皆さんこんにちは。
いよいよ秋祭りのシーズンに突入しましたので、今回は石川型地車を記事にしたいと思います。
南河内のだんじり祭りと言えば唄祭り。
派手なパフォーマンスを見せてくれる村、曳き唄が上手い村など、それぞれ特徴がありますが、南別井は曳き唄が上手なことでよく知られている地域の一つではないでしょうか。
曳き唄上手なことで南別井の動画はYouTube等に沢山ありますが、なかなか地車本体の写真はヒットしませんので、ここでしっかりと写真で記録を残しておこうと思います。
富田林市出身で、富田林市に工房をお持ちになられている山本陽介師の彫刻を持つ、メイドイン富田林の素晴らしい地車です。
それではご覧ください。
千早赤阪村建水分神社 富田林市南別井地車
◆地域詳細
宮入:建水分神社(千早赤阪村)
小屋所在地:会所敷地内
◆地車詳細
形式:石川型
製作年:不明
大工:不明
彫刻:彫又一門
姿見
左が前方、右が後方。
製作年・大工は不明ですが、古くに作られた純粋な石川型です。
綺麗なのは平成27年に大改修を受けているためで、一部オリジナルの彫刻を残して、躯体の新調・新しい彫刻に入れ替えが行われています。
側面より
オリジナルでは長押はなく、枡組の段数も1段少なかったですが、改修で大変豪華にアップグレードされました。
勾欄は大屋根下側のみ廻る仕様です。
斜め前より
破風
オリジナルを模して昭和63年に新調されたものかと思います。
元々桁隠しはありませんでしたが、平成27年の改修時に追加されました。
枡組
姿見でも書きました通り、オリジナルは4段3手先でしたが、平成27年の改修で5段4手先になり、大型化されました。
鬼板
上から
大屋根前方:『獅子噛』
大屋根後方:『獅子噛』
小屋根:『獅子噛』
3面とも獅子噛になっています。
鬣の巻き数は1つ増えましたが、鬣・耳の立ち方、顔つき等オリジナルに寄せて製作されています。
箱棟
箱棟:『牡丹に唐獅子』
懸魚・桁隠し
大屋根前方
懸魚:『龍』
桁隠し:『飛龍』
懸魚の題材はオリジナルでも龍でした。構図も寄せてあります。
大屋根後方
懸魚:『鶴』
桁隠し:『朱雀』
後方・小屋根はオリジナルの写真を見ていないのですが、恐らく前方同様に復刻してあるものと思います。
小屋根
懸魚:『猿に鷲』
桁隠し:『烏天狗(南・別の意匠)』
烏天狗の膝に注目、『南』・『別』の意匠が刻まれています。
車板・桁・枡合・長押・虹梁
大屋根前方
車板:『櫻井の別れ』
桁:『龍』
地元に所縁のある楠木正成公の題材が採用されており、妻側は贅沢に龍の彫刻が施されています。
大屋根前方全景
四周全てそうですが、虹梁はオリジナルの彫刻となっており、枡合・長押は平成27年の改修時に新調された彫刻です。
大屋根前方
枡合:『列仙伝』
虹梁(上段):『龍』
長押:『龍』
虹梁(下段):『二十四孝』
虹梁下段は二十四孝、正面の目立つところに虎と対峙する楊香が彫刻されています。
大屋根前方
枡合:『列仙伝』
虹梁(上段):『龍』
長押:『龍』
虹梁(下段):『二十四孝』
大屋根後方
車板:『夫婦岩』
桁:『唐獅子』
小屋根後方
車板:『正成 建水分神社戦勝祈願』
桁:『龍』
小屋根も地元ならではの題材となっています。
小屋根後方全景
小屋根後方
枡合:『列仙伝』
虹梁(上段):『龍』
長押:『珠取姫』
虹梁(下段):『二十四孝』
小屋根正面の左側に長押の主題である珠取姫がいます。
小屋根後方
枡合:『列仙伝』
虹梁(上段):『龍』
長押:『珠取姫』
虹梁(下段):『二十四孝』
馬は出していませんが、瓢箪と言えば張果老かと思います。瓢箪には『別井』の文字があります。
枡合・長押・虹梁
右面大屋根側全景
右面大屋根側
枡合:『列仙伝』
虹梁(上段):『龍』
長押:『珠取姫』
虹梁(下段):『二十四孝』
右面大屋根側
枡合:『列仙伝』
虹梁(上段):『龍』
長押:『珠取姫』
虹梁(下段):『二十四孝』
左面大屋根側全景
左面大屋根側
枡合:『列仙伝』
虹梁(上段):『龍』
長押:『珠取姫』
虹梁(下段):『二十四孝』
梅福仙人がいました。
左面大屋根側
枡合:『列仙伝』
虹梁(上段):『龍』
長押:『珠取姫』
虹梁(下段):『二十四孝』
右面小屋根側
枡合:『列仙伝 馬師皇』
虹梁(上段):『龍』
長押:『珠取姫』
虹梁(下段):『二十四孝』
左面小屋根側
枡合:『列仙伝 鐘離権?』
虹梁(上段):『龍』
長押:『珠取姫』
虹梁(下段):『二十四孝』
木鼻
上が右面、下が左面。
木鼻:『阿吽の獏・唐獅子・牡丹』
基本的に獏と籠彫りの牡丹がセットで、大屋根後方の柱のみ牡丹単体・全身唐獅子単体となっています。
水引幕
水引幕:『珠取龍』
水引幕:『珠取龍』
桁隠し
桁隠し:『竹に虎』
勾欄合
前方:『牡丹に唐獅子』
ここにも貴重なオリジナルの彫刻が残っています。
右面:『牡丹に唐獅子』
左面:『牡丹に唐獅子』
後方:『牡丹に唐獅子』
台木
右面
左面
幕は平成28年に新調されたもののようです。
金具
①破風中央:『雲海に宝珠』
②破風傾斜部:『昇龍・唐草模様』
③垂木先:『竪花菱紋』 建水分神社の菊水紋ではなく、ありがちな花菱ではなく竪花菱でした。どんな理由があるんでしょうか。
④縁葛:『牡丹』
銘
改修時に組み込まれた彫刻にある山本陽介師の銘です。
いかがでしたでしょうか。
新旧彫刻をバランス良く融合し、違和感なく仕上げられた素晴らしい作品でした。
ご興味を持たれた方は、山本陽介師の作品を見に南別井を訪れてみてはいかがでしょうか。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。