尼崎市貴布禰神社 北出屋敷西町地車

皆さんこんにちは。

今回は久しぶりに私が好きな板勾欄型地車の記事を書きたいと思います。

北出屋敷西町地車は知る人ぞ知る、高石市富木の先代地車にあたります。
同じ氏子地域の新三和が平成24年に堺市石橋地車を購入したため、数十年前まで同じ連合として、連なって曳行されていた富木・石橋コンビが尼崎市で復活しているのは、マニアとしてはとても面白く運命的なものを感じています。

富木から北出屋敷西町へ嫁ぐにあたり、擬宝珠勾欄化等の改造を受けていますが、オリジナルの部分はまだ各所に残っており、当時の姿に思いを馳せながら見学するのが楽しい一台です。

それではご覧ください。

尼崎市貴布禰神社 北出屋敷西町地車

◆地域詳細
宮入:貴布禰神社
小屋所在地:神社境内

◆地車詳細
形式:尼崎型(元・板勾欄出人形型)
製作年:1881年(明治14年)頃 と推察。(類似している松原市更池地車の製作年より。)
購入年:2000年(平成12年)
大工:河村新吾 と推察。(墨書きは出ず、但し各所特徴が松原市更池地車・八尾市西郡地車と似る。)
彫刻:彫又一門
歴史:堺市海船の浜→高石市富木→尼崎市北出屋敷西町

姿見

左が前方、右が後方。

写真は平成25年の修復入魂式時に撮影したものです。
富木から尼崎へ嫁ぐ際に板勾欄から擬宝珠勾欄へ改造されています。

側面より

その他細かいですが、板勾欄以外にも虹梁(彫刻)・下勾欄の撤去が行われ、現在に至ります。

斜め前より

冒頭の地車紹介欄にも書きました通り、この地車からは墨書きが出ていないようですが、松原市更池地車と似た特徴を有しているため、同一大工によりほぼ同時期に製作されたと推察出来る一台です。
他にも似た特徴を持つ作品として、八尾市西郡地車があります。

破風

復元されたものと思われますが、オリジナルを模しています。
なで肩の形状で、桁隠しが付かないのが特徴です。

製作年と河村新吾の銘が出ている松原市更池地車を手掛かりに見ていきます。
幕で見えにくいですが、破風の形状が似ており、桁隠しが無い点も共通しています。

枡組

平側方向において、実肘木を支える巻斗の数が4つで、多めになっているのが特徴です。

松原市更池地車も平側方向の巻斗が5つあり、多めの仕様です。
実肘木端部の模様も酷似しています。

鬼板

上から
大屋根前方:『宝珠を掴む青龍』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

獅子噛は恐らくオリジナルでは無いような気がしますが、特徴は堺市高蔵寺地車・大阪市細田町地車と似ています。(上方に2本伸びる鬣・3本の指等)
河南町山城地車も雰囲気的には似ているような感じです。

改修前の彩色が施されていた頃の獅子噛です。
富木時代の印象はこれですね。

箱棟

箱棟:『雲海』

懸魚

大屋根前方:『鳳凰』

大屋根後方:『鳳凰』

車板

大屋根前方:『張果老』

枡合・虹梁

大屋根前方
枡合:『牡丹に唐獅子』

枡合上部の雲海パーツに特徴があります。

松原市更池地車にも設けられています。

大屋根後方
枡合:『雲海』

虹梁は三枚板に合わせて弓なりの形状になっています。

右面大屋根側
枡合:『牡丹に唐獅子』

そして、私としたことが、ここ以外の枡合を取り忘れていることが発覚しました・・・

木鼻

木鼻:『阿吽の唐獅子』

全部で8体あります。

天蓋

天蓋:『鳳凰』

立派な天蓋彫刻を持ちます。
天蓋彫刻を持つ板勾欄型は限られていますが、松原市更池地車には無いので、比較が難しいです。

車内枡合

車内枡合:『雲海』

柱巻き

柱巻き:『秀吉本陣佐久間の乱入』

改修で位置が下げられていますが、オリジナルが残っています。

松原市更池地車も同様の題材です。
人気の題材だったのか、この題材の柱巻きを持つ板勾欄型は複数あります。

脇障子

脇障子:『松・雲海』

框・兜桁の使用材は交換されていると思われますが、元からこの仕様であったと思われます。

松原市更池地車も似た脇障子の形状です。

そして、これまで細かい所をあれこれ指摘しましたが、一番特徴ある大きく角型の板勾欄が酷似しています。
富木先代の写真を検索していただければ、一目見てすぐに分かります。

三枚板

正面:『天之岩戸』

三枚板にこれほどダイナミックに天之岩戸の題材が採用されているのはこの地車位でしょう。
出人形の数も多く、かなり拘って製作されたことが伺えます。

右面:『漢高祖龍退治』

板勾欄の正面三枚板によく採用されている題材ですが、この地車では右面に採用されました。
彫刻が配置できるスペースが限られていますので、近接して戦闘している様になっています。

左面:『大己貴命鷲退治』

右面同様、お馴染みの退治関係の題材が採用されています。

土呂幕

前方:『合戦譚』

扉式であったと思われますが、現在は使えなくなっています。

後方:『合戦譚』

右面:『合戦譚』

左面:『合戦譚』

特にこれといった題材性は感じませんでした。

台木

右面:『波濤に鯉』

左面:『波濤に鯉』

金物

①破風中央:『唐草模様に宝珠』
②破風傾斜部:『唐草模様』
③縁葛端部:『唐草模様』
④台木先:『出屋敷・西町』の文字。

いかがでしたでしょうか。

北出屋敷西町地車は少し前に工務店で修理を受けているとの情報を受けており、恐らく今年か来年には綺麗な姿になって帰ってくると思われます。
完成が非常に楽しみですね。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

「尼崎市貴布禰神社 北出屋敷西町地車」への2件のフィードバック

  1. 西町の地車は今(大?)改修中みたいですね…
    今年の8月の祭礼では、さらに美しい地車が見られると思います。
    またの紹介お待ちしております。

    1. 地車写真保存会

      kt06さま

      最近の尼崎のトレンドからすると、鬼板・懸魚の交換が行われているかもしれませんね。
      改修後の北出屋敷地車もまだ見れていませんので、是非また取材に行きたいと考えています。

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