳でしょう。

小屋根:『牛若丸 鞍馬山修行の場』
見事な作品です。
主役は牛若丸ですが、あえて鞍馬山僧正坊を中央に配置することで、僧正坊の大物さが引き立つような構成になっています。
車板

前方:『宝珠を掴む青龍』
その後の大佐地車でも定番の、手前に少し傾けた大きな車板の龍がいます。

後方:『虎・鷲』
虎と来たらペアは龍が定番な気がしますが、鷲になっています。
枡合・虹梁

右面大屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『珠取り獅子』
この面だけ珠取り獅子になっています。

右面小屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』

左面大屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『牡丹に唐獅子』
こちらは4匹も唐獅子が登場します。

左面小屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
木鼻

上が右面、下が左面。
木鼻:『親子獅子』
全身彫刻の親子獅子です。
柱

柱:『獅子の子落とし』
しっかりとガラス目になっており、この細かい仕上げが出来栄えを素晴らしいものにしています。
花戸口虹梁

花戸口虹梁:『珠取り獅子』
脇障子

脇障子:『神功皇后 応神天皇平産す』
武者絵ではなく、古事記・日本書紀より題材を得ています。
三枚板

正面:『源頼朝 富士の巻狩り』
傘を差されているのが定番ですが、ここでは差していないようです。

右面:『佐々木高綱 馬を奪い頼朝加勢』
この題材だと言われています。
この地車は三枚板で特に題材が繋がっていないようで、佐々木高綱が馬を奪って頼朝に加勢した場面がどの話なのか、勉強不足でよく分かりませんでした。
左面の平景清が頼朝を暗殺しようとした動きに対しての佐々木高綱の行動でしょうか。

左面:『源頼朝狙う平景清』
平景清は壇ノ浦の戦いで敗れた後、頼朝暗殺を企て、捕らえられた。との伝承がいくつか残っています。
角障子

角障子:『秀吉本陣佐久間の乱入』
角障子は三枚板の題材とは連動せず、三枚板を挟んで対の題材となっています。
秀吉の馬の装飾(胸繋・尻繋の房)の表現が非常にリアルで、驚きです。
摺出鼻

右面:『松に猿』

左面:『松に猿』
旗台

旗台:『力士』
勾欄合

前方:『富士の巻狩り』
三枚板でも登場した頼朝がもう一度登場します。

後方:『富士の巻狩り』

右面:『富士の巻狩り』
仁田四郎の猪退治は右面の一番前にあります。

左面:『富士の巻狩り』
縁葛

前方:『源平合戦』

後方:『源平合戦 鵯越の逆落とし』
愛馬三日月を担ぐ畠山重忠の姿です。

右面:『源平合戦』

左面:『源平合戦 梶原景時箙の梅』
このシーンはこれで間違いないでしょう。
土呂幕

前方:『源平合戦』
扉式で、武者絵の題材になっています。

後方:『平景清錣引き』

右面大屋根側
土呂幕:『敦盛呼び戻す熊谷次郎直実』
下勾欄:『唐獅子』

右面小屋根側
土呂幕:『敦盛呼び戻す熊谷次郎直実』
下勾欄:『唐獅子』

左面大屋根側
土呂幕:『義経八艘飛び』
下勾欄:『唐獅子』

左面小屋根側
土呂幕:『義経八艘飛び』
下勾欄:『唐獅子』
平側は源平合戦でいずれも海や川等、水が絡む風景のものが採用されています。
これらの題材以外では、宇治川の先陣争いもよく採用される印象です。
台木

右面:『波濤・波濤に鯉』
姿見でも記載しましたが、角台木・抜きホゾ・かさ上げが行われている珍しい台木です。

左面:『波濤・波濤に鯉』
金具

①破風中央:『菊に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍・菊』
③破風端部:『菊・梅鉢紋』 梅鉢紋は前所有町の名残と思われます。天満村大字西坊城…根成柿の天満神社のことではないでしょうか。
④垂木先:『菊紋』 菊紋は十市御縣坐神社の神紋です。
⑤縁葛:『牡丹』
⑥勾欄:『夫婦千鳥』
⑦肩背棒先:『若・中』の文字。
銘板

『細工人 住吉郡住吉村大佐』と書かれています。
いかがでしたでしょうか。
12年前のデータなので撮影機材が古く、撮影方法も今ほど安定していないので、少し見にくい部分があったかもしれません。
こうして記事を書いていると、久しぶりにもう一度十市の祭礼を見に行きたくなってきましたので、近いうちにまた訪問を計画してみようと思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。