
皆さんこんにちは。
今回もいつものように現在修理中の地車を記事にしておきたいと思います。
山本は三都神社氏地と陶荒田神社氏地の2つに跨る地域で、両方の神社に宮入を行っています。
また、それにより狭山連合と陶器連合のどちらにも所属しているため、祭礼中は行政区域の垣根を越えて様々な場所で見かける地車です。
狭山連合も陶器連合も上地車が主流の地域ですので、元々は板勾欄型を所有していた山本ですが、昭和63年に新調された現地車も当然の如く上地車(折衷型)の形式で新調され、昔と変わらない拡声器を用いて曳き唄を歌いながらの曳行を行っています。
それではご覧ください。
大阪狭山市三都神社/堺市陶荒田神社 山本地車
◆地域詳細
宮入:大阪狭山市三都神社・堺市陶荒田神社
小屋所在地:西高野街道沿い (コーナン堺泉北DC裏)
◆歴代山本地車
・先代(初代):板勾欄型、現地車新調に伴い高石市高師浜へ。その後擬宝珠勾欄化改造を受け、現在は東大阪市新家西町が所有。
・現地車(2代目):昭和63年新調。
◆地車詳細
形式:折衷型
製作年:1988年 (昭和63年)
大工:池内福治郎
彫刻:中山慶春・木下賢治
改修年:2009年 (平成21年)
大工:【隆匠】田中 隆治
彫刻:澤義博・【木彫高濱】高濱輝夫
姿見

左が前方、右が後方。
平成21年の改修時に獅子噛が交換されているので、昭和63年生まれという印象はあまり感じません。
同年に池内工務店で誕生した地車は他に、富田林市宮甲田地車・堺市濵寺元町地車があります。

側面より
折衷型と言えど色々ありますが・・・山本地車の場合、立体彫刻の見送りのみ岸和田型の要素が取り入れられており、その他8割方は住吉型としての要素が占めている折衷型です。
この年代に池内工務店で製作された折衷型の特徴の一つとして、雛壇に立つ人が勾欄の内側に立つようになっており、山本地車もその仕様が残っています。
この仕様は他にも多数製作されており、新調地車では堺市枡矢地車、河内長野市片添地車・河内長野市下西代地車(現在は改修により消滅)、大改修された地車では羽曳野市樫山地車・河内長野市三日市北部地車に採用されています。
破風

池内工務店で製作された折衷型の9割は切妻型で、山本地車もそれに倣っています。

小屋根も切妻型となっています。
この角度での獅子噛2丁が格好良すぎるので、特別に普段より1枚多く載せています。
枡組

筒柱が採用されていませんので、組み方は自然と住吉型同様にシンプルなものとなります。
肘木・巻斗に細かな雲海模様が施されており、拘りを感じます。
鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』
姿見でも書きましたが、山本地車は平成21年の改修時に獅子噛を井波彫刻の澤義博師の作品に交換しています。
元は中山慶春師の作品で、富田林市宮甲田地車と瓜二つの表情をしていました。

この獅子噛が本当に格好良く、良い作品なんです。
何度見ても見飽きません。

格好良さの秘密は、彫りの深さにより生まれる立体感と陰影にあります。
真下に立つとよく分かります。
箱棟

箱棟:『雲海』
懸魚・桁隠し

大屋根前方
懸魚:『鳳凰』
桁隠し:『鶴』

小屋根
懸魚:『猿に鷲』
桁隠し:『鶴』
車板・台輪・虹梁

大屋根前方
車板:『素戔嗚尊八岐大蛇退治』

小屋根
車板:『加藤清正虎退治』
台輪:『猿』
虹梁:『朱雀』
前後車板はこの時代に池内工務店で製作された折衷型では定番の題材で、姿見で挙げた堺市枡矢地車・河内長野市片添地車も同じ題材です。
枡合・虹梁

右面大屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『波濤』
台輪・虹梁にむくりがつけられているのも堺市枡矢地車・河内長野市片添地車と同じ仕様です。

右面小屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
台輪:『猿』
虹梁:『鳳凰』

左面大屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
虹梁:『波濤』

左面小屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』
台輪:『猿』
虹梁:『鳳凰』
木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』
柱巻き

まずは全景から。

柱巻き:『龍』
この時代の折衷型の良さは中山慶春師の立派な柱巻きを備えていることだと思います。
後の改修で取り外されることもありますが、きちんと残ってくれています。
間仕切り

間仕切り:『雲海・鶴』
脇障子

脇障子:『合戦譚』
柱には鯉の滝登りが表現されています。
勾欄合・縁葛

前方
勾欄合:『牡丹に唐獅子』
縁葛:『牡丹に唐獅子』

右面
勾欄合:『牡丹に唐獅子』
縁葛:『牡丹に唐獅子』

左面
勾欄合:『牡丹に唐獅子』
縁葛:『牡丹に唐獅子』
この辺りは牡丹に唐獅子で統一されています。合戦系も良いですが、こちらの方が上地車らしくて私は好きです。
見送り

見送り:『難波戦記』
お待ちかねの見送りです。多めに人形が詰まっていますよ。

正面より

右面より

左面より
どれも中山慶春師が彫刻したようです。
大脇


大脇(前方)『難波戦記』


大脇(後方)『難波戦記』
大脇も見送りに合わせて難波戦記、ここも中山慶春師が手掛けられているので、作風が統一されています。
大脇物見

大脇物見:『牡丹に唐獅子』
大脇竹の節

大脇竹の節:『谷越獅子』
摺出鼻

摺出鼻(外側):『牡丹に唐獅子』

摺出鼻(内側):『牡丹に唐獅子』
中山慶春師ならではの明るい表情の大ぶりな唐獅子、良いですね。
旗台

旗台:『風神雷神』
こちらは平成21年の改修時に交換された高濱輝夫師の作品です。
持送り

持送り:『雲海』
土呂幕

前方:『真田幸村』
徳川本陣急襲でしょうか?墨書き等が無いので、詳細はよく分かりませんでした。
中山慶春師の作品ですと、牡丹に唐獅子等が定番の題材ではありますが、山本地車は最初から全面に合戦系の題材が採用されています。

後方:『朝比奈三郎城門破り』
この題材はこれでしょう、と言うことは恐らく土呂幕は戦国時代縛りではなく、様々な時代の有名な場面を題材に採用していると思われます。

右面大屋根側:『合戦譚』

右面小屋根側:『櫻井の別れ』
ちょっと微妙ですが、構図的にこの題材でしょうか?菊水紋等あれば自信が出るのですが、見つかりません。

左面大屋根側:『合戦譚』

左面小屋根側:『明智光秀の最期』
竹槍で狙われる様子はこの題材で良いと思います。
下勾欄・台木

右面
下勾欄:『牡丹に唐獅子』
台木:『波濤に龍』

左面
下勾欄:『牡丹に唐獅子』
台木:『波濤に龍』
台木

右面:『波濤に龍』

左面:『波濤に龍』
金具

①破風中央:『唐草模様に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍』
③破風端部:『唐草模様』
④垂木先:『花角紋』
⑤台輪:『左三つ巴紋』
⑥脇障子兜桁:『山本』の文字。
⑦縁葛端部:『花角紋』
⑧肩背棒先:『山本』の文字。
いかがでしたでしょうか。
平成21年の改修もあり、全く古さを感じさせない地車なのですが、今回はどのような状態で工務店から戻ってくるでしょうか。
4月の入魂式が楽しみですね。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。