堺市中区蜂田神社 八田西町地車

皆さんこんにちは。

今回は、つい先日衝撃の情報が入ってきました八田西町地車について記事にしたいと思います。
もう既にご存知の方も多いかもしれませんが、2024年11月27日に八田西町地車会様の公式SNSにて、八田西町は現地車での祭礼を終了し、2025年5月に昇魂式を行うこと。現時点では新地車の新調・購入予定はないこと。の発表が行われました。

普段上地車ばかり見ている私ですが、古い下地車となれば別で、八田西町は実は2017年にお邪魔して撮影をさせていただいていました。
記事化にあたり写真を見返していると、撮影当時、八田西町の皆様に大変親切にしていただいたことを思い出し、感謝の気持ちでいっぱいです。
しっかり八田西町地車のことを記録に残しておきたいと思います。

それではご覧ください。

堺市中区蜂田神社 八田西町地車

◆地域詳細
宮入:蜂田神社 (氏地ではあるが宮入はせず、所曳き。)

◆地車詳細
形式:岸和田型
新調年:1895年(明治28年)
購入年:2009年(平成21年)
大工:絹井嘉七
彫刻:玉井行陽・櫻井義國
歴史:岸和田市三田町小倉→和泉市郷小路→堺市八田西町

姿見

前方より

分厚い破風に縁葛・連子・土呂幕の3段構成。
今となっては白黒写真でしか見ることが出来ない、昔の地車の雰囲気を残した姿をしています。

斜め前より

過去に大型化改造こそ行われていますが、当時の地車にしてはやや大きめの中型サイズだったのではないでしょうか。

破風

破風は交換されていますが、改修前のものを模したのでしょうか。
分厚い葺地で昔味を感じます。

隅出や二重枡合の部分を見ればよく分かりますが、オリジナルから2段枡組が足されているようです。

こちらは小屋根。
小屋根は入母屋型ですが、軒唐破風とはされておらず、これもまた昔の地車らしい特徴の一つとなっています。

垂木には『小』の文字があり、小倉時代の名残を感じることが出来ます。

鬼板

オリジナルかは分かりませんが、偶然にも過去に所有していた三田町小倉も郷小路も八田西町も梅鉢紋なので、暫く変わっていないのではないでしょうか。

懸魚

上から
大屋根前方:『雲海に鶴』
大屋根後方:『波濤』
小屋根:『浦島太郎』

大屋根前方が千鳥ではなく、鶴になっているのが珍しいですね。

枡組

上から
大屋根前方・大屋根後方・小屋根
隅出:『牡丹に唐獅子・牡丹』

車板・枡合・虹梁

大屋根前方
車板:『猩々』
小屋虹梁:『合戦譚』
枡合:『加藤清正虎退治』
虹梁:『龍』

枡組が足されたことにより、二重枡合が生まれていますが、前方は詰組が設けられています。
枡合は枡組に隠れて少し見えにくいですが、右上の動物は胴体が虎なので恐らく虎退治。となると加藤清正でしょうか。

大屋根後方
二重枡合:『牡丹』
枡合:『雑兵』

右面大屋根側
枡合下がり:『合戦譚』
二重枡合:『合戦譚』
枡合:『合戦譚』
虹梁:『龍』

左面大屋根側
枡合下がり:『合戦譚』
二重枡合:『合戦譚』
枡合:『合戦譚』
虹梁:『龍』

大屋根の屋根周りは武者絵尽くしになっているのですが、特にこれといった題材は読み取れませんでした。

小屋根後方
車板:『唐子遊び』
小屋虹梁:『合戦譚』
二重枡合:『牡丹』
枡合:『合戦譚』

小屋虹梁は清水一学奮戦っぽい雰囲気もありますが、どうなんでしょうね。

右面小屋根側
枡合:『合戦譚』
虹梁:『合戦譚』
見送り虹梁:『合戦譚』

左面小屋根側
枡合:『合戦譚』
虹梁:『合戦譚』
見送り虹梁:『合戦譚』

小屋根の屋根まわりも武者絵尽くしですが、題材はよく分かりません。

木鼻

上が右面、下が左面
木鼻:『阿吽の唐獅子』

大屋根の6つは後の時代に彫り直されているようですが、大屋根後方と小屋根にはオリジナルが残っています。
明治期の地車にはやっぱりガラス目ですね。

勾欄合

前方:『宝尽くし』

右面:『宝尽くし』

左面:『宝尽くし』

勾欄合はこれもまた珍しいですが、縁起の良いものが沢山彫刻されています。

縁葛・連子・土呂幕・松良

前方全景

まずは全景から。

縁葛・連子・土呂幕

前方
縁葛:『富士の巻狩り』
連子:『合戦譚』
土呂幕:『【難波戦記】道明寺の戦い 薄田隼人』

縁葛は富士山に狩りの様子とくればこの題材に決まりです。連子はよく分からず。
土呂幕は構図的に薄田隼人でしょう。

土呂幕の人物をアップで。

連子をアップで。

松良

前方側:『安宅の関・大江山の鬼退治』

後方側:『安宅の関・大江山の鬼退治』

松良は彫り替えられていました。
題材はよくある山伏姿のペアで安宅の関と大江山の鬼退治です。

松良の人物をアップで。

縁葛・連子・土呂幕

右面
縁葛:『富士の巻狩り』
連子:『合戦譚』
土呂幕:『?』

土呂幕は特徴ある題材ではあるのですが、家紋等が無く、調査が難航しています。
前面と左面が難波戦記なので、絵本難波戦記を中心に色々調べたのですが、それらしいものはヒットせず・・・

縁葛・連子をアップで。

左面
縁葛:『富士の巻狩り』
連子:『合戦譚』
土呂幕:『【難波戦記】若江の戦い 木村重成』

左面は恐らく木村重成かと思います。

連子をアップで。

脇障子

脇障子:『関ヶ原の戦い』

見送りに合わせているものと思われます。

見送り・大脇

見送り全景

まずは全景から。
オリジナルではありますが、板勾欄等は無く、この辺りからは古さは感じません。

見送り

正面全景:『関ヶ原の戦い』

井桁紋が見えますので、井伊直政でしょうか。

正面の人形をアップで。

右面:『関ヶ原の戦い』

右面の人形をアップで。

左面:『関ヶ原の戦い』

左面の人形をアップで。

大脇

大脇(前方側):『関ヶ原の戦い』

大脇(後方側):『関ヶ原の戦い』

根本には丸柱があります。

大脇物見・大脇竹の節

大脇物見:『合戦譚』

摺出鼻

摺出鼻:『雲海』

交換されており、シンプルに雲海模様が彫刻されています。

縁葛・連子・水板

正面
縁葛:『唐子遊び』
連子:『合戦譚』
水板:『波濤』

幅方向を拡大した跡が残っています。

右面
縁葛:『唐子遊び』
連子:『合戦譚』
水板:『波濤』

左面
縁葛:『唐子遊び』
連子:『合戦譚』
水板:『波濤』

今の地車にはない、大きな水板が魅力的です。

半松良

半松良:『松』

背丈は上げましたが、部材は元のままなので、嵩上げされた跡がよく分かります。

台木

大屋根側の水板も高さ寸法が大きく、昔味を感じます。

いかがでしたでしょうか。

肝心な彫刻の題材に不明点が多く、申し訳ないですが、判明次第追記していきたいと思います。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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