皆さんこんにちは。
いよいよ秋祭りの本祭!とのことで、今回は秋祭りの地域の中から高石市綾井地車を記事にしたいと思います。
綾井は少し前より地車買い替えの情報が出ており、気にかけてはいたのですが、近頃はガセネタも多く飛び交っていますので、個人的にはあまり信用していませんでした。
しかし、最近になり昇魂式の話題が出てきましたので、いよいよ信じざるを得なくなってきましたね・・・
今後についてはまだ情報が不透明なところが多いですが、取り急ぎ綾井時代の姿を記録するべく記事にすることにしました。
高石市に残る2台の上地車のうちの1台です。
それではご覧ください。
高石市等乃伎神社 綾井地車
◆地域詳細
宮入:等乃伎神社
小屋所在地:城蹟山専稱寺の隣
◆地車詳細
形式:折衷型
製作年:1990年(平成2年)
大工:天野工務店 天野藤壹
彫刻:栗田剛・藤森昇二・川原和夫
姿見
左が前方、右が後方。
写真はどれも2018年に撮影したものです。
綾井はやはり姿見が抜群に良いと思います。天野工務店ならではの美しい屋根周りに、大人気の川原和夫師の獅子噛が取り付けられているのですから、イカツイ格好良さと言うよりはイケメンな格好良さといった感じでしょうか。(適切な表現かは微妙ですが)
また、天野藤壹棟梁最後の新調上地車でもあります。
側面より
地車の上半分は岸和田型の要素が濃く、重厚な屋根周りと立体見送りを持ちます。
一方、下半分は平面土呂幕に下勾欄がしっかり回されており、上地車の要素が濃いです。
破風
姿見でも書きましたが、屋根周りが抜群に美しいです。
入母屋軒唐破風に川原和夫師の獅子嚙、豪華ではありますが派手すぎず、絶妙にバランスが取れたデザインです。
垂木は隅扇垂木になっています。
枡組
6段3手先で組まれています。
鬼板
上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』
3面とも獅子噛で統一されています。
箱棟
箱棟:『龍・鶴』
懸魚・桁隠し
大屋根前方
懸魚:『加藤清正虎退治』
桁隠し:『鶴』
懸魚にこの題材は他では見かけないかと思います。
大屋根後方
桁隠し:『牡丹』
小屋根
懸魚:『布袋和尚』
桁隠し:『烏天狗』
小屋根懸魚も大屋根懸魚同様に、他では見ない題材ですね。
車板・枡合・虹梁
大屋根前方
車板:『素戔嗚尊八岐大蛇退治』
枡合:『天乃岩戸』
虹梁:『合戦譚』
妻側に詰組があるのも綾井地車の特徴です。
小屋根
車板:『?』
枡合:『義経八艘跳び』
虹梁:『鳳凰』
車板は光の加減で見えず・・・
枡合・虹梁
右面大屋根側
枡合:『日本武尊野火の難』
虹梁:『合戦譚』
右面小屋根側
枡合:『五條大橋の出会い』
虹梁:『鳳凰』
左面大屋根側
枡合:『神武東征』
虹梁:『合戦譚』
左面小屋根側
枡合:『櫻井の別れ』
虹梁:『鳳凰』
大屋根側は神話、小屋根側は平家物語・太平記の名場面より題材を得ています。
木鼻
上が右面、下が左面。
木鼻:『阿吽の唐獅子』
大屋根側は全身彫刻、小屋根側は上半身のみの彫刻になっています。
柱巻き
全景
柱巻き:『阿吽の龍』
栗田剛師の作品で、現役のものは綾井地車くらいではないでしょうか。他所とは一味違う作風で、個性がありますね。
金物は使わず、木彫のみで表現されています。
間仕切り
間仕切り:『牡丹に唐獅子』
脇障子
脇障子:『合戦譚』
柱には伊勢込みで鯉の滝登りの彫刻がありますね。
見送り
お待ちかね、見送りです。
題材は難波戦記です。
正面:『難波戦記』
人形が多く、程よく詰まった見送りです。
馬の目がきちんと黒目だけで表現されているのも良いですね。
右面:『難波戦記』
左面:『難波戦記』
大脇
右面(前方):『難波戦記』
左面(前方):『難波戦記』
右面(後方):『難波戦記』
左面(後方):『難波戦記』
大脇も見送りの題材に合わせて彫刻されています。
大脇竹の節
大脇竹の節:『親子獅子』
ちょっと予想外、これは中山慶春師の作品ではないでしょうか。
とても良い親子獅子ですね。
摺出鼻
摺出鼻:『牡丹に唐獅子』
摺出鼻:『牡丹に唐獅子』
摺出鼻も同様に、中山慶春師の作品に見えます。
旗台
旗台:『牡丹に唐獅子』
勾欄合・縁葛
前方
勾欄合:『唐子遊び』
縁葛:『合戦譚』
右面大屋根側
勾欄合:『唐子遊び』
縁葛:『合戦譚』
左面大屋根側
勾欄合:『唐子遊び』
縁葛:『合戦譚』
後方
縁葛:『宇治川の先陣争い』
右面小屋根側
縁葛:『合戦譚』
左面小屋根側
縁葛:『明智光秀の最期』
縁葛の題材は上手く読み取れず、宇治川の先陣争いは土呂幕にもあります。
土呂幕
前方:『宇治川の先陣争い』
平面タイプですが、扉・跳ね上げ等にはなっておらず、はめ殺しの土呂幕になっています。
後方:『巴御前の勇戦』
右面大屋根側:『?』
右面小屋根側:『?』
角の兜と言えば真田幸村か本多忠勝ですが、何の題材なんでしょうね。
左面大屋根側:『敦盛呼び戻す熊谷次郎直実』
左面小屋根側:『?』
土呂幕は平家物語より題材を得ていると思われますが、勾欄に隠れてよく見えませんでした。
下勾欄・台木
下勾欄:『波濤に千鳥』
台木:『波濤に鯉』
台木
右面:『波濤に鯉』
左面:『波濤に鯉』
金具
①破風中央部:『雲海に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍』
③破風端部:『唐草模様』
④垂木先:『星梅鉢紋』
⑤脇障子兜桁:『星梅鉢紋』
⑥縁葛:『牡丹に唐獅子』
いかがでしたでしょうか。
綾井地車の姿見の良さに共感を頂けたら、とても嬉しいです。
泉州で活躍する貴重な上地車、今後の動向に要注目ですね。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。