大阪市生野区巽神社 伊賀ヶ地車

皆さんこんにちは。

毎度の如く各地の地車の記事を書いていますが、巽神社氏子地域の地車を一台も記事にしていないことに気がつきましたので、今回は伊賀ヶ地車をご紹介したいと思います。

大阪市内ではよくある話(と、言いますか本来あるべき姿)なのですが、巽神社のだんじり祭りは祭礼日固定で実施されているため、土日に被るかが年によりで、曳行予定の情報収集をまめに行って狙って見に行かなければ、夜しか曳行されておらず、見れずにガックリ…なんてこともあります。

私自身、伊賀ヶ地車については数年かけてトライしていたのですが、中々予定が合わず…何とか2018年が土日に祭礼日が重なりましたので、日中明るい中で伊賀ヶ地車を見ることが出来、とても喜んだものです。

それではご覧ください。

大阪市生野区巽神社 伊賀ヶ地車

◆地域詳細
宮入:巽神社
小屋所在地:伊賀ヶ天神社跡地

◆地車詳細
形式:大阪型
製作年:明治38年(1905年)
大工:住吉大佐 と伝えられる
彫刻:不明
改修年:平成11年(1999年)
改修大工:大下工務店
改修彫刻:木下彫刻工芸・中山久義

参考)
地車製造年・大工について
社団法人大阪観光協会 『大阪のだんじり』

姿見

左が前方、右が後方。

非常に新しい見た目をしていますが、平成11年に大改修を受けたことによるものです。
改修と言いましても、車内虹梁・勾欄合の彫刻を残した大部分の新調となっています。

側面より

骨格がはっきりとした姿見をしています。
しっかりと四周勾欄が回されていたり、土呂幕も前後で分割されている等、昔ながらの仕様となっています。

斜め前より

破風

分厚い切妻型で、獅子噛・懸魚・桁隠しの寸法も大振りですので、存在感があります。

枡組

黒檀を用いて3段で組まれています。

鬼板

上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』

改修により彫り替えられたもので、同じ巽神社氏子地域の西足代の作品によく似てせて彫刻されています。
似ていると言いつつも、こちらの作品は鬣が斜め上方に立つようなデザインになっています。

箱棟

箱棟:『雲海』

懸魚・桁隠し

大屋根前方
懸魚・桁隠し:『素戔嗚尊大蛇退治』

懸魚・桁隠し一体の題材になっています。やはり正面に神話の題材は格好良いですね。
改修前の小屋根の作品がこの題材でした。(懸魚下端の直線感が衣摺先代・川俣のような印象を受けますので、彫清一門の作品だったのでしょうか。)

小屋根後方:『猿に鷲』

小屋根も同様に懸魚・桁隠しで一体の題材です。

車板・虹梁

大屋根前方
車板:『天乃岩戸』
虹梁:『桜木高札』

正面懸魚の奥にもういっちょ神話の題材、枡合・車板一体で大きく天乃岩戸が彫刻されています。

枡合・虹梁

右面大屋根側
枡合:『五條大橋の出会い』
虹梁:『安宅の関』

左面大屋根側
枡合:『常盤母子都落ち』
虹梁:『黄瀬川の対面』

枡合・虹梁はどれも平家物語・源平盛衰記にまつわる題材で統一されています。

木鼻

木鼻:『阿吽の唐獅子』

珠・瓢箪・子獅子・牡丹・小槌等様々なものを持たせており、斜め向き。
下地車風の作品です。

車内虹梁

車内虹梁:『珠取獅子』

装飾が色々あり、なかなか見えにくいですが、貴重なオリジナルを発見しました。
これは格好良いですね。

脇障子

脇障子:『一ノ谷 武蔵坊弁慶・熊谷直実 敦盛呼び戻す』

脇障子は左右の三枚板と一体の題材になっています。
特に右面側は熊谷直実が彫刻されていますので、作品を見る上で重要です。

車板・三枚板

車板・三枚板:『一ノ谷 源義経』

隣り合うパーツを一体化させた題材が多いこの地車ですが、後方は特に大きく一体化させた作品となっています。
車板・枡合・三枚板・角障子が一体で、一ノ谷の合戦が彫刻されています。

上下に大きなキャンバスは鵯越の崖地の表現に最適です。

角障子

角障子(後方):『一ノ谷合戦』

右には畠山重忠がいます。
左の雑兵には刀に団扇をかぶせる紙細工がしてあり、面白いですね。

角障子(前方):『熊谷直実 敦盛呼び戻す・一ノ谷 武蔵坊弁慶』

三枚板

右面全景

側面は三枚板・枡合・角障子・脇障子が一体になっていますので、見学時は一旦引いた視点で見られるのが良いかと思います。

右面:『熊谷直実 敦盛呼び戻す』

三枚板に大きく平敦盛です。

左面全景

左面:『一ノ谷 武蔵坊弁慶』

こちらも三枚板に大きく武蔵坊弁慶が彫刻されています。

勾欄合・縁葛

前方
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『富士の巻狩り』

勾欄合には貴重なオリジナルが残っています。
縁葛は四面使って富士の巻狩りとなっています。

後方
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『富士の巻狩り』

右面大屋根側
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『富士の巻狩り』

右面小屋根側
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『富士の巻狩り』

左面大屋根側
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『富士の巻狩り』

左面小屋根側
勾欄合:『二十四孝』
縁葛:『富士の巻狩り』

腕木

上が前方、下が後方
腕木:『阿吽の唐獅子』

土呂幕

前方:『義経 八艘跳び』

前方土呂幕は扉の機能を持たせる必要があるため構図の制限を受けますが、飛び移る対象の舟を左右に分けて配置することで、上手くこの問題を解決されています。

後方:『宇治川 先陣争い』

右面大屋根側:『朽木隠れ』

姿見でも書きましたが、平側土呂幕は大屋根・小屋根一続きの題材とするのではなく、しっかりと柱を見せて、題材を分けて彫刻されています。

右面小屋根側:『朝比奈三郎 怪力』

左面大屋根側:『木曽義仲』

左面小屋根側:『巴御前勇戦』

台木

右面:『波濤に鯉』

左面:『波濤に鯉』

鯉の数が多く、5匹が泳ぐ様が表現されています。

金具

①破風中央:『雲海に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍』
③縁葛:『牡丹に唐獅子』
④垂木先:『伊』の文字。
⑤肩背棒先:『梅鉢紋』 巽神社に合祀されている伊賀ヶ天神社の神紋です。

いかがでしたでしょうか。

近傍パーツを一体とみなして題材を表現しつつも、骨格はしっかりと見せるバランス重視型で、平成初期~中期ならではの作品でした。
題材の大部分が平家物語・源平盛衰記で統一されている点も、もっと知られても良い、伊賀ヶ地車の特徴かと思います。
ご見学がまだの方は是非。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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